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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十章 神魔大戦・後編
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157話(神サイド) 神魔決戦①


「さて──どうしてくれようか」


 アスファスが興味なさげに視線を向けるその先には──智也と傀羅とフィヨルド。

 フィヨルドに関しては霊体のためか、先程より損傷はない。

 しかし智也と傀羅の状態は酷いもので、アスファスによって体中血だらけであった。


「……お前らは好き勝手やり過ぎたんだよ。だから今日宏人たちがお前らを殺す」


「笑わせるなよ。まあ、正直に言うとそれは確かに私一人ではありうるだろうな。なにせ向こうにはニーラグラがいるに加え、超級能力者が数人いる……だが、だとしても──エラメスには届かない」


 するとエラメスが近付いてき、胸に手を置き、促す手話をする。

 それにアスファスはニヤリと笑い、智也を放り投げる。

 智也はうめき声を上げながら地を転がり、やがて壁に激突し止まった。


「貴様らは好きにしてろ、ザコには興味なくてな」


 アスファスがエラメスとアリウスクラウンと共に外へ出ると──


「──来たか」


 頭上より、七録カナメ、太刀花創也と──アルドノイズが飛び降りた。

 着地の仕方が危なっかしい事から、カナメの『爆破』で飛んできたのだろう。


 ──アルドノイズを見て、アスファスはまるで子供の様に楽しげに笑う。


「貴様らだけしかいないのか?まさか一人ずつ順番になんてふざけた事は抜かさないだろうな」


「……?ソウマトウだと」


 そう──アスファスの姿はアスファスではなく、ソウマトウ。

 なんと、アスファスは『器』をソウマトウとしたのだ。

 神が神を『器』とする、それ即ち血の通った兄妹の意識を殺し尽くすという行為。

 アスファスは不敵に笑いながら、顎を上げてアルドノイズたちを見下す。

 相手を見下す、アスファスの癖。

 

「胸糞だな」


 そこでカナメがアスファスに『爆破』。

 もちろん届かない、当たり前だ──アスファスの前には、常にこの男がいる。


「久しいな。七録カナメ」


「ああそうだな、会いたくなかったぜクソ老害!」


「……ねぇ、創也。やっぱこっち側に戻ってきてくれないかしら?私もう疲れてるんですけど……」


「いやいや、アリウスクラウンこそこっち側寝返った方がいいと思うよー。勝つの、こっちだから」


「ふん、まあいい。他の奴らが死のうが生きようが、正直心底どうでもいい。──アルドノイズ!私とお前、最後の決戦といこう!」


「なぜお前たちの方が有利な事前提で話が進んでいるのか分からんが……。いいだろう、来い──アスファス」


 アルドノイズのその一言で、創也がアリウスクラウンの目の前へ、カナメがエラメスの目の前へ。


 そして──重なる。


「式神展開──!」


 *


「──『龍宮城』!」


「──『極廻界』!」


 アスファスとアルドノイズ──宏人の式神が激突するが──


「ッ──!?」


 アスファスの式神が、一気に宏人のを押し返す。

 宏人はアルドノイズの力を完全に扱える様になったのだ、だからアスファスとの押し合いでこんな簡単に負けるはずがない。

 という事は、考えられる事は一つ。

 

「まじかよ!もう『神化』してんのか……!?」


「……?」


 宏人の言動に首を傾げるアスファスを他所に、宏人はもう一度手をパンッ!と叩く。

 その宏人の発言に、アスファスの顔が歪む。


「式神展開──『変化自在』!」


「ッ……なん、だと……?」


 アスファスの式神と『極廻界』が押し合いをする中、その『極廻界』を後押しするように『変化自在』が展開される。

 すると突然、アスファス側の制御が落ち──宏人の式神が押し返す!


