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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十章 神魔大戦・後編
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158話(神サイド) 神魔決戦②


「……アルドノイズが、死んだ……?」


 アスファスは自分の言葉を恐れる様に、小さく呟いた。

 それは果たして最愛の弟を目の前の相手に殺された怒りから発せられたものなのか、はたまた別の何かか。

 宏人は知るよしもないが、宏人がすべき事は一つ。


 そう──アスファスに、勝つ!


「『変化』──ッ!」


 宏人は素早く両手だけをアルドノイズに戻す。

 アルドノイズを取り込んだため適性が得られたからか、宏人は全身をアルドノイズに『変化』しても何の問題も無くなった。

 しかしそれはもはや向井宏人ではなく、アルドノイズ。

 思想の変化、思考の変化、使い口調の変化──その他諸々も完全にアルドノイズへと『変化』している事が分かった。

 確かにアルドノイズの体の方が耐久力、防御力、攻撃力その他諸々も圧倒的に上だが、宏人も半分悪魔。

 

 その為宏人は向井宏人として挑む──宏人の左手より、灼熱が疼く。


「『バースホーシャ』」


「ガッ!?」


 爆炎がアスファスを焼き尽くす。

 その上で、勢いのまま右手で顔面を殴る。

 アスファスは呆然としていたためなんの受け身も取れず、焼かれながら地を転がる。

 見た目がソウマトウのため若干心苦しいが、そうは言っていられない。


 そして、宏人は集中する。


 ここは式神展開『極廻界』。

 アルドノイズだけの、アルドノイズによる地獄。

 それを宏人がぶっつけ本番で使用する、それは不可能な様に見えて、既に『バースホーシャ』を会得している宏人にとっては、とても楽なものであった。


「来い──獄犬(ごくけん)ッ!」


 宏人の影から、アスファスの影から、大量の『犬』が出でずる。

 狼の様な姿を持つ黒いソレから、血の様な唾が垂れる。

 これは『極廻界』の権能の一つ、影より式神『獄犬』を生成する能力。

 もちろん、『獄犬』にも影があるため、半永久的に増殖していく。

 それを見逃すアスファスではない──はずなのだが。


「……嘘だろ、嘘だと、言ってくれ……」


 アスファスは動かない。

 得意の水系統の異能で体を蝕む炎は鎮火した様だが、それでも外傷は酷いもの。


 ──勝てる。


 宏人の頭にそんな確信がよぎる。

 やがて、この一瞬で『獄犬』は数千体にまで増殖。

 宏人はその間にもアスファスに突撃、獄犬も後に続く。


 そして唱える、この『世界』の真髄を──


「『ヴォルケーノ・インパクト』ッ!」


 かつて宏人と戦ったアルドノイズは、吐夢狂弥の『世界』の上で無理やり式神を展開してきたためか、発動出来なかった、この『世界』の奥義──!


「燃やし尽くせ」


 アスファスの座標に、突如真上の空間が割れ──爆炎が降り注ぐ!

 アスファスは未だ動かない、目に光がない、口からはぶつぶつと言葉として成り立っていない声が漏れている。

 まるで廃人、そんなアスファスの目を、猛炎の輝きが焼く。

 

 ──その輝きで、アスファスの思考が再開した。


「……なぜだ」


『ヴァルケーノ・インパクト』が当たる寸前、アスファスの口からぼそりと疑問が溢れる。


「なぜ、アルドノイズを殺しただけで、向井宏人がアルドノイズの異能を使える……?」


 コンマ一秒にも満たない思考の世界で、アスファスの脳が超高速演算を開始する。


 ──なぜ向井宏人がアルドノイズの異能を使用出来る?

 アルドノイズを取り込んだ?いや待て、アルドノイズが宏人の体を操っているだけの可能性も。

 ではなぜアルドノイズは戦闘向きではない向井宏人の体で戦う?

 私の心の揺さぶりのため?違う、口調も何もかも今目の前にいるのは向井宏人──


 ──向井宏人は、ほぼ完璧な『器』。

 そんな『器』が、瀕死の神を取り込んだら?


 ──神の意識ではなく、『器』の意識の方が上乗せされるのではないだろうか。


 アスファスはそこまで思考すると──ありったけの『能力』を込める!


「──式神展開!『幻想幻魔』ッ!」


「ッ!?」


 そう、これはソウマトウから習った、『世界』の奥義への対策!

