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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十章 神魔大戦・後編
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156話(神サイド) 会議


「──そもそも力不足、また負傷等で戦えない状態にある人、あとまだ実力が把握してきれていない智也と傀羅を除くと、今回戦うのはこの人たちね」


 瑠璃はホワイトボードに並べてある宏人たちの名前のカードを数枚剥がす。

 剥がしているのは言葉通り戦力外の者たちだ。

 そしえ残ったカードは──向井宏人、七録カナメ、太刀花創也、ニーラグラ。


「──て、私もぉぉぉぉ!?」


「あらニーラグラ、起きてたのね。元気そうで何よりだわ」


「えっと、ほら、私はもうヘトヘトというか……」


「ニーラグラ、あなた一度も式神展開してないでしょ。なら神の馬鹿みたいな能力量で何とかなるはずだし、何より凪の体使ってるんだからもっと働きなさい」


「そんな事言われたってぇ……!」


 ニーラグラはポスンと再度ベッドに潜り込む。

 アトミックとの戦いは本当にギリギリで怖かったのだろうと思っていたが、実は結構余裕があったという事だ。

 

「……」


 宏人はなんだかんだ言ってやっぱ神なんだよなぁと再認識する。

 

「ところで凪の『模倣者』は使える様になったのかよ?」


「……使えない」


「……何というか、凪の体使うのやめたら?」


「うん、やっぱそうだよね……。私がミスって凪くんになんかあったら大変──」


「──ニーラグラ」


 ニーラグラの言葉を遮り、瑠璃が力強く言葉を放つ。

 

「今思いついたんだけど……逆に、あなたの体を、凪に使わせる事は出来ないかしら?」


 瑠璃のその提案に、ニーラグラはついにこの時が……!みたいな顔をして、しぶしぶ頷いた。

 

「うん……いいねぇそれ、やってみよぉか」


「あなた、さては分かってて黙っていたわね」


「ギクぅ!」


 なぜニーラグラが喋り出すと茶番じみるのか、宏人は割と真面目に考える。

 結論はあっという間に馬鹿だからで纏まったが、それはそうと、凪という戦力が復活するのは嬉しい。

 ……ニーラグラが戦力外というわけではない、むしろここにいる誰よりもポテンシャルはあるだろう。

 だがしかし、とても戦闘慣れしているとは言い難い。

 そうなると、ニーラグラの体と能力を使う凪はそうとう強いのではないだろうか。


「なぜ嫌なの?」


「えー……。普通そうじゃないの?瑠璃ちゃんだって、カナメに体の自由をあげろって言われたら多少なりとも嫌でしょ?」


「ええ、絶対に、嫌ね」


「キツー」


 カナメの心には意外と結構なダメージが入ったらしく、カナメは胸を抑える。

 南無三。


「まあ、ニーラグラには我慢してもらうしかないわね。安心なさい、凪がえっちな事したら宏人の『変化』で肉塊にした後カナメの『爆破』で粉々に粉砕するから」


「それ私も死んじゃうから〜〜!」


「それよりも作戦だろう」


 二人がきゃっきゃしていると、クンネルが咳払いと共に声をあげた。

 当然である。

 クンネルも意外と作戦指揮に向いている。


「ごめんなさい。ニーラグラのせいで調子に乗ってしまったわ」


「なにをむごごごごy」


「はーい黙ってようかー。話が進まない」


 喋り出そうとしたニーラグラの口をカナメが塞いだ。

 瑠璃が無表情でカナメにグッと親指を立てながら、再度ホワイトボードに向き直る。


「さて、まずは敵はエラメス、アスファス、アリウスクラウンの順で強いと言われているけれど、どうするか決めましょうか」


「──俺がエラメスと戦る」


 瑠璃の言葉が終わるとともにカナメが挙手した。

 そんなカナメに、創也が珍しく口を開く。


「本気?カナメならアスファスとタイマンした方が確実だと思うけど」


「じゃあ誰がエラメスの相手するだよ。アスファスはお前らに任せる、だから俺がエラメスとタイマンする」


「ちょっと待って。なぜエラメスと一対一で戦う必要があるるのよ。私は創也の意見に賛成よ。心苦しいけれど、アスファスとあなたを戦わせて、他のみんなでエラメスと戦った方が確実だもの」


