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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十章 神魔大戦・後編
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164話(神サイド) 神魔決戦⑧

 

 カナメは一瞬で己に『衝撃』を発動し、なるべく『花火』から逃れる様にしたが、やはり広範囲高威力の必殺技。

 カナメは体を焦がしながらも、荒い呼吸を繰り返しよろよろと立ち上がる。

 こんな疲労を感じた事はない、幸太やアリウスクラウン、創也の時もこれ程では無かった。

 

「ッ」


 海水の影響か、精神的か、それとも両方か。

 無くなった左腕の断面が不快に痛む。

 気合いで平衡感覚を取り戻してきたものの、やはり動きにくい事に変わりはない。

 通常時であれば先程の半自爆も華麗に避けきる事は出来ただろう。

 

 ──『花火』によって生み出された煙幕が晴れた先には、案の定エラメスが立っていた。


「さすがだな。まさか『神化』状態の私の手を落とし、よもや体半身を焼くとは」


 そうは言いつつも、エラメスの肉体に負傷はない。

 エラメスの『能力』は『随伴者』は主人と定めた、そして定められた対象よりも一段階強くなるという馬鹿げた『超能力』。

 エラメスが主人と定め、また定められたのはアスファス、つまり神であるアスファスの上位互換だという事。

 神が『能力』で自由に回復出来る異能を、もちろんエラメスも引き継いでいる。


「アリウスクラウンが泣くぜ……?」


「奴もなかなか強いぞ。アスファス様と向井宏人の勝敗は分かりきっているが、太刀花創也もアリウスクラウンに敗れるだろう。そして、貴様もたった今私に殺される。アスファス様もお人が悪い。勝敗が決まりきっている戦争をなさるとは」


「言ってろ」


 カナメは痛む体に鞭を打って一歩、また一歩とエラメスの元へ歩いていく。

 本来なら一秒でも多く会話を繋ぎ時間を稼ぐべきだろう。

 エラメスに聞きたい事は山程ある。

 痛みで頭が回らない、下唇から血が流れる。

 いつの間にか強く噛んでいたようだ。


「愚者が」


「ハッ、褒め言葉だね。じゃあアンタは聖者だ、クソジジい」


 カナメは走り出し──神経を研ぎ澄ませるッ!


