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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十章 神魔大戦・後編
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160話(神サイド) 神魔決戦④

 

「ッ──!?」


 創也は突如背後より『炎舞』に焼かれ、前のめりになったところを、アリウスクラウンに足蹴りされた。

 創也はうめき声を上げながら地を転がり、なぜ今背後から『炎舞』を浴びたのか辺りを見回した。

 アリウスクラウンは創也の目の前にいたから不可なはずだ、花も『止眼』で行動不能にしている。

 そんな中──先程創也がいた位置の地に、無造作に抜かれた『お花』が萎れて落ちているのが見えた。


「気付いた?実はこの『お花』、抜いても『炎舞』使えるのよね。一回限りだけど」


「あはは……辛ぁ」


 創也は自分の背中を触ってみると、かなり酷い火傷だと確認出来た。

 アリウスクラウンは創也に地面に叩きつけられる瞬間に、創也の背後に『お花』を投げたのだろう。

 それがオートで発動し、創也の背を焼いた。

 辺りを見渡してみると『お花』は13本に──創也の背筋が凍る。


「ッ──!」


 案の定背後よりまた『炎舞』が。

 創也は後ろに飛び回避。

 だがその先には、創也の行動を読みきっていたアリウスクラウンが。


「『炎舞』!」


「つぅっ──!」


 創也の体を、今度は前方より『炎舞』が焼く。

 しかし創也は気合いで何とか耐え、目の前のアリウスクラウンを見据えて──駆け出す!

 アリウスクラウンは楽しそうに格闘の構えを取り、創也の拳を抑える。

 創也は片目の『止眼』を解き──


「『雷眼』!」


「『炎舞』!」


 アリウスクラウンの頭上より雷が落ちる──が、アリウスクラウンはそれを『炎舞』で相殺。

 『止眼』は片目では効果が足りなかったのか、およそ半分の『お花』が『炎舞』を吹く。

 創也は再度両眼を『止眼』にした上で、四方八方からの『炎舞』を『勇者剣』で薙ぎ払う!


「やるわね」


「僕って強いからね」


「でも、『勇者剣』の代名詞たる『クラスオーバー』を使ってないみたいだけど、まだその域には達してないって認識でいいのかしら?」


「どうだろう、ね!」


 『勇者剣』がアリウスクラウンの首の皮を斬る。

 軽く血が垂れる首元を押さえながら、アリウスクラウンは生身で創也の間合いへ入る。


「死ぬよ?」


「これが私の戦い方なの。得物は使わない主義でね」


 創也は『勇者剣』を横一閃、アリウスクラウンは上半身を反り余裕で回避する。

 アリウスクラウンは『炎舞』を発射し──その炎を『炎舞』で消した。


「ッ!?」


 創也の『勇者剣』が虚空を斬る。

 が、すぐに体制を整えてアリウスクラウンを見据え──いない。

 アリウスクラウンの意味不明な炎に目を移した創也の隙を狙って視界に映らない位置に移動したのだ。


「──私が得物を使わない理由」


 瞬間、『勇者剣』の剣先を握るアリウスクラウンが目の前に現れる。

 創也がなぎ払おうとする直前、アリウスクラウンは創也の目前で『炎舞』を発動。

 創也は剣を動かそうとするが──動かない。


「ッ!」


 アリウスクラウンの力は想像以上に強く、創也ではピクリとも動かさなかった。

 創也は瞬時に対処法を変更し、再度片目の『止眼』を解き近距離戦に強い『破眼』を発動。

 『破眼』は『炎舞』をやすやすと打ち払い、目の前のアリウスクラウンの顔面をも巻き込む。

 だがアリウスクラウンは気にせず力を込め──創也の手から『勇者剣』を引っこ抜く!


「なに!?」


「何か持ってたら、敵から何も奪えないからね!」


 アリウスクラウンの顔面は既に修復を遂げており、『勇者剣』を投げ捨て両手より『炎舞』。

 巨大な炎が創也を襲う──その背後からも、一瞬でも『止眼』を解いた影響か一部の『お花』から『炎舞』が飛んでくる。

 

「あっははははは!やっぱきみ強いねぇ!」


 創也は迫り来る死の中、ハイになった様に笑い声を上げ──焼き尽くされた。

 だがそれだけではアリウスクラウンは止まらず、炎の中より飛び出し、そのまま創也を飛び蹴り。

 『炎舞』は炎を操る異能、この四方八方からの爆炎の中、己を焼かない様にする事は容易い。

 創也は焦げた体を地面に叩きつけられ、呼吸困難、アリウスクラウンは容赦なく馬乗りになり──拳に炎を乗せる。

 これもまた、カナメが拳に付与した『衝撃』と同じ原理。


 アリウスクラウンの拳が、創也の顔面を潰す──!


