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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十章 神魔大戦・後編
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154話(神サイド) 救出


 ──アスファスとソウマトウの戦いから一夜明け──朝。


「やばいよぉ……!」


 ──になっても尚、ニーラグラとアトミックの戦いは終わっていなかった!

 ニーラグラは泣きじゃくりながら『断罪人』を吹っ飛ばすが……やはり何事も無かったかの様に起き上がり、襲いかかってくる。


 アトミックの『能力』、『視線界』は、自分とその他を隔絶する超級異能。

 それは式神顕現『大罪人』の無限復活能力と非常に相性が良く、絶対の安全圏から敵を攻撃出来るという神業。

 だがしかし、それでは敵は逃げてしまう。

 そこで式神展開だ、式神からは、そうそう逃げ切ることは出来ないのだから。


 あまりの理不尽さから、ニーラグラの目から涙が滝のように流れる。


「もうまぢで無理ィィィィィィ!アトミックくんもそろそろ限界でしょ?ほんとにもうやめようよ……!」


「ふむ、私は三日三晩飲まず食わずでも通常時の動きを可能な限り引き出す訓練を積んでいるからな。たかが一日式神の展開を維持しているのは然程苦ではない」


 そう、ニーラグラが忘れていた……というより、無理やり記憶から消していただけで、アトミックも式神展開は出来る。

 その中も式神展開『処刑台』。

 ほどほどに恐ろしい名の『世界』だが、ただ顕現の『大罪人』の効果を存分に発揮できるだけである。

 謂わば式神を展開してこない者、また式神を会得していない者対策である。

 

「『ホリズンブレイク』ぅぅ!」


 ニーラグラのカミノミワザが飛びまくるたび、涙と鼻水がぶちまけられる。


「ふむ……貴様、本当に神か?」


「神だもぉぉぉぉぉぉぉぉん!」


 ニーラグラがアトミックに言い返していると、その隙を狙う様に『大罪人』が──!


「……やばぁっ」


 その時──空が割れた。


「何!?」


 アトミックが驚きながら真上を見る。

 すると空から、数人の男女が降ってきた。


「──『爆破』ァ!」


「──『エンブレム』」


「私は──『読心』」


 刹那、二体いる『大罪人』それぞれが、『爆破』と『エンブレム』によって焼き尽くされた。

 ニーラグラの口があんぐりと開き──またもやじわじわと涙が出てき、鼻水を垂れ流す。


「う、うそ……!カナメ、宏人くん、る、瑠璃ちゃんもおおおおおおお!なんでえええええええうぇーーーん!」


 ニーラグラはそのまま三人に抱きつく。

 これが本来の姿のニーラグラならともかく、凪でやられると無性に苛立つのが不思議だ。

 めちゃくちゃ邪魔なニーラグラの顔を手でどけながら、瑠璃が叫ぶ。


「創也!アトミックは──あそこ!」


「はーい」


「ッ!?」


 瑠璃が指差した所でいきなり創也が現れた、『勇者剣』を横一線、アトミックのネクタイがひらひらと落ちた。

 アトミックは背後に飛ぶが、まるでこちらが見えているように、瑠璃が的確に指を指してき、創也が攻撃してくる。


「ふむ……なるほどな!『読心』で私の心を読むと同時に居場所を把握し、それをどんな存在にでも攻撃できる『勇者剣』の所持者、太刀花創也に私を攻撃させるというものか!」


「丁寧な説明ありがたいわね、そのままくたばりなさい」


「なあなあ宏人、さっき瑠璃が言ったこと覚えてるか?」


「ん?さっき?」


「そうそう、気付かなかった様だから教えてやるよ。『私は──独身!ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!」