「アリウスクラウンもいるんだぞ。あいつだってザコじゃない。何なら式神展開の押し合いで負けると八割死ぬぞ」


「半無限回復ね……でもどうにもならない一撃を入れたらそれで終わりなんでしょ?例えば宏人の『変化』で石ころとかに変えたらそれで一発KOじゃない」


「まあそうだけど……それくらいだろ。あと宏人の『変化』他対象での発動はめっちゃ確率低いし、『お花』とあいつ自身の格闘術もあるから迂闊に近づけないわけで」


「そうね……なら、アリウスクラウンには創也じゃない?」


 瑠璃がそう呟くと、創也の口角が上がる。


「気付いたー?俺なら式神でも張り合えるし、何でも斬れる『勇者剣』で対応出来る。問題は半無限回復だけど、どうにかするさ」


「信じていいのね?」


「おうよ。勝ってみせるさ」


 ここで、アリウスクラウンには創也をぶつける事が決定した。

 あと残るは問題のエラメスとアスファス。

 宏人もエラメスと戦おうと挙手しようとするが……以前、圧倒的な力の差を見せつけられたためか、どうしても口を開くことが出来ない。

 

「宏人、お前はアスファスと戦え」


「……!」


 宏人が思考に耽っていると、突然カナメがそう言った。

 まるで宏人の思考を読み、エラメスから話す様に。

 

 そして、カナメはタハハと笑いながら振り向き、言う。


「お前もそう思うだろ?──凪」


「ああ、宏人、お前はアスファスを倒せ」


 そう──凪が、口を開いた。

 今までの体だけの凪ではなく、ちゃんと中身の、凪が。

 ニーラグラから体の主導権が返されたのだ。

 宏人は力強く頷き、宣言する。


「分かった──俺がアスファスをぶっ飛ばす」


 これで、宏人とアスファスが戦う事が決まった。

 勝てるかどうかは分からない。

 だが、以前アルドノイズと戦った時よりは強くなったのだ。


 ──アスファスに勝って、この戦争を終わらせる。


「凪も宏人と戦わないの?アルドノイズの時は一緒に戦ったらしいけれど」


「俺は──黒夜、コット、死神の生存の確認をする」


 *


 エラメスは、黒夜らとの戦闘から帰還して以降、アスファスに黙っていた事がある。


 そう──アルドノイズが、向井宏人によって取り込まれている件についてだ。


「アリウスクラウン、少し、いいか?」


「はい。あの件ですね」


「察しが良くて助かる」


 エラメスはアリウスクラウンとアスファスから程よく離れた所まで来ると、口を開いた。


「さて、お前も気付いた様に、アルドノイズが向井宏人に封印されている事だが……」


「あっ、そっちですか……」


「……もう一つ懸念があるのか?」


「いえ、ただ私の給与アップの事かと……」


「……検討しよう。それはともかく」


 エラメスはゴホンと咳払いをして、この場の空気を正す。


「アルドノイズと向井宏人の件についてだが……アスファス様には、黙ってもらえないだろうか」


「……!意外ですね。エラメス様ならもう既に伝えているのかと思っていました。なぜです?あとこれ私がアスファス様に怒られたりしません?」


「アスファス様には、事が終わり次第私から頭を下げる。何ならこの命を捧げても構わない」


「……なんでそこまで。根源は向井宏人と、それに敗北したアルドノイズにあるでしょうに」


 アリウスクラウンはエラメスの顔を覗き込む──エラメスは、自嘲した様に、静かに笑っていた。


「私は、アスファス様が悲しむ姿を見たくないのです」


「……」


 アリウスクラウンは、むしろバカみたいにブチギレるんじゃねと思ったが、決して口にしなかった。


 ──そして、エラメスは決意する。


「私が、アスファス様に楯突く者全てを殺し尽くしてみせる……!」


 エラメスのその小さな声で呟かれた宣言は、誰の耳にも届かなかった。

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