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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十一章 上位七人編
183/301

175話(神サイド) 圧倒


「さァ、そっちから来いよ」


 ニカイキが舌で唇を舐めながら挑発してくる。

 ニカイキからしたら俺は親の仇どころじゃないだろう。

 何せ自分を殺した人なのだから。

 だから俺は、正面から向き合う必要がある。

 謝りはしない。

 それはあの結果が誤りではないと思っているから。

 だから俺は、鋭い目を向けてくるニカイキと向き合う。

 そして、俺はそんなニカイキから──逃げるッ!


「……は?」


 ニカイキが呆然とする中、俺は凪と瑠璃を担いで駆け出した!

 

「ちょっ、宏人、今の最高にダサいわよ」


「全く同感だな」


「ざけんな!あんなんやってられるかよ。パッと見ただけで分かる。ニカイキも、あの場にいる全員やべぇ。特に最初の剣の奴はとんでもないな」


 アルドノイズやアスファスといった過酷な戦いを生き抜いてきた俺ですら、不意打ちとはいえ全く反応出来なかったあの男の剣技。

 しかもあれで能力を使ってないのだ、恐ろし過ぎる。


「というか智也はどうした?あいつも俺たちと一緒にいたはずだが……」


「あの剣男に斬られた瞬間どっかに消えたよ。どんだけ逃げ足速いんじゃ」


 宏人は遂に玄関へ到着。

 そして外に出るため扉に手をかけ──


「──『重力』」


 ブゥゥゥゥ──ンと重い音をたてながら、俺たちを理不尽な重力が襲う。

 だが、俺は凪と瑠璃を離さずそれに抗い、片手を地につけながら体を支え、ニカイキを睨む。


「さすがに強すぎねぇかこれ……?」


「そんな俺を殺したお前には期待してたのによぉ……まさかただの雑魚とは。残念だ」


 ニカイキは宏人を見下ろしながら唾を吐きかける。

 その唾が宏人に当たる寸前。


「──『変化』」


 唾が──鉛玉に。


 そしてそれを掴み、勢いよくニカイキの顔面に投げる!


「ッ!?」


 その間およそ一秒未満。

 だがさすが世界に選ばれた人間であるニカイキは、驚き目を見開きながらも避ける。

 しかしうまく避けきれなかったのか、ニカイキの頬から鮮血が飛ぶ。


「舐めてっから──『変化』」


 そして俺は──先程から地につけていた手で『変化』を発動。

 地下に空洞を作り、加えて足元の床を丸ごと消去。

 