 己の『世界』を顕現する事で、他人の式神の異能を相殺する神業。

 果たして『ヴォルケーノ・インパクト』によって生成された爆炎は、まるで最初から何も無かったかの様に突然消え失せた。


「……」


 ──宏人は、手をグッと握る。

 多分、ここから本番だ。

 

 先程の余波で宏人とアスファスの髪が揺れる。


「随分痛ぶってくれたな、向井宏人。安心しろ、持ち直した」


「……どういう心境の変化だ?お前の心の内まで『変化』した覚えはないんだけど」


「ふっ、確かに『変化』なら鍛え抜けばその領域にいけるかもしれんな──さて。殺すぞ」


 アスファスは不敵に笑いながら宏人に近付いてくる。

 しかしながら、先程宏人の猛攻を無抵抗で浴びたばかりだ、外傷は酷いもので、とても万全とは言い難い。


「──顕現、『黒龍』!」


「顕現、『白龍』」


 先手必勝と宏人が黒龍を顕現させると同時、アスファスは読んでいたとばかりに余裕の笑みで白龍を顕現する。

 だがアスファスは、また虚空より剣を取り出す。

 

 暗い色の、まるでソウマトウを模したかの様な神剣が──


「ッ!まさか!?」


「そうだ──来い、『暗龍』」


「グキャァァァァァァァァァァァ!」


「──ッ!」


 上空にて黒龍と白龍が戦いを広げている中、宏人の鼓膜を容赦なく叩きつけながら、暗龍が飛び立ち──黒龍に牙をむく。


 宏人の心臓がバクバクとうるさい音を立てる。


「さあ、時間制限をプレゼントしてやったぞ。黒龍が耐えられるのは──精々10分と言ったところか?」


「……!」


 宏人は下唇を噛み締めながら──覚悟を決める。

 もう、考えてなどいられない。


「行け、獄犬!」


 宏人の合図で、何満もの獄犬がアスファスに突撃。

 

「『流水群』」


 アスファスは無数の水の隕石を辺りに撒き散らし悉く獄犬を潰す。

 多対一を想定した、アスファスが使う全体範囲攻撃。

 元より一体一体の性能が低い獄犬ではなす術もなくアスファスに到達する前に消えていく。

 その間に宏人は『バースホーシャ』、アスファスもいち早く気付き『カオスリヴィエール』。

 同じ位のカミノミワザ、だが、『バースホーシャ』を使用するは向井宏人──


「ッ──!?」


「精度が荒いな、話にならん」


 アスファスのカミノミワザが打ち勝ち、少量ながらも強烈な『カオスリヴィエール』が宏人を襲う。

 そんな宏人にアスファスは『流水群』の一部で追撃。


「はあぁぁぁぁぁぁぁあ!」


 宏人はそれを拳で迎え撃つ!

 アルドノイズの手に『変化』しているのにも関わらず、『流水群』は宏人の右手を粉々に潰した。

 宏人は途轍もない痛みに悲鳴をあげそうになりながらも、視界にアスファスを収め──唱えるッ!


「──ッ!『ヴォルケーノ・インパクト』!」


「チッ──『カオスリヴィエール』!」


 宏人は再度『獄廻界』の奥義を発動!

 アスファスは瞬時に巨大な『カオスリヴィエール』を生成、それで以って『ヴォルケーノインパクト』を迎え撃つ。

 

「アアアアアァァァァァァァ!」


「チイイイイイイイイイイイ!」


 仮にも神の最大奥義、宏人に手足が引きちぎられる様な激痛が襲い掛かる。

 だがそれでも宏人は止まらない──絶叫をあげながらも、精度は絶対に落とさない!


「アスファス!お前は今、ここで潰す!」


「やってみろ、向井宏人ォォォォォォォォ!」

 

 アスファスは更に『カオスリヴィエール』の威力を増加、遂に宏人と互角に並ぶ。

 

「ッ──!」


 どちらかが気を抜いた瞬間、両者の最大出力の攻撃により死する事が確定している程の威力。

 これが、カミノミワザ。

 神だけが扱える、最強の威力を誇る異能。

 それをただの人間が扱う、宏人の体が悲鳴をあげる。

 宏人は激痛に今にも全て放り投げて楽になりたいという感情を必死に押し殺しながら──ただただアスファスだけを見据えて食らいつく。


 そして──どんどんどんどんと宏人の『ヴォルケーノインパクト』がアスファスの『カオスリヴィエール』を押し返す!


「……ッ!?」


 アスファスの目が、驚愕に見開かれた。


「これで──終わりだ」


 宏人のその言葉を皮切りに。


 『ヴォルケーノ・インパクト』が、アスファスを粉々に粉砕した──!


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