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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十一章 上位七人編
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177話(神サイド) 整理


 上位七人の襲撃から翌日の朝。

 凪はあくびを噛み殺しながらロビーへ赴くと、思わず目を見開いた。


「これは……全て直っている……!」


 昨日上位七人に荒らされたロビーは見事襲撃前の状態に修復されており、カナメが突き破った天井も元通りであった。

 凪は珍しく口を半開きにして部屋を見て回ると、足に衝撃が。

 不思議に思い下を見ると──思わず顔に笑みを浮かべた。


「さすが、『変化者』といったところか?」


 凪の足元では、目の下に熊が出来た宏人が寝転んでいた。

 おそらく一晩かけて『変化』でこの建物を修復してくれたのだろう。

 顔はところどころ汚れており、パッと見ただけでも分かる程宏人の能力量は減っていた。


「ありがとうな」


 凪は優しく宏人の頭を撫で──声色を変えて呟いた。


「だから──すまないな」


 凪の顔は先程までとは一転していて──覚悟に満ちた瞳で、そう言ったのだった。


 *


「はーい状況整理のお時間でーす」


 カナメがパンパンと手を鳴らし、皆の注目を集めた。

 その中には珍しくアスファスもおり、アスファスは気怠げに目を細めて眺めていた。

 時折俺と目が合うが、サッと晒される。

 

「じゃあさっそくだけど、昨日上位七人と戦った人は手を挙げてくださーい。はい!」


 カナメが再度手を鳴らすと、俺と創也が手を挙げる。

 俺がニカイキ、創也は「せっかく死んだのに……」とかなんとか言っていた奴と戦っていた様だ。

 そしてカナメが三人相手したという事は……。


「あと二人足りなくないか?」


「いやー、可愛い聖女みたいな子はうろうろしているだけだったよ。あれは見るからにヒーラーだね」


 創也にそう言われ、なんとか思い出す。

 あの時はニカイキに気を取られて他のメンツがうろ覚えになってしまっている。

 まあともかく、ではあと1人分足りないというわけで。


「ちなみに、黙秘した奴は爆破地獄ねー」


「……チッ」


 カナメが楽しげに恐ろしいことを口走ると、アスファスが舌打ちをして小さく手を挙げた。

 

「マジか」


 俺は普通に関心してボソッと呟いた。

 アスファス自身が狙われていたとしても、アスファスの実力なら簡単に逃げられただろうに。


「よーし、じゃあお前ら戦った奴の特徴と能力、戦い方を言いなさぁい。そして作戦会議すっぞ」


 カナメのその言葉を皮切りに、俺たちは上位七人について話し合う。

 ヒーラーの少女の回復力が気になるところだが、まあ上位七人に選ばれたくらいなんだから相当だろうと予想はつく。


 だが、今はそんな奴どうでもいい。

 そいつも十分化け物だが、あの場にはその化け物をはるかに凌駕する怪物がいた。


 現状最大級の問題点であるのは──。


「ザックゲインって奴がヤバい」


 一通り上位七人の共有が終わった後、カナメが後頭部を掻きながら言った。

 ザックゲイン──ロビーに固まっていた俺や凪を一瞬で斬り刻んだアイツ。

 不意打ちで狂弥の『眼』を開眼していなかった俺とはいえ、それなりに修羅場を潜ってきたつもりだ。

 そんな俺が、一切対応出来なかった。


「俺とやり合えてたんだよね。まあ俺もそこまで本気じゃなかったんだけどさぁ──そのザックゲインも全く本気そうじゃなかったんだよね」


「……さすがにそれはないんじゃないか?いくら上位七人と言っても所詮能力者の中から選ばれた小山の大将だろ?」


「ザックゲイン以外はそうだろうよ。だとしても俺が神人に成んなかったら苦戦しそうな奴ばっかだったけど」


 カナメは俺の意見を肯定的に認めつつも、ザックゲインにだけは否定する。

 

「ともかくザックゲインはあの『勇者剣』に似た剣と『適応』、式神無効化だけじゃなく絶対まぁだ他の能力があるから気を付けろ。なんならザックゲインと遭遇したら一目散に逃げろ。ザックゲインは強いがどれも攻撃される前提のタイプだ。アイツからの攻撃は剣ぐらいだろ」


 どんな存在も斬れる『勇者剣』に似た武器に、どんな能力でも一つに限り完全に無効化出来る『適応』。

 そしてどんな、神人の式神すら無効化する『無味無臭』。

 直接やり合い、神人であるカナメがまだ何かあるというのだ。

 俺はチート過ぎるザックゲインに片頬を引き攣らせながらも……『生存戦争』のルールを思い出し、静かに笑った。


 *


「「ただ今帰りましたー!」」


 上位七人襲撃二日後、生存戦争まで一週間を切った今日。

 一ヶ月分の食糧調達に行っていたセバスとアリウスクラウンが帰還した。


「神よー!」


 基本いつも惰眠を貪っている飛鳥が両手を広げてアリウスクラウンに抱きつく。

 俺たちの食事事情はかなり面倒くさく、毎月一回一週間かけてその月の全員分の食糧を調達しなければならないのだ。

 通常ならこれは非戦闘員の仕事であり、セバスやアリウスクラウンがする必要はないのだが、瑠璃曰く「なんでも経験」らしい。

 今月当番だった瑠璃に言われ全く響かなかったが。


「うぇーん!怖かったわだよぉぉぉぉ!なんか上から七番目に強い人たちが襲ってきてぇぇぇぇ!」


「……上から七番目……?まあ、そういう時もあるわねー……」


 アリウスクラウンは明らかに訳わからないという顔をしているが、なんとか飛鳥を宥めようと背をポンポンと叩く。

 とても先日まで敵だったとは思えない光景だ。


「ただいまー、宏人くん」


「おう、おかえり」


 セバスは疲れた顔でソファにもたれかかった。

 そして目頭を抑えながら小さく笑う。


「上位七人のことだよね?飛鳥さんの」


「よく分かったな。知り合い……な訳ないか。結構有名なのか?」


「そりゃ有名だよ。ニカイキさん以外は大分昔の人たちだけどね。あ、そういえば宏人くんがニカイキさんを殺したんだっけ?」


「そうだが……あの時はニカイキは本気じゃなかった。今俺があいつに勝てるかは分からない」


 あの時のニカイキは、もう老人だったことに加え、俺が『重力』に対する特効能力である『無重力』を保持していたから降参しただけ。

 アスファスにより『能力』に制限がかけられた現在で、俺がニカイキに勝つ方法はなんなのだろうか……?


「じゃあ『生存戦争』の蘇生された能力者の内七人は上位七人で決まりだね。残りの八人は分からないけど、上位七人について入念に会議すれば意外となんとかなりそうだ」


「──意外とじゃなく、完璧にしなきゃ駄目だろ?」


 そこへ、突如カナメが悪い笑みを浮かべて間に入ってきた。

 俺は嫌な予感を覚えつつも、おそるおそる聞いてみる。


「……と、言うと?」


「俺のスペシャル特訓ーーーーー始動ッ!」


 カナメはサムズアップしてビシッ!と親指を立てた。

 セバスなんかまた目頭抑えてる、なぜかさっきより疲れている感じである。

 

 『生存戦争』まで残り一週間。

 神人、七録カナメによる戦闘訓練が、始まる……!

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