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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十一章 上位七人編
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176話(神サイド) 適応


「──さて」


 カナメはザックゲインがいた場所を見下ろしながら、小さくため息を吐いた。

 上位七人なんて大層な名前が付いてはいるが、所詮神人の敵ではない。

 カナメは冷徹な目をし、低い声で呟く。


「皆殺しだ」


「──勝手にさぁ!」


「ッ!?」


 突如、カナメの背後にザックゲインが。

 ──仕留め切れていなかったッ!

 カナメは背後を振り向くと同時、ザックゲインに渾身の拳を食らわす。


「ガッ!?」


 ただのパンチではなく、衝撃を最大まで込めた暴力の塊。

 ザックゲインは内臓を損傷しながりも、ニヤリと笑う。


「……殺さないでよ……!──カルマッ!」


「分かってるって!」


 いつの間にか天使の翼の様なものが背に付いたカルマが、光り輝く光線を放つ。

 その光線はザックゲインに対応していたカナメを一瞬で包み込んだ。


「効くかなぁ……」


「一応どんな存在にでもダメージはある能力だからね。神人にも有効なはずだ……ごふっ」


 ザックゲインは血反吐を吐き、胸を押さえる。


「……ちょっと大丈夫?今にも死にそうだけど」


「まさか僕もパンチ一つで死にそうになるとは思わなかったよ。それにほら──とんでもない化け物と戦っちゃったね」


 ザックゲインの視線の先には、未だ無傷の七録カナメが。

 

「聞いてはいたけどさぁ……。その絶対防御反則じゃない?」


「知らねーよ。しぶといな。さっきだってそこの女の式神使って耐えたろ。コスパ悪すぎ」


 カナメが頭をガリガリ掻く中、ザックゲインは冷や汗を垂らす。

 とんでもない威力を誇る爆破攻撃に加え、どんな攻撃も通さない防御力。


「これはこれは、なるほど納得……。どうりでライザーが気にいるわけだ」


 ザックゲインはまるで理不尽な存在にため息を吐き……口角を上げた。


「……?」


 そんなザックゲインを、カナメは不審げに見つめる。

 ザックゲインはカナメの視線に気付くと、おもむろに語り出す。


「いやね、僕の能力って『適応』なんだ。あらゆる環境や状況、状態に適応出来る能力。パッと見強そうなんだけど、ネックなのがストックが一個までなんだよね。てなわけで」


 ザックゲインは、一瞬でカナメの背後に回った。


「僕はもう──きみが怖くない」


「……」


 カナメに剣を振るうが、カナメは剣を足で弾き、ザックゲインに人差し指を向ける。

 そして──閃光。


「『極爆破』」


 凝縮されたとてつもない威力の爆発がザックゲインに直撃。

 頭部を狙った事も相まり神でも簡単に殺せる威力のそれは、ザックゲインの痕跡すら残さず破壊し尽くす──はずが。

 ザックゲインは、顔が少々焼けただけだった。


「カルマ、皆んなを逃しといて。挨拶は終わり、来るべき本番に向けて僕たちも鍛え直そうか」


「なにごちゃごちゃ言ってんだよ。それが『適応』か?すげーな」


「きみには話していないよ七録カナメ。カルマ、お願いね。こいつの足止めは、僕に任せて」


 カルマが頷き皆の元へ行くのを見届けながら、ザックゲインは再度剣を振るった。

 人間じゃ対処出来ない確度で薙ぎったが、やはり衝突の寸前に止まってしまう。

 カナメはその隙を見逃さず拳を払い、ザックゲインを吹き飛ばす。

 『極爆破』に『適応』されているなら、純粋な暴力は違うだろうというカナメの考えが見事的中。

 だがザックゲインは上手く拳を剣で止め、衝撃をいなした。


「ッ」


 カナメは追撃をしようとしたが、ピリッと体のどこかに違和感が。

 ザックゲインはその隙を逃さず剣で一太刀。

 だがやはり効かず、しかし届く様力を込める。


「なんでも斬れる剣で斬れないきみの壁……あぁなるほど。これ、壁じゃないね?」


「正解。すげーじゃん。まあ──分かったところでだけどな」


 そう言い、カナメはまたもや人差し指でザックゲインを捉える。

 ザックゲインはカナメの体まで刃が届く様力を込めているため、その距離はおよそ一メートル。

 だがしかし『極爆破』は既にザックゲインは『適応』済み、先程も耐えてみせた様に精々傷を付けるくらいしか威力がないのはカナメも分かりきっている。

 ザックゲインの『適応』は、確かに『極爆破』には対応したが、威力を完全に消し切れてない上にバリアも突破出来ていない。


「ならさ、めちゃくちゃ強い『極爆破』を撃てばいいだけで──『万華鏡』ォ!」


「あはっ!またそれか……!」


 ドでかい花火は、今度こそザックゲインを吹き飛ばした。


 *


「うん、やっぱ無理だね」


 全身に火傷を負ったザックゲインは、自分を除く上位七人の前で笑った。

 