 カナメの体中が燃え始める。


「どういうつもりだ……」


「いくぜオラァ!」


 カナメはハイになりながらエラメスに突撃。

 変わらずカナメの体は燃え続けているが、気にしている様子はない。

 カナメの炎を乗せた強烈な蹴りがエラメスの肩を狙う。

 エラメスはそれを余裕で躱す──が、服に飛び火が着火する。


「『爆破』ッ!」


「ッ!?」


 突如エラメスの肩が爆発した。

 発動の前兆がない突然の『爆破』。

 仕組みが分からないエラメスは困惑に顔を染め──嬉しそうに笑った。

 カナメの自爆覚悟の超技術。

 自分の炎での微弱ながらも前兆がない『爆破』。


 ──おもしろい。


 エラメスは久しぶりに自分が高揚している事に気が付いた。

 この高揚を失望に変えたくない、そうエラメスは強くも思った。


「──あっぱれだ。七録カナメ。貴様の事は忘れん」


「そうかよ。遺言か?」


 ──瞬間。

 カナメを水柱が呑み込んだ。


 *


「そろそろかなぁ……」


 七録菜緒は何でもある天国──またの名を国が菜緒を管理するための牢獄内にて、本を読みながらそう呟いた。

 本の題名は『未来』。

 菜緒のカミノミワザ、『世界真理』によって生み出された、この『世界』の未来を見通す本。

 ただ未来とは枝が連なる樹木のようなものだ。

 だから今菜緒が見ているのはただの現実で、ただのifルート。

 だがそれでもそれぞれの『世界』で違う人が死んでいき、微弱ながらも世界に変化を与えていく。

 暇潰しには丁度良い──。


「羨ましいでしょ?──ダクネスちゃん」


「うん、とってもね!ところで……これはどういう事だよ」


 菜緒の牢獄をぶち壊しながら来たダクネスは、最初はぶりっ子しながらも、すぐに裏の顔を見せた。

 ダクネスは基本誰にでもぶりっ子だが、同格の『神人』相手になると話は別。

 おそらく『神人』以外は格下のため余裕があるのだろう。

 ダクネスの言うこれ、もちろん菜緒には思い当たる節がある。


「えぇー?私ぃ、そんな難しい事わかんなぁーい」


 菜緒もふざけてぶりっ子してみる。

 すると菜緒の顔があった場所が突如劣化して砕けた。

 菜緒は既に『世界真理』で知っていたため余裕で避けた。

 そんな菜緒にダクネスはますます苛立つ。


「まずは答えろ──なんで『神人』の気配が私とお前以外に()()ある!」


 菜緒の何でもない様な態度に、ダクネスは言葉を荒げながら続ける。


「今ライザーが日本に来てるのは納得出来る。なにせ百年ぶりに神が死んだからね。そして吐夢狂弥が動き出したのも納得。今やってる戦争は後々響く。だけど──もう一人は誰だよ」


 気配は三つ、でも考えられる人物は二人。

 あと一人、もう一人、『神人』がいる。

 

「吐夢狂弥と同じ様な異世界からか?早く答えろ新人」


「あはは。新参者の神人と掛けてるの?つまらな」


 ダクネスの血管が切れた様な音がした。

 菜緒の気のせいかもしれないがダクネスはかなり短気だ。

 ありえなくもない。

 

「教えるわよ。異世界人じゃない。なんと──もう一人、この『世界』で新たな神人が生まれました」


 *


「は?おい、えっ?」


 アスファスは己の腹を見て絶句した。

 宏人の腹に開けた時よりも大きい、巨大な空白がアスファスの腹にあった。

 喘ぎ声しか出ない、悲鳴さえも出せない驚きと絶望。

 宏人の手が、また迫る。


「『変化』ッ!」


「がぁっ!?」


 またもや他対象の『変化』が発動、アスファスの右手が消滅した。

 アスファスはここでやっと理解する。


 ──向井宏人は、他対象の『変化』を使いこなしているッ!


「貴様ァ!まさか、成ったのか?上位の存在に!」


 叫ぶアスファスに、宏人は止まらず追撃する。


 *


「げふっ」


 アリウスクラウンは突然顔面に馬鹿みたいに強烈な威力の放射を浴びて地面を転がった。

 もちろんこの『世界』の能力で『能力』を消費する事による完全回復が働き全回復するが、自分の『能力』残量がごっそり減ったのをビリビリと感じる。

 

 ──やばい……。


 もう一撃今のを喰らったらこの『世界』は崩壊するだろう。

 それくらい、強烈で理不尽な、まるで──!


「あなたまさか……吐夢狂弥!?」


「正解せいかーい!僕こと太刀花創也の正体は──吐夢狂弥でしたー!」


「……」


 死んだわこれ。

 アリウスクラウンは呆然し遠くを見た。

 

「いや殺さないよー?きみはもちろん僕たちに協力してくれるはずだからね」


「はい!協力させて頂きますっ!」


 創也──改めて吐夢狂弥は、顎に手を置き呟いた。


「さて……やっと生まれてくれたね──爆発魔」


 *


「なん、だと……ッ!?」


 エラメスは目を見開き後ずさった。

 目の前にいる相手は、ただの超能力者なのではもうない。

 この気配は、この感覚は、まるでダクネスを相手にしているような──ッ!


「──『極爆破(エクスデストロイ)


 エラメスの真横を、信じられない威力の『破壊』が通り過ぎた。


「まさかこれ程とはな、七録カナメ。遂に──『神人』と成ったか」


「……なんかスゲー強くなってんだけど。おっ、めっちゃ治ってる。つーか左手もぴんぴんしてるし」


 カナメは左手を開いて握るを繰り返し、ゴキゴキと鳴らした。


「さぁて、どうやり返してやろうか」


「ふん、図に乗るなよ。神人を殺す方法はただ一つ。制御し切れていない生まれたてを潰す」


 カナメとエラメスの視線が交錯する──!


 たった今この瞬間、この『世界』に四人目の神人が生まれた。

 名前は七録カナメ。


 能力は──『極爆破』。

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