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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十章 神魔大戦・後編
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162話(神サイド) 神魔決戦⑥


「──ハハハハハハ!」


 アスファスの式神の奥義、『マーレ・サイズミック』が宏人を襲う。


「ッ──!」


 いくつもの巨大な水柱がこの『世界』に巻き起こる。

 引き込まれたら最後、凄まじい水の圧力が体をぐちゃぐちゃに潰す。

 そんな水柱の一つの上で、アスファスは高笑いしながら宏人を見下す。

 宏人は必死に駆け出すが、水柱は悉く宏人を追い詰める。

 

「つまらんぞ」


 アスファスは一瞬で宏人の元へ移動し、抜刀。

 宏人は気にせずそのまま突っ込む。


「なんだとッ」


「つぅ──!いった」


 宏人の右腕が宙を飛ぶ、だが気にせずアスファスを押し倒し水柱から逃げる。

 なかなかに不恰好だが、それもしょうがない程『マーレ・サイズミック』の威力は強力。

 呑み込まれたら最後、宏人は『変化』を放つ間もなく体をぐちゃぐちゃに潰される事だろう。


 それを宏人は自覚している、だから逃げる、逃げる、逃げる──!


 やがて『マーレ・サイズミック』の効果が終了したのか、水柱が収まった。

 

「貴様……さては痛覚神経を『変化』させているな。腹の時からか」


「……よく分かったな。まあさすがに腕とか切られると精神的にめっちゃ痛いけどな」


 宏人は無くなった右腕を振り──『変化』で生やした。

 回復系統の異能より圧倒的超スピードで回復する『変化』、だがやはりそれは回復では無く無理やり以前の腕を繋げているだけ。

 失った血も再生しているはずだが、貧血症状が起こる。


「もう、容赦はしない」


 アスファスは宏人に肉薄し剣を振るう。

 宏人は手を『変化』し、黒龍の手に。

 圧倒的な力の塊がアスファスに迫る──が、アスファスの剣術の前ではもはや無意味。

 宏人の手は無惨に切り刻まれ、普通の人間の手に戻る。


「ッ──」


 宏人も虚空より神剣『黒龍』を顕現。

 アスファスの暗龍と激突し、鍔迫り合いになる。

 

「ハッ、齧った程度の剣術が私に通用すると思うな」


 アスファスは剣を滑らせ離脱し──突っ込む。

 宏人は必死に反応するが、頬を深く切り刻まれた。

 頬から多量の血が垂れる、だが『変化』は使わない。

 残り『能力』もそんなに余裕があるわけではないからだ。


 宏人は息を吸って、吐いて……アスファスに肉薄する!


「来い、人間。貴様は神にどこまで抗える」


「ぶっ潰す──ッ!」


 宏人の拳をアスファスは華麗にいなす。

 だが宏人の肘辺りがぐにゃりと曲がり──


「『変化』」


 発砲。


「ッ!?」


 アスファスは咄嗟に回避、アスファスの顔があった部分を鉛玉が通り抜けていった。

 神にも現代兵器はそれなりに通用するのだ。

 アスファスの額から、冷や汗がたらりと落ちる。


「『凪』!」


「『焔』!」


 同格のカミノワザが衝突する。

 『凪』は四方八方を無数に切り裂く全体攻撃。

 『焔』は一箇所に莫大な威力の『純粋な真なる炎』をぶつける攻撃。

 どちらも通常の能力とは次元が違うほど強力だが、やはり宏人の精度がなっていないのか。

 『焔』では相殺しきれなかった『凪』が宏人の体を切り刻む。


「ッ──」


 致命傷、戦いに影響が出る箇所を出来るだけ避けながらも、宏人が己の血で紅く染まる。

 

「もっとお洒落にしてやろう」


 アスファスは連続で『凪』を発動!

 宏人も負けじと『焔』を放つが、やはり相手は全体攻撃。

 単体攻撃では太刀打ち出来ない──だが宏人はアスファスに突っ込む!


