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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十一章 上位七人編
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180話(神サイド) 開始


「上位七人とは言うけどさ、結局はみんな誰かに殺されてるんだよね」


 ザックゲインはニカイキの肩に手をかけ突然そう言った。

 ニカイキは鬱陶しそうにザックゲインを払う。

 ザックゲインは「酷いなぁ」と呟き、話を続ける。


「だけど世界に認められて蘇ったわけだからさ。実力だけを考えれば僕らが世界で一番強いってことになるんだよ」


「……テメェはさっきから何が言いてェんだよ。確かに俺は向井宏人に殺された。でもそれはあいつが強かったからじゃねェ。俺自身に負けたんだよ、向井宏人じゃあない」


「まあでも、他人に殺されたことに変わりはないでしょ?」


「……もう一度聞いてやる。テメェは何が言いたい?」


 血管がブチ切れそうな顔をしてニカイキが睨んでくる。

 ザックゲインはニカイキを落ち着かせる様に、まあまあと両手を上下した。


「きみは安心して向井宏人の相手をする事が出来るって話さ」


 ニカイキが声を発するのを遮る様に、ザックゲインは言葉を続ける。


「さっき上位七人のみんなは誰かに殺されてるって言ったじゃない?」


「それがどうした」


「僕が誰に殺されたか興味ない?」


 ザックゲインのその質問に、ニカイキは興味ないと答えようとしたが……それはやめ、まじめに考えてみる。

 ザックゲインの『能力』は剣技以外は大体受け身になる。

 まあ、先日の『神』との『契約』で新たに能力を得たのだが、生前はそれもなかったとなると本格的に受け身しかない。

 『適応』も『無味無臭』も、誰かの『能力』があってはじめて『能力』が発動する。

 しかし、だとしてもこれらの能力は強力に変わりない。

 相手の『能力』を否定する『適応』、相手の『式神』すらも否定する『無味無臭』。

 正直言って、隙がない。

 こんな化け物を殺せるのなんて、やはり。


「神人ぐらいだろ」


「ぶっぶー!不正解」


 ニカイキはザックゲインのオーバーリアクションにカチンとくるが、呑み込んで首を振る。

 想像もつかないのだ。

 基本『能力』は一人一つ。

 その一つが適応されれば、残るのは現代兵器か己の身一つ。

 だがザックゲインはおそろしく完璧な剣技の技術がある。

 その手に持つ異様な剣も、おそらく『能力』の類が付与されているのだろう。

 ニカイキはザックゲインの目を見て話を促した。


「答えはね、自殺だよ」


「……まあ確かに、神人抜いたらそれくらいしかねェか。なんでだ」


「おぉ。思ったより食いつくね」


「当たり前だ。なんでテメェみたいな強者が己を殺す?」


「……それは──きみが一番分かってるんじゃないか?」


「……」


 途端、ザックゲインの纏う雰囲気が変わった。

 ニカイキでさえも、戦っては勝てないと無理やり納得させられる、理不尽な強者のオーラが発せられる。

 ザックゲインは感情を感じさせない瞳で、淡々と語る。

 

「僕はこの力を誇りに思っている。他人の能力を否定し、僕自身の存在を肯定させるこの能力を。でも、この力には成長というものがない。『適応』も『無味無臭』も、最初から完璧で、完全なんだ」


「……なるほどな。そこから先は俺も辿った道である、衰えか」


「そう。僕はそれを恐れた。だから──殺した。綺麗なままの、未だ衰えていない完全な僕を」


 ザックゲインの瞳が、爛々と輝く。

 それは子供が欲しいおもちゃを見つけたような、ただただ無邪気な眼光。


「そんな僕の目の前に、『変化』を司る能力者が現れたんだッ!逃さない。絶対に逃さない。そして──『生存戦争』の条件をクリアし、僕は本物の最強となるッ!その暁には──手始めに、神人でも殺そうかな」


「……デケー夢だな。俺は初っ端から向井宏人を殺すつもりだぜ?テメェが10人殺すのを待ってるほど優しさに溢れてねぇぞ」


「もちろん知ってるよ。ここからやっと、ニカイキが向井宏人と安心して戦えるという話に戻るからさ」


 そしてザックゲインは語る。

 ニカイキ以外の上位七人で向井宏人以外の能力者を殺し回るので、その間にニカイキは向井宏人と戦えばいい──と。


「その計画に異論はねぇよ。でもバカだろ。そうすりゃテメェは『変化』を奪えねぇじゃねぇか。まあ、二言はないな?」


「当たり前だよ。じゃあ、これで決まりね」


 ザックゲインは話は終わったと言うように、背を向けて歩き出した。

 ニカイキは相変わらず気に入らない男だと嘆息し……最後に、これだけ聞いた。


「ちょっと待てよ。理由はなんだ?なぜ真っ先に俺が向井宏人を殺すことを見逃す」


 ニカイキの鋭い眼光がザックゲインを穿つ。

 だがザックゲインはそんなニカイキをものともせず、ヘラヘラと笑いながら言い放った。


「きみなんかが向井宏人に勝てるわけないからじゃん」

 