「かはッ……!」


「まだまだ」


 アリウスクラウンはもう一度創也を殴ろうとする。

 創也は瀕死、だがまだ眼は開き、『止眼』は発動している。

 創也の体は既に原型を留めておらず、髪は燃え尽き体の一部は炭と化している。

 それでも耐える創也にアリウスクラウンは賞賛するしかなかった。


 だが、アリウスクラウンの拳が再度創也へ到達する寸前、『止眼』が解かれた。


 ──気絶した?


 アリウスクラウンはその様に考えながらも、拳は止めない。

 アリウスクラウンの額より冷や汗が垂れる。

 『眼』、それは、アリウスクラウンが最も嫌う吐夢狂弥と同じ系統の異能で──!


 その時──創也の『眼』が、時計の様に形が変わった。


「『時空放射』──ッ!」


「ッ!!??」


 刹那、創也の体はまるで戦う前の様に元通りになり──アリウスクラウンは吹き飛んだ。

 

 創也の『眼』から、『12』と『11』が消滅した。


 *


──粉塵が吹き荒れ、視界が遮られる。


「はあ、はあ、はあ、はあ──」


 上空にて龍たちが激戦を繰り広げている中、宏人は肩で息をしながら、ただただ目の前を見つめ続ける。

 数秒、数十秒、一分と経っていき……やがて粉塵が晴れる。

 その先には──何も無かった。


「か、勝った……のか?」


 フラグだと分かりつつも、そう言わずにはいられなかった。

 だがそれも仕方がないほど──アスファスは、そこにいなかったのだ。


「よ、よかったぁぁぁ」


 宏人は半分泣きながらその場でへたり込み、仰向けで上を見た。

 するとそこでは、もちろん黒龍と白龍、暗龍が戦っていた。

 黒龍は二体の龍になす術もなく攻撃されていたが、必死に足掻いて食らいついていた。


「……こっちも片付けないとな」


 宏人はため息を吐きながら、黒龍を剣に戻した。

 二体の龍が、宏人を睨み付け──来る!


「『ヴォルケーノ・インパクト』!」


 宏人は迷いもせず再度この『世界』の奥義を唱える。

 すると二体の龍は、凄まじい断末魔を上げながら『ヴォルケーノインパクト』の下敷きになった。

 あまりの威力に、宏人は苦笑いする。


「これ、アルドノイズに使われていたら完全に負けてたな……」


 宏人は瞑想し、自分の能力残量を確認する。

 すると、未だ半分も使っていない事が分かった。

 どうやら式神の奥義業は能力を使用するのではなく、この『世界』の精度を代償にしているらしい。

 つまり──この『世界』は既に三段階は精度が落ちているわけで。


「──さすがに、一撃じゃムリか」


「「グギャアアアアアアアアアア!」」


 二匹の龍は鼓膜を殴りつけながら雄叫びを上げた。

 白龍は前方より、暗龍は後方より宏人に迫る。

 宏人は大きく息を吸い──アルドノイズの手を巨大に『変化』!


「ッ──!!」


 白龍の牙と宏人の巨大な手が激突する。

 衝突する際の衝撃で臓器が悲鳴を上げ、腕が軋む。

 後方の暗龍は黒龍が対処しているが──白龍と暗龍は宏人のすぐ近くで咆哮。


「〜〜〜〜ッ!」


 宏人は歯を食い縛り、『変化』に力を込めた。

 歯茎から血が垂れ、目が充血する。

 

 そして──唱える。


「『変化』ッ!」


「──ガギャアアアアアアアアア!!??」


 宏人は一か八かの他対象の『変化』を発動!

 成功したのか、白龍は更に鳴き叫ぶ。

 それは悲鳴の様にも聞こえ──怒りの様にも聞こえた。

 白龍の血走った目が、宏人を睨みつける。


 刹那。


「ガッ!?」


 白龍の尾が宏人を叩き、後方は吹っ飛ばした。

 宏人は地を転がり、胃の中のモノを吐き出す。

 息も絶え絶えで、絶体絶命の中──白龍は静かに消滅していった。

 それと同時に、付近で暗龍も消滅、さすがに『ヴォルケーノインパクト』を食らった直後に黒龍と一対一はキツかったらしい。

 耳が壊れたのか、耳鳴り以外何も聞こえない。

 宏人は耳を『変化』し、元の状態に戻した。

 立ち上がり、伸びをする。

 宏人の体に激痛が走った、転がった時に身体中を傷付けてしまったのだろう。

 宏人はズキズキと痛む体を無理やり起こし──顔を顰める。


「だからさあ……もう勘弁してくれよ──アスファス!」


「私があの程度で死ぬわけないのは、薄々察していただろう──向井宏人ォ!」


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