「うりゃァッ!」


「ガハッ……!」


 宏人は左目を潰されながらもアスファスの顔面をぶん殴る。

 アルドノイズの腕のためか威力は強力、アスファスは海水の上を転がる。

 だがやはり神、それだけでは足りない。

 宏人は左目を『変化』して治した、『変化』で回復はかなり手荒なためか、左目の視力が落ちている気がした。


「やるな」


 アスファスは立ち上がり、髪をかき上げた。

 宏人は口元の血を拭い、アスファスと対峙し──どちらからともなく業を放つ。

 アスファスはハイになったのか、大声で笑いながら両手を広げる。


「これが、これこそがッ!神の御業だ」


 アスファスはまたもや『凪』を発動。

 しかし今度は通常時の疎な全体攻撃では無く、幾つもの『凪』を重ね合わせた網目状。

 

「ッ!」


 逃げ場がない範囲攻撃、しかも喰らえばその先は死──。


「……」


 宏人の戦い方は基本肉弾戦がメインだ。

 攻撃を受ける前提のスタイル。

 だから宏人は、今回も変わらない。


「ほう……!」


 アスファスは興味深そうに顎に手を置く。

 

 宏人は──『凪』に突っ込んだ。

 宏人の精度が荒い『焔』ではこれに通用しないのは理解しているからだ。

 だからといって無謀に他ならない。

 しかし宏人は己にありったけの『変化』をかけまくって『凪』を食らう。


「────ッ!!!!」


 強烈な痛みと、『変化』の果てしない超回復がぶつかる。

 指が細切れされ、肘がひしゃげり、腕がもげ──元通りに『変化』する。

 足の指が無くなり、踝が割れ、膝が砕け──それでも『変化』は宏人の体を元の形に。

 急所は有るようでない手で必死に守り──『凪』を通り過ぎた。


「なんだと……!」


 宏人はそれだけでは止まらずアスファスに肉薄し──


「ッ!?」


 顔面に強烈な一撃を叩き込む。

 アスファスは後方にぶっ飛び──転びはせず、悠然と立つ。

 

「ははっ、人間かよっ」


 アスファスもそこから一瞬で宏人に肉薄、そして顔面に強力な膝蹴りを叩き込む!


「ガハッ」


 満身創痍な宏人に容赦ない一撃、宏人は後方にぶっ飛び──アスファスと同じ様に倒れず立ち続ける。

 宏人の鼻から夥しい程の血が噴き出る。

 それはこのアスファスの膝蹴りもそうだが、『変化』の乱用も体にきている証拠。


 アスファスはそんな宏人に追撃、再度虚空より神剣『白龍』を顕現し、『暗龍』と二刀流で宏人に襲い掛かる。

 宏人は冷静に神剣『黒龍』と、手自体を『変化』させて創りだした神剣『白龍』で対処する。

 だがこれもやはりアスファスの方が上手、時間が経つ程宏人の態勢が崩れていく。


「クソッ……!」


「所詮紛い物というわけだッ!」


 アスファスの強烈な一撃が宏人の手から『黒龍』を手放させる──ッ!

 完全に態勢が崩れた宏人に、待った無しの次のアスファスの攻撃が来る。


 ──迫り来る、死。


 このどうしようもない感覚はいつぶりだろうか。

 宏人は走馬灯の様に、今までを振り返る。


 そうだ──海野維祐雅の時だ。


 ハッと、あの時の事を思い出した。

 祐雅の『勇者剣』が宏人の首を切断する寸前、宏人の『変化』は覚醒の片鱗を魅せた。

 その後も『変化』は低確率で他対象を発動したが──エラメスとの戦闘の際は発動しなかった。

 これは対象との格差による制限か、それともただの確率か。

 分からない、でも、一つだけ分かる。


 ──たった今この瞬間、俺は、俺の『変化』の確信を掴んだッ!


「──『変化』」


「ッ──!?」


 宏人の手に触れた神剣『暗龍』が、音もなく砕け散った。

 アスファスは驚愕に目を見開く、その間も宏人は止まらずアスファスに肉薄。


「『変化』」


 アスファスの腹にとんっ、と。

 手を置いた。


「仕返しだ」


「──は?」


 アスファスの腹に、巨大な円形の穴が空いた。

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