 *


「た〜っく、なんで上位七人なんて大物がこの時代に復活しちゃうかな。まだ傷が痛む」


 智也はげっそりした顔でフラフラと部屋から出た。

 明日には生存戦争だ、おそらく自分も呼ばれるだろうと思い、引き篭もるのをやめた。

 引き篭もったのは、なんてったって突然ザックゲインに体を切り刻まれたからだ。

 不意打ちとはいえ、あの剣技の前じゃ自分は何も出来ないと思い知らされた。

 かと言ってこのまま何もしないわけにはいかない。

 もし生存戦争中にザックゲインと一体一で戦うことになったとしても、駆けつけてくれる可能性がある仲間は一人でも多い方がいい。

 だから──智也は。


「いい加減に起きろよ、クソ勇者」


「……。元、だけどな」


 智也が蹴破りながら入った部屋で寝込んでいたのは──祐雅。

 海野維祐雅。


「何つまんねーこと言ってんだよ。これも元とはいえ、お前はアルドノイズの部下でもあったんだ。みっともなく引き篭もってんじゃねぇよ」


「……テメェだって引き篭もってたろ。笑わせてくれる。5分前に引き篭りを離脱した奴がすぐにしたのが引き篭もりの救済とはな。笑えない」


「どっちだよ。まあ聞けよ、この『世界』に新たな『勇者剣』が生まれた。そいつを奪いにいこうぜ?」


 智也のドヤ顔を見て、祐雅は心底呆れた様にため息を吐く。

 

「吐夢狂弥から奪おうってか?無茶言うな」


「まあ、確かに無茶だが、所詮『者』級だ」


 智也はいやらしい笑みを浮かべながら、祐雅に言い放った。


「ザックゲインって言う、お前と同じ無能力者だよ」


 *


 ──生存戦争当日の朝。

 カナメが神人の集会に行った後。

 俺らは一度全員集結し、ロビーで集まっていた。

 

「……このもう名前のない組織も、随分人数増えたなぁ」


 俺は人で埋め尽くされたロビーを見て、顔を引き攣らせた。

 俺に、(ニーラグラ)、創也、瑠璃、黒夜、智也、祐雅、飛鳥、華、傀羅、那種、セバス、アリウスクラウン、ナンチャン、クンネル、そしてアスファス……はいない。

 相変わらずだ。

 何より……正直、人数が多すぎて全く関わりのない奴もいる。 特に『呪術者』の二人だ。

 彼らは基本警備担当であり、常時本部にいるわけではない。

 だから会うとしたら休日なのだが、別にわざわざ仲良くなる必要もなかったわけで……。

 まあ、それでも共に戦う仲間なのだ。

 今のうちに、挨拶でも……。


「──ヒロト」


「うぉ、ナンチャン!?」


 急にナンチャンが日本語で話しかけてきて、思わず腰を抜かす。

 

「驚いてくれたカ。これでもお前たちが戦ってくれている間に鍛錬と言語の勉強を欠かさず行ってきたからナ」


「ほほぉ……さすが生真面目ナンチャン。めっちゃ流暢に喋るじゃん」


「それで、俺の『能力』のことなのだガ──」


 ──刹那。


「「「ッ!?」」」


 俺らの体が輝きだす。

 そして突然、俺たちの脳の中でとある神の声が響く。

 

『さあ、殺しあえ。そして生存権を獲得し、この世界に革命を築け──これより、生存戦争を開始する──!』


「……誰だ」


「……多分、アルベストだねぇ」


 俺がポツリと呟くと、隣りの創也が言った。

 俺は創也にアルベストについて詳しく聞こうとしたが、それはやめて辺りを見回す。

 瑠璃や飛鳥といった非戦闘員や、クンネルやナンチャンといった戦闘員でも実力不足な者の体を輝いてな……


「ナンチャン!?なんでお前が光ってる!?」


 俺が叫んだ瞬間、再度脳に直接アルベストの声が響いた。


『では──スタート』


 アルベストがそう言うと同時に、俺や体が光っている者は生存戦争の地へ送られた。

 俺はひとまずナンチャンのことは忘れることにして、上位七人に集中することにする。

 

「……」


 目を開けた時には、森林の中にいた。

 周りに創也や他の仲間がいないことから、ランダム転移なんだろう。

 気にしないとしながらも、ナンチャンが心配になってきた……。


「ッ」


 そんな中、茂みよりガサガサと音が。

 だが、俺が警戒するよりも早く。

 元から近くに転移されていたのか、その音の主が姿を現した。


「いたた……ランダムでなんか聞いてないよぉ……。せっかくマルフィットが陣形考えてくれたのにこれじゃ台無しだ」


「ッ……!ザックゲイン」


 茂みの音の正体は、ザックゲインだった。

 ザックゲインのキョトンとした顔が──いやらしい笑みに変貌する。


「おぉ、向井宏人だ」


 瞬間、ザックゲインの剣が振られる──ッ!


「……舐めんな。お前がクッソ早いってのは身をもって経験してんだよ。おかげさまでな」


 俺はザックゲインの剣を片手で止め、睨みつける。

 それをザックゲインは楽しそうにしながら、バックステップの要領で後退した。


「たはは。すごいね。見切られちゃったか」


 素手で剣を止めたため、右手の手のひらからどばどばと血が漏れる。

 俺は『変化』で直し──静かに言った。


「勝負だ。ザックゲイン」


           








         第十一章『上位七人編』──完

 

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