「ブッ」


 カナメが下品に笑う隣りで、宏人が吹き出す。


「……あなたたち、後で覚えておきなさい」


「瑠璃ぢゃぁぁぁぁぁん!こんなところにいたら危ないよ、早く帰ろうよぉぉぉ!」


「まったく、この神に至っては何も話を聞いていない……!」


「瑠璃ー、どこ斬ればいいのー?」


「そこー!」


 まさにカオス。

『大罪人』は宏人とカナメが対処し、瑠璃と創也のコンビネーションでアトミックを追い詰めていき──やがて。


「──チェックメイト」


 瑠璃のその一言と共に、アトミックの首に剣が添えられた。

『視線界』が解け、その姿が露わになる。

 剣が多少首に食い込んだため、首から血が垂れ、白いシャツに染みていく。

 瑠璃は満足そうに得意げな顔をしながら、創也に手話で静止をかける。


「二人に質問。アトミック、どうする?」


「「ぶっ殺──」」


「了解。いいわ創也、やっちゃって」


「──待て!」


 そこで待ったをかける者が、もちろんアトミックだ。

 アトミックは珍しく焦りながら──土下座をした。


「おぉ……」


 するとこちらも珍しく瑠璃が焦っていた、レアである。


「本当にすまなかった!もうこれからは危害を加えるつもりはない、なんなら仲間となる。そのため命だけはなんとかしてもらいたいッ……!」


「ねー瑠璃ー、まだ殺さないのー?」


「創也、空気を読みなさい」


「はぁ」


「そのため!命だけはなんとかしてらいたいッ……!」


 途中気の抜けた会話が挟まれたためか、アトミックは語句を強めながら復唱した。

 なんだか哀れである。

 

「これが、能力者殺しの末路か……」


 宏人の隣にいるカナメは、何だか幻滅した様である。

 確かに、能力自体は非常に強力だ。

 だが創也と違って、敵に回すと状況によっては対処不可、全滅の可能が含まれている。

 創也みたいにどうにかすれば倒せる次元ではないのだ、その存在を知覚でき、攻撃手段が合ってやっと倒せる。


「瑠璃。仲間にするメリットは計り知れないけど、敵に回るデメリットの方がヤバい。最悪全滅エンドだってありうる──殺そう」


「そうね──創也」


「ま、待て!私にはまだやるべき事が──!」


「アイデンティティのふむが抜けてるよー、おっさん」


 創也の『勇者剣』が、アトミックの首を切断した──!


 *


 ──この『世界』の構築者が死んだためか、ガラスが地に落ちて割れる様に、『世界』が砕けた。

 すると──そこはアスファス親衛隊本拠地の地下、即ち地下牢であった。


「ここは……!」


 数日前、海野維祐雅が幽閉された場所──!


「祐雅!」


 カナメが駆けつけた先には、苦しそうに浅い呼吸を繰り返す、祐雅が。

 カナメは祐雅を肩に抱えて持つ。


「よし、離脱するわよ。成り行きで入っちゃったけどここ敵陣の本拠地なんだから」


 瑠璃がそう指示した後、皆で出口に向かおうとして──止まった。


「……ていうかここからどうやって帰ろんだよ。強行突破でここまで来たのはいいが、外の警備はガチガチだろ」


「ほんとそれね。宏人、隠し通路とかない?」


「いやあるけど。俺ですら知ってるって事は他にも知ってる奴いるだろ」


「……思ったよりまずい状況ね」


 瑠璃が顎に手を置きむむむと唸る。

 すると、カンカンカンと、こちらに何者かが来る音が──!


「チッ!あまり使いたくなかったが式神使って逃げるか」


「カナメはやめろ、火力担当だろ。俺がやる」


 カナメを静止し、宏人はパンと両手を叩く。

 一度完全に『能力』枯渇した宏人だが、アルドノイズの意識を覚醒させる事により、宏人はアルドノイズの『能力』残量を獲得する事に成功した。

『神化』していないとはいえ、神は神。

 未完成の状態でも、万全の状態の宏人より『能力』がふんだんにある。

 

 そして──『世界』が構築されていく。


「式神展開──『変化自在』」


 宏人が唱え終わると、どんどんとこの世界と『世界』が隔絶されていき──その直前で。

 足音の正体が、到着した。

 その人物は──宏人は一目見て、ごくりと唾を飲み込んだ。


「ッ」


「宏人くん、『眼』を使わないように気を付けてね。その瞬間──コロスから」


 最初は抑揚があり──最後は底冷えする様な声音。

 ぶりっ子の少女の様であり、その実は弊害となるモノを全て破壊する悪魔。


 そう──


「だから、今も生きてるのが不思議なくらいって言ったんだよ──ダクネス」


 隔絶される世界の中、その外側で、少女は微笑む。

 

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