「いや笑い事じゃないっしょ……」


 カルマは若干涙目でため息を吐いた。

 元『者』級の神人と聞いた時は結構どうにかなりそうだと思ったが、現実はどうにもならなかった。

 当時最強と言われた者たちが三人も揃って相手したというのに、七録カナメには傷一つどころか呼吸を乱すことも出来なかった。


「……それもこれも、アンタが本気出さなかったせいよ」


「いやいや、手の内全部晒したって勝てなかったさ。だから『適応』だけでどうにか凌いでみせただけ」


 カルマはどうだかと目を細める。

 ザックゲインが本気を出し『適応』をすれば、七録カナメの絶対防御を貫通出来るだろう。

 そして、『あの』能力を使えば割とどうにか……。


「まあ、タラレバだけど」


「──で、これからどうします?我らが首魁」


 ザックゲインとカルマの間に割って入り、マルフィットが口を開く。

 首魁である、ザックゲインを見て。


「羅閣さんが亡くなった件についてはどうします?神ノーズが黙っていないと思うのですが」


「それはほら……あの地味に優しそうな神ノーズに頼むから」


「闇裏菱花様ですね。確かに私も彼が良いと思いますが、彼が我々に積極的に行動を起こしてくれるとも思えません。どうやらあの方は七録カナメら側らしいですからね」


「まあまあ、そんか難しく考えなくていいでしょー。取り敢えずは潜伏かな。生存戦争が始まるまでは死ぬわけにはいかない──だから、大人しくしてようね?ニカイキ」


「あぁ?」


 ニカイキの鋭い眼光がザックゲインに向くと同時。


「「「ッ!?」」」


 突如この場の重力が変化。

 ニカイキ以外の六人が地になすりつけられる。

 だが──ザックゲインだけは、多少膝が曲がっただけで、すぐに正常に立ち直す。


「やめな。どうせ七録カナメに殺されるだけだ。今回もそうだけど、きみだって前回も全力で戦ったわけじゃないだろ?なら来るべき決戦で白黒付ければいい。だけどそれでも行くのなら──僕がきみを殺す」


 ザックゲインは『重力』をものともせず、ニカイキの前に立つ。

 さすがのニカイキも冷や汗を垂らし更に『重力』を強めるが、それでもザックゲインに変化はない。


「……やっぱ、アンタが本気出せば『適応』は一瞬じゃない……」


 カルマがそう小さく呟くと共に、ニカイキの『重力』が解かれた。

 ザックゲインとニカイキ以外が立ち上がりつつある中、ニカイキは怒りの形相へどこかへ行ってしまった。


「あの、追わないんですか?」


 シェリカが心配そうにニカイキを指差すが、ザックゲインは首を振り否定した。

 

「ところでシェリカ、僕のこの傷も一瞬で治せたりする?」


「もちろんです!──『全快』」


「おほっ、こりゃあすごいね」


 シェリカが唱えると、触れることなく一瞬でザックゲインは回復した。

 もう既にカナメと戦った傷は一つもない。

 これが、上位七人に選ばれたヒーラーの最上級者。


「……で、これから僕らは何をすればいいんですか?」


 そこで気弱そうな少年、真木花哉が手を挙げて質問した。

 それに対しザックゲインはふふんと笑うと、胸を張って言った。


「生存戦争にて、この時代の超級能力者を全て殺す!……というのが神ノーズと約束した建前で」


 薄暗い夜の中、ザックゲインの笑みだけははっきりと皆の目に映る。

 この場にいる七人全員がそれぞれの時代、世界、地域で最強と謳われた者たちだが、ザックゲインだけは一線を画している。

 神人にも届きあるその能力らの前では、あらゆる能力者でも手に負えない。

 そんな彼は楽しげに、まだ会ったことのない一人の少年を想像する。


「僕らの本来の目的は──向井宏人の『変化』を奪うこと。さあ、早い者勝ちだ」


 


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