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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十一章 上位七人編
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174話(神サイド) 上位七人

「えーっと、皆んな一人忘れてないかしら?」


 朝。

 いつもの四バカで集まって食事を摂っていると、不意に瑠璃がそう切り出した。

 一人……一人?


「えっ、覚えてないの?あの喧しい奴」


「それって城坂って奴だろ?死んだらしいぞ」


「違うわよ。逆に誰よ」


 カナメの発言を瑠璃は辛辣に吐き捨てる。

 すまんな城坂、俺もお前のこと忘れてたわ。

 まあ、茶番は置いといて。


「ニーラグラだろ?」


「そう!宏人正解。カナメと創也罰ゲームね」


「めっちゃ理不尽。で?何するんだよ」


「僕も何したらいいのー?」


「私が言うのも何だけど二人とも割と乗り気ね……」


 瑠璃が若干引きながらあははと小さく笑う。

 つくづく理不尽極まりない。

 俺も少し笑った後、瑠璃に尋ねる。


「で?そのニーラグラがどうかしたのか」


「どうもこうもないわよ。『幻神』のソウマトウが『呪い』を管理してたからこの世界から『者』級以外の『呪い』が全部消えたんだしょ?ならソウマトウの『ファントムファンタジー』も効果が消えてるんじゃないのかしら」


「ッ……なるほど」


 確かにそうだ。

 『カミノミワザ』は侮れないが、術者本人が亡くなれば能力の維持は出来ない……はず。


「でも欠損部位が治るわけじゃないでしょ。回復制限が解除されたところで強力な回復系統の能力者いないと話にならないし。飛鳥出来んのか?」


「加えて時間経ち過ぎてるのがネックだよねー。回復系統は欠損を治す能力、でもその欠損も時間と共にその状態がデフォルトになっていくからね。本来あるべきモノを再生する回復の能力は、本来無いモノは治せようがない」


 カナメと創也のその言葉に、俺と瑠璃は何も言えなくなる。

 凪かニーラグラか。

 ニーラグラはともかく、凪を選んだ場合のニーラグラには莫大な負担をかけてしまう事になる。

 なら、話は早い。


「……凪には前線を降りてもらうか」


 俺がポツリとそう呟くと、創也は小さく笑う。


「凪はもうすごく働いてくれたからね。確かにここからは体力が有り余ってるニーラグラの方がいい。まあ単純にニーラグラの方が強いからねー」


 そして数時間後、俺たちはこの旨を凪に伝えると、凪ははぁとため息を吐いた。


「元よりそのつもりだ。俺が戦力外なのは俺が一番知っている。だからこそ、まだニーラグラを自由にはしない」


「……あなたの体から出さないってこと?……ああ。生存戦争ね」


 瑠璃は最初こそ意味が分からなそうだったが、すぐにその真意に気付く。


「そうだ。俺はこれでも『者』級。生存戦争にはほぼほぼ確実に内定している。だから生存戦争が終わるまで俺の体と意識を全てニーラグラに預ける。……瑠璃、すまないな。またお前に責任を押し付けることになる」


 凪は戦力であるとともに指揮官でもある。

 その凪がいなくなるのだ、ニーラグラでは心元ない。

 

「別にいいわよ気にしなくて。逆に嬉しいくらいよ。あなたがいなくなる時くらいしか私の出番ないしね。……まあ、絶対生存戦争参加出来ないけど」


「分からないぜ?なにせあのアトミックを倒したんだ。菱花や他の神ノーズの目にはお前はどう映ってんだろうな」


 カナメのその一言に、瑠璃の背筋が凍った。

 『読心』なんて戦闘力皆無の人間が化け物級の能力者たちの殺し合いに放り込まれるのだ。

 まあ、ただのカナメの意地悪なのだが、あり得なくもないのが怖いところだ。


「まあその時は俺たちが守るとして。瑠璃来れなきゃ指揮官いなくないか。絶対参加する奴の中で決めなきゃ駄目だろ」


 俺のその言葉に、創也は自身ありげにふふんと笑みを浮かべた。


「なら、適任がいる!」


 *


「……こいつは無理だろ」


「ハッ、失礼だな。俺は以外と頭がキレるぜ」


 創也が生存戦争の指揮官に推薦した者、それは──山崎智也であった……。

 

