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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十章 神魔大戦・後編
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155話(神サイド) 不穏


「はーーーーーーあ」


 宏人が式神展開をし、座標をずらす事で無事アスファス親衛隊本拠地を脱出した後、皆緊張を吐き出すようにため息を吐いた。

 ニーラグラはぐっすりと眠っている。

 まあ、一日中アトミックの『大罪人』と戦っていたのである、起きてる方が異常だ。


「さて、ニーラグラの救出は成功したから、次の計画に移るわよ」


 瑠璃はそう言って机に瑠璃作成の計画表を広げた。

 ここは昨日カナメが『爆破』したアパートの、ギリギリ部屋として形がある一室の中。

 そこのベッドで祐雅を寝かせていたカナメがバッと振り返る。

 ちなみにニーラグラは床でそのまま寝てる、ソファーで寝るとヨダレでびちょびちょになるため。


「いやそれよか祐雅の治療でしょ。飛鳥探そうぜ」


「それも含めた計画よ。聞きなさい」


「……」


 しぶしぶ椅子に座ったカナメ、宏人、創也に、瑠璃が口を開く──


 *


「たしか……ここね」


 瑠璃はそう言うと、瓦礫の破片を指差す。

 宏人は頷くと、その瓦礫に手を置き、唱える。


「『変化』」


 しかし──何も起こらない。

 宏人はため息を挟み、今度は自分の手を『変化』、黒龍の腕に。

 人間サイズに小さくした黒龍の手は、本来の力をそのままで瓦礫を持ち上げた。

 するとそこには。


「よぉ、久しぶりだな──カミルド」


「……宏人、くん」


 カミルドは、瓦礫に埋もれていた。

 左手や右足は潰れており、顔からは生気が抜けている。

 頭は運良く瓦礫が積み重なった中の空洞の部分にあり、この様な状況になってから一日も経ってない事からギリギリ助かっている様な状態であった。


「……だからカナメに安易に『爆破』するなと言っているのに……」


 瑠璃ははぁとため息を吐き、カミルドの背後に周り、しゃがんでカミルドの体を観察する。

 触ったり、自分のと確かめてみたり、時には宏人の『変化』を利用して、できうる限りの応急処置を試みる。


「……何をやっているんですか二人とも。僕は敵ですよ」


「いーや、お前はたった今から俺らの仲間だ。別にエラメスみたいにアスファス大好きってわけじゃないだろ」


「……父さんが、アスファス様に仕えていたんだ。なら僕も……」


 カミルドはそこまで言って黙り込む。

 すると目がじわじわと水を帯びてき、やがて防波堤が決壊した。


「あーあ。宏人、泣かせちゃった」


「いやいや……まあ、身内が死んだからなぁ……」


 宏人はぼりぼりと後頭部を掻き、何とも言えなくなる。

 

「ヘタレね」


「まじか、これヘタレとか関係あんのか」


「見てなさい」


 瑠璃は泣きじゃくるカミルドの元へ行くと、しゃがみ込んで──頭を撫でた。

 

「……!」


「ほう……」


 カミルドは驚く様に目を見開く。

 そのカミルドの目の前には、瑠璃のスカートの中身が。

 まさかの色仕掛けである、宏人は興味深そうに二人を観察する。

 もちろん宏人からは見えていない。


「宏人、えっち」


「何でだよ。続けろ」


 瑠璃は淡白な表情で撫で撫でをしばらく続け、カミルドに至っては顔を真っ赤にしている。

 ちゃんと少年なのであった。

 すると瑠璃は片方の少量の髪を耳にかけ、カミルドの耳元で静かに、そして妖艶に囁く──


「私が──あなたのママになってあげる」


「ッ……!」


「ほう……」


 カミルドは、ついに──!