 そして──完成。

 完成したのは、式神展開『極廻界』。


 式神の押し合いで疲れた体に酸素を回す様、宏人が肩で呼吸をしていると、アスファスが恐る恐る問う。


「お、お前は……アルドノイズ、だよな?」


 アスファスは、珍しく酷く怯えている。

 それに宏人は口を開こうとし……やめて、少し考える。

 ここで素直に言うのか、バレないように事を運ぶか。

 アスファスは激怒でテンションが上がるのか、下がるのか。

 だがそんな事よりもただ──宏人は、言いたかった。


「いや、違うな。俺は向井宏人だ」


『変化』を解き、宏人は向井宏人に戻る。

 アスファスの顔が、真っ青と化す──


「アルドノイズは、俺が殺した」


 *


「──『血花乱舞』」


「──『勇者城』」


 アリウスクラウンと創也の『世界』が、激突する。

 

「へぇ、その剣式神もセットなのね。便利」


「でしょでしょー。しかもこれ、意外と強いよ」


 創也の呼び掛けに応える様に、『勇者城』が『血花乱舞』を押し返していく。

 そして遂に、『勇者城』が──


「──でも私は、もっと強いわよ」


 ──押し返された。

 やがて『世界』が確定する──『血花乱舞』に。

『お花』が咲いた赤き楽園、そしてアリウスクラウンに無限の回復力を与える異国。

 中に迷い込んだ者を『お花』は許さず、踊る様に焼き尽くす。


 それこそが──『血花乱舞』。


「よし、じゃあ2ラウンド目、スタートだね──式神展開──」


「えっ、ちょ──」


「『魔眼界合』!」


 後出しが不利な式神術の解釈を塗りつぶす様な速度で、『魔眼界合』は『血花乱舞』を塗り替えした。

 集合体恐怖症を持つ者が一度入れば失神する事が免れない程の無数の『眼』が、侵入者を睨みつける。

 その『眼』一つ一つに能力がある、かつてアルドノイズでさえ恐れた異能。

 アリウスクラウンの額から、一筋の汗が垂れる。


「さて」


 創也は楽しそうに笑い、アリウスクラウンを見た──無数の『眼』と共に。


「あはは……どしよ」


 アリウスクラウンの足は、めっちゃ震えていた。


 *


「──『消炎都市』」

 

「来い」


 カナメが式神展開するのを、エラメスは無言で見つめる。

 確かにエラメス自身には式神がないが、エラメスの異能、『随伴者』によって、支える者、すなわちアスファスの異能を全て使用する事が可能なのだ。

 だが式神だけは受け取りきれないらしく、神が人間と一度だけ出来る『契約』によって、命を削る事を前提で式神を扱える様になる。

 つまり、エラメスにとって式神は最終手段。

 だがカナメの式神は── 一撃必殺。


「相手が悪かったな──『花火』」


 カナメは『世界』が完成次第すぐに跳躍、そして『花火』を沈下。

 だがエラメスはすぐに状況を察知し、カナメの意図を把握する。

 ──あの『花火』がこの地に落ちた瞬間、計り知れない大爆発がこの身を襲うと。


 つまり、カナメの『爆破』かそれ以上の異能とこの地の接触を避けなければならない──


「容易い──『流水群』」


 *


 それぞれが激突する中、凪は旧『Gottmord』本部へやってきていた。

 本来ならアスファスらとの戦闘前にやっておきたかった事だが、いかんせん時間がなかったのだ。

 瑠璃やクンネルに任せても良かったが……何が起きるか分からないこの戦いの最中では、正直力不足だ。

 現在瑠璃たちは負傷した智也と傀羅の看病をしている。

 凪が入り口のドアに手をかけると、人の気配が。

 いや、人以外の気配も含まれている。

 緊張気味に扉を開け、中を確認する──誰もいない。

 

「──おかしいですね、まさか気付かないとは」


「ッ!?」


 凪が驚いて振り向くと、そこには──黒夜が。

 黒夜が、いた。


「勘が鈍りましたか?──凪」


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