「まあ智也なら任せて安心じゃないかしら?昔アスファスとアルドノイズの両方に仕えていられたのはバカじゃ出来ないわ」


 すると珍しく瑠璃が肯定的な意見を言った。

 まあ確かにバカと思ったことはないが、結構マヌケなところを見ているせいなのかあまり安心が出来ない。


「俺は一瞬でアルドノイズの信用を勝ち取り、『契約』させてみせた実績を持つしな。なあアルドノイズ」


「……」


 智也は俺に、正確には俺の中にいるアルドノイズにそう問うが、返答はない。

 アルドノイズなりの智也をイジるためのギャグという可能性もあるが、実はアスファスと戦い、目覚めた日からアルドノイズの反応がない。


「ッ」


『バカか!本当に死ぬぞ、アルドノイズ!』


 今更、アスファスと戦った際、アスファスが叫んでいた言葉が脳にフラッシュバックされた。

 まさかな。

 あのアルドノイズが簡単に簡単にくたばるわけない……と思いたい。

 だから、今は。


「……あ?おい宏人、アルドノイズはどうした?」


「いや、アルドノイズはアスファスと戦って疲れたんだとよ」


 小さく笑い、そう誤魔化した。


 *


 ──最悪は突然やってくる。

 俺たちの状況や心情なんかそっちのけで、ただただ理不尽な暴力を振るってくる。

 

 昼下がり、智也と話し合っている最中、傀羅の切羽詰まった声が響いた。


「敵襲だ──ッ!」


 呪術者である傀羅と那種はこの組織の警備を任されている。

 俺ははぁとため息を吐き、よっこらせと立ち上がる。

 アスファスを倒した今、俺たちはもうそこら辺の能力者なんて敵ではないのだ。


 それが、油断。


「おっじゃましまーす」


 少年の間延びした声が木霊する。

 俺たちの前に現れたのは、ただの優しそうな青年。

 だが手に持つ剣は、とてつもないオーラを纏っていて──。


「──は?」


 刹那。

 この場にいる皆の体が切り刻まれた。

 肉を断つ不快な音とともに、赤色の雨が降る。


「ッ!?」


 何が起きた──?


「……やっぱきみは斬れないね。さすが神人」


「ナメてんじゃねえぞお前。どう死にたい?」


 俺たちが倒れる中、カナメだけはその男と対峙していた。

 カナメの持つ能力である目に見えない触れられない壁は、やはり化け物相手にでも通用する。

 あの男はカナメに任せるとして、心配なのはあの二人だ。


「凪、瑠璃……大丈夫か?」


 体を『変化』で無理やり修復しながら二人の名前を呼ぶ。

 

「私は、大丈夫……。それよりも凪が……!」


 瑠璃は『読心』で致命傷にならない様上手く避けたのだろう。

 だが凪はそんな事出来るはずもなく、腹がバッサリと切断され、仰向けで荒く呼吸していた。


「ッ」


 俺はそんな凪を見て息を呑んだ。

 いや、驚いたのは外傷ではない。

 凪の顔が、憎悪に満ちていた。


「毎度……毎度毎度俺たちが失敗するのは、お前たち死人がでしゃばるからだッ!──上位七人!」


 凪が叫んだその先──そこには六人の男女が。


「あはぁ。上位七人だって。ダサくてウケる」


「……我々強者が死んだのは何かの間違いですからね。神々が蘇らせるのは妥当かと」


「はぁ……せっかく死ねたのになんでこんなことに……」


「ハハハハハッ!俺はこいつらより七録カナメに興味がある!」


「あの、私には一体どういう状況なのか検討もつかず……ぐすん」


「……」


 皆が口々に言葉を発する中、達観した様な男だけは無言でこちらに近付いてきた。

 その男を凪は睨むが、男はまるで相手にしていない。

 俺は凪と瑠璃を守る様立ち上がり、その男と対峙した。


「……アンタ、俺らに何の用だよ」


「挨拶らしいな。まあ、俺は違うが」


 男は鋭い瞳で俺を射抜く。

 背筋がゾワリと凍え、目を逸らしたくなるが──逸らさず『変化』を手に込める。


「俺のことを忘れたか?忘れただろうなぁ。向井宏人」


 男は芝居がかった口調で言いながらも、その目には凄まじい殺気が篭っている。


 俺は、こんな奴を知らな──


「──それとも、ワシって言ったほうがいいか?」


「ッ──」


 いや、知っていた。

 お前のことは今でも鮮明に覚えているよ。

 尊厳を踏み躙ったことも、胸に手を貫く不快感も。

 お前は──俺が生まれて初めて殺した人間なんだから。


「ああ、久しぶりだな──人類の英雄。ニカイキ」


 死した過去の人間の中で、この『世界』で最も強いと神が定めた異能力者を上位七人という。

 その上位七人が──たった今日、集結した。

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