 *


「うん、無理だったわね」


「確かに、いけそうではあったな」


 瑠璃は顎に手を置き、先程の自分の行動を思い返す。


「……考えるたび、なぜいけなかったのか謎だわ」


「そこまでか」


「次は宏人の番ね」


「まじか。うーむ……」


「巫山戯るな!」


 すると突然、カミルドは怒りながら右手を地に叩きつけた。

 瓦礫の破片がカミルドの手に食い込み、それなりの血が流れるが、気にせず心の内を吐露する。


「なんで急に『眷属』が使えなくなった……!一体誰がこんな事を、何のために──!」


「アスファスだ」


「──!」


「アスファスが、やったんだ」


 カミルドの目が、口を開いた宏人を射抜く。

 カミルドは何かを言おうと、でも何も言えなくて。

 言葉を探しても、それに見合う言葉がなくて。


「な、なんで……?」


「それは私が。おそらく人間の弱体化が目的ね。今まで私たち人間は他人を殺し、体の中にある能力結晶を抜き取り、それを取り込む事によって殺した者の能力を奪うことが出来た。でもそれは本来神ノーズが人間に化した『ルール』にないものなの。だからアスファスは制限した──能力結晶の具現化を、ね。それによって奪った能力も具現化が解かれたの」


 瑠璃の説明を聞き、カミルドは呆然としていた。

 やがて終わると、カミルドは──微笑んだ。

 

「分かりました」


 宏人は最初、なぜ微笑んだのか分からなかったが──気付いた頃には。

 

 バンッ!という銃声。


「「ッ!?」」


 突然、カミルドの頭から血飛沫が。

 宏人はとっさに自分と瑠璃を守るため臨戦体制へ。


「誰だ!?」


 宏人は声を荒げて叫ぶが、何も反応はない。

 気配を殺すのが上手すぎる、有名な殺し屋か……?

 宏人が神経を研ぎ澄ましていると、聞こえた。

 いや、神経を研ぎ澄ましていたから聞こえたと言うべきか。


「アスファスに勝てるといいですね、宏人くん──」


 カミルドはか細くそう言って、息を引き取った。


 *


「おーい!いるかー?智也ー、クンネルー、飛鳥ー」


 カナメは宏人と瑠璃がいるマンションから程々に離れた所にある合流地点で、大声で叫んでいた。

 正確な合流時間は決めていないため、できうる限りここにいる様伝えていたのだが、いないためだ。

 ちなみに創也は拠点でお留守番だ。

 カナメはしばらくそうしていると、付近より人の気配が。


「おー、昨日ぶり。……なんか違くね」


 そう、智也がおらず、なぜか見知らぬ少女がいるのである。


「あ、あの……なんか、すみません」


「はぁ……クンネル、誰だこいつ」


 カナメは訝しそうにその少女を眺めると、クンネルが説明しようとして──ハッとなる。


「そ、そうだそんな事より──昨日智也たちがエラメスの所に行ったのだが、未だ帰ってきていない……!」


 カナメの髪を、不穏な風が揺らす。


 *


 カナメがアパートに戻った頃には、既に宏人、瑠璃がいた。

 だがここにカミルドはいない。

 カナメは察し、最初から本題に突っ込む。


「まだいる前提だが、アスファスとエラメスの居場所が分かった」


「ッ……!」


「……すごいわね。」


 宏人は息を飲み、瑠璃は嬉しそうに頷く。

 今回の討伐対象であるのはアスファスだ。

 アスファスさえ倒してしまえば、今後宏人たちが何者かに狙われる事はなくなる……かもしれない。

 少なくとも、目立って敵対している相手がいなくなるのだ。

 だが、そのアスファスと戦うという事は……。


「問題は、エラメスだ……」


 宏人がポツリと呟く。

 それは皆理解していたが、改めて戦うとなると血の気が引く。

 そんな空気の悪さを払う様に、瑠璃がパンと手を叩く。

 話が変な方向にいっている時、瑠璃はこれをよくする。


「それより、まず状況を整理したいわ。クンネル、智也はどこで──その人は誰?」


「彼女は香村那種、智也は……アスファスとエラメスの所へ」


「そう、取り敢えず何が合ったのか聞きたいわ」


 ──そうして、クンネルと那種は宏人、カナメ、瑠璃に合った事を全て話した。

 クンネルは今までどうしていたのか丁寧な、那種は自分に、自分たち『呪術者』に起きた事を一言一句、事実を漏らさぬ様に。


 そして全てを聞き終えた瑠璃は──立ち上がり、皆の前に立った。


 寝ているニーラグラと祐雅を除く、宏人、カナメ、創也、クンネル、那種、飛鳥の視線が瑠璃に集まる。


「今から、アスファスとエラメス、その部下であるアリウスクラウンとのマッチング相手を決めましょう」


 もう既に目前までアスファスとの決戦が近づいているのだと、宏人はビリビリと肌で感じた。

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