 ニカイキの驚きが収まらない中、俺は落ちていきながらもニカイキと視線を合わし続け──最後の最後に、ニヤリと笑って唱えた。


「『バースホーシャ』」


 炎極の海が、ニカイキを襲った。


 *


 時は少し遡る。


 カナメは天井を爆破し外に出ると、少年も後を追うように外に出てき、カナメを見上げた。

 その顔は不敵に笑っており、カナメは妙にムカついた。

 まあ当然だ。

 突然縄張りを荒らされ、その荒らした本人が笑っているのだ、不快感が凄まじい。


「……お前、名前は?」


「僕の名前はザックゲイン・フォトルライフ。神と契約したちょっとすごい人だよ」


 少年──ザックゲインはそう言うと、ニコリと笑った。

 そんなザックゲインを無視し、カナメは舌打ちする。

 神と契約──場合によっては神人のカナメですら手こずる相手かもしれない単語。

 八柱いる神々の上位四柱からは神人と同格、もしくはそれ以上の力を持つ。

 その上位四柱の内、現在生存しているのは二柱目のアルベストのみ。

 カナメはザックゲインを油断ならぬ相手と定め──両手を合わせた。


「ッ。いいねぇ、さっそくかい?」


「式神展開──『消炎都市』」


 刹那、世界が切り替わる。

 カナメとザックゲインを中心に広がる、焼け爛れた世紀末世界。

 その上空にて、カナメの眼光がザックゲインを貫く。

 それだけでザックゲインは分かった──これを食らったら、一発で死ぬと。


「だから──そうはさせない」


「……マジか」


 ザックゲインも両手を合わした瞬間──カナメの『世界』が崩壊した。


「式神展開『無味無臭』。式神を絶対に破壊する式神だよ」


 ザックゲインは崩壊する『消炎都市』の欠片を手で掴む。

 欠片は光の粒子と成って霧散した。

 後出しでも可能な、他人の式神の絶対破壊。

 それはもちろん自信には式神がないという事だが、それでも最強の式神と言える。


「へぇ、そうかよ。じゃあお前の能力が切れるまで何回も展開してやろうか?」


「あはは。さすがにそれは勘弁だなぁ……。まあ、きみなら式神なくても僕を倒せるでしょ?」


「当たり前じゃん──『極爆破』」


 カナメのノータイムの爆撃。

 ザックゲインは顔を顰めながらギリギリ回避するが、威力が莫大なためか余波で吹き飛ばされる。


「あはッ!やべー」


 ザックゲインはそのまま建物の衝突。

 粉塵が荒れるが、次の瞬間には粉塵を切り裂きながらザックゲインは復帰していた。


「ちょっと一人じゃ無理目かな。カルマ、羅閣」


 ザックゲインがパチンと指を鳴らすと、先程まで宏人たちといた六人の内二人がザックゲインの背後に現れた。

 

「ハハッ!やはり貴様でも神人相手じゃタイマンは無理か!ザック!」


「あはぁ。てかまずあたしっち三人で神人殺れんの?他の四人どしたん?」


 羅閣と呼ばれた長身で声が大きい男と、カルマというらしい少女。

 カルマは紅い髪を靡かせながら、カナメを一瞥してため息を吐いた。


「問題ないさ。パッと見七録カナメは威力特化の神人だ。ライザーの様な理不尽やダクネスの様な無理ゲーじゃない、ただの暴力だ」


「ハハハッ!ならば楽勝というもの!」


 羅閣は大声で笑いながらカナメに接近し──両手を合わせた。


「ッ」


「式神展開『格闘魔窟』ッ!」


 羅閣の式神が発動し、またもや『世界』が塗り替えられる。

 ここでカナメも式神を展開しようとしたが、『無味無臭』が容赦なく打ち消してくるだろう。

 展開をやめて、しかし両手を合わせる。


「へぇ」


 それをザックゲインが面白そうに見つめる。


「式神顕現──『炎舞魔神』」


 カナメが呟いた途端、背後に甲冑を纏った武士の様な人型の炎が二つ出現した。

 それを見て、羅閣は笑う。


「ハハ!まさか顕現も使えるとはな。驚いたぜ。でもな、俺の式神展開の能力は俺の肉体の大幅強化ァ!本来の能力と相まって──」


「ごちゃごちゃうるせェんだよ筋肉だるま」


 カナメは何を思ったのか、二体の『炎舞魔神』の頭をそれぞれの手で掴み──ぶちゅっと潰した。


「……イカレてらぁ……」


 カルマはおぇっと舌を出した。

 その間に──カナメの両手を莫大な炎が纏う。


「ッ。まずい羅閣!早く式神を解け!」


「あ?何つまんねぇこと言ってんだよザック。頭でも打ったのか?」


「ああもう!この分からず屋め!」


 ザックゲインは頭を抱えてカルマを担ぎ、『無味無臭』で外に──


「──まずは、一人」


「……あっははは。すごいね、羅閣がいないや」


 場所はまた旧『Gottmord』の組織の屋上に移り、ザックゲインは小さく舌打ちする。

 さすがに神人と戦い何も犠牲を出さずに帰れるなんて甘い考えは持ち合わせていない。

 だがまさかここまでとも思っていなかった。

 七録カナメの式神を潰し、自分以外の上位七人の式神を連続で食らわせ続ければなんとかなると思っていた。

 それこそが、甘い考えだと分からずに。


「あはは──でも、だからこそ楽しめるッ!」


 ザックゲインは瞳を輝かせながらカナメを見上げ、戦闘態勢を取る。


「ほら、カルマも」


「えぇ……。せっかくの黄泉がえりで羅閣みたいに呆気なく死にたくないんですけど……」


 カルマはそうは言いながらも逃げる気配はなく、カナメに構える。

 

「さァ!いこうか!」


 ザックゲインがそう気合を入れた瞬間──背筋にゾワリと寒気が走った。

 

 ──なにがくる──?


 刹那の時間の間、ザックゲインとカナメの視線が交差する。


 カナメの人差し指には尋常ではない程の能力が込められていて──その指が、ザックゲインにセットされた。


 カナメはザックゲインを見下しながら──口角を上げる。


「……ライザーもびっくりだ」


「──『万華鏡』」


 瞬間──カナメの花火が、ザックゲインとカルマを木っ端微塵に吹き飛ばした。

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