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超能力という名の呪い  作者: ノーム
九章 神魔大戦・中編
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152話(神サイド) 神魔幻戦⑧


「──えっ」


 突然、ミリィの真上よりエラメスがこの『世界』に侵入してきた。

 ミリィは瞬時に狙いを変更し、エラメスに向かって『酪底門』を一つぶん投げる!


「あはぁ!」


「ふん、また過去の人間か──あの世で大人しくは、出来んのかァァァァァァァ!」


 エラメスはいきなり『凪』を発動!

『酪底門』は『凪』を吸収しようとするが、全体攻撃の筈の『凪』がなんと『酪底門』に一旦集中。

 一つしかないからか、容量オーバーなのか、『酪底門』は粉々に粉砕した。

 ミリィの方頬が若干引く。


「ハッ……来ると信じていたぞ、エラメス」


「はい、アスファス様。遅れてしまい申し訳──は?」


 エラメスはアスファスを見て固まる。

 左手が、無いのだ。

 いや、アスファスは神だ、治そうと思えば今すぐ治せる。

 だが今は式神展開に加え、『凪』、『マーレ・サイズミック』という大技を連発しているのだ、これ以上余計な『能力』の消費は避けたいのだろう。

 エラメスは、それを理解している。


 理解した上で──怒り狂っている。


「貴様ら……アスファス様に、死んで詫びろォォォォォォォォ!」


 エラメスは一瞬でミリィへ間合いを詰める。


「ッ!」


 ミリィは笑いながらも、焦りながら後方へジャンプ。

 エラメスはその隙を逃さず──放つ。


「──『マーレ・サイズミック』!」


「「「ッ!?」」」


 刹那──ミリィ、ソウマトウ、フィヨルドの足元がまるで生きた魚になった様に、水柱を作り呑み込んでくる。

 一度経験した技、ミリィとソウマトウはそれなりの対処が出来るが──!


「フィル!」


「ソウマトウ様、私に構わず──!」


 フィヨルドは言葉を最後まで紡ぐ前に水柱に呑み込まれていった。

 

「フィルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」


 ソウマトウの絶叫がこの『世界』に響く。

 アスファスがニヤリと口角を上げる。


「まずは、一人」


「絶対に、許さない!」


 常に声が小さいソウマトウからは考えられない程の大音量。

 そんなソウマトウに、更なる絶望を与える大技を、エラメスは持っている。

 

「ふん──顕現せよ、『白龍』」


「ッ!」


 上空で争う『白龍』と『暗龍』の間に、更にもう一体の『白龍』が入り込む。

 神の龍の力は常に互角、それが意味する事は──!

 とにかく、『暗龍』が敗れるのは時間の問題。


「ど、どどどどどうしよう……」


 ソウマトウは両手を震わせながら両膝を地に着く。

 そんなチャンスを、エラメスが見逃さないはずがなく──エラメスがソウマトウにありったけの『カオスリヴィエール』!

 ソウマトウは迫り来る死を分かっても尚動かず──それを、ミリィが残り一つの『酪底門』で止めた。


「まだミリィいるよぉ!だからあのおじさんも大丈夫ぅ!」


「ッ!ミリィ!無事だったの?」


「そうだよぉ!ミリィは──無敵ぃ!」


 ミリィはそう言い放ち、『カオスリヴィエール』を止め切った。

 そう、ミリィはフィヨルドの『能力』で作られたもの、それはフィヨルドが死すれば消滅する。

 これが意味するもの、それはソウマトウにとっては何より──


「……ありがとう、ミリィ。めっちゃやる気出てきたよ」


「良かったぁ、反撃開始ぃ!」


 ミリィは『移動』と残り一つの『酪底門』で突撃、ソウマトウは己の背後より『闇』を顕現させながら『ファントムファンタジー』を両手より、計二発繰り出す!

 だが未だアスファスは顔に余裕の笑みを貼り付けており──


「今度こそ場を荒らせ、水妖」


 ソウマトウが今放った全ての攻撃を、無数に湧き出る水妖が身代わりとして受け止めた。

 だがかなりの威力のためか、しばらく水妖が出てくる気配がしない。


「……行って!ミリィ!」


「あはぁ!」


 ミリィはそのままエラメスへ殴る様に『酪底門』を突き出す。

 

「ふん、勝ち筋が明らかな奴の対処ほど楽なものはない」


 エラメスは最低限の動作でそれを避け、ミリィの手をがっちり掴み──


「──あ」


 ──ゼロ距離『流水群』!

 ミリィは己の前に『移動』を発動、その『移動』空間によって『流水群』を回避。

 『酪底門』も使用したが、やはり二つで一つ、耐えきれずに霧散する。

 目の前にエラメスが、『酪底門』もない……詰み──そこで、思い付いた。


 ──確実にエラメスを倒す方法を。


 ミリィの『能力』の、バグを。


「あはぁ!」


 ミリィは戦いが好きだ。

 己よりも強い者と戦いたいのではない、唯一無二の、誰にも勝てない絶対的強者と戦いたいのだ。

 惜しむべくはそれだ、エラメスはどこまで行っても2位。

 このバグは、ミリィの命、いや、存在を代償とする。


 ──でも。


「ぶっちゃけぇ……強ければ何でもいいやぁ!」


 ミリィはそのまま『移動』を閉ざさず己も中に入ろうとする。

 だがやはりエラメスの拘束を解く事は出来ない。

 

「そうじゃなくっちゃぁ!」


 ミリィはかつて無い程集中し──再度唱える!


「式神顕現『酪底門』!」


「ッ!?」


 エラメスの背後に『酪底門』を顕現させ、押し付ける!

 

 やはり強者、そう簡単に吸い込まれてくれない。

 だが、ミリィの狙いはそれではない。

 もちろんそのまま吸い込まれていってくれた方が楽なのだが……ちゃんとした作戦がある。

 

 それは、エラメスを『移動』空間に自らもろとも引き込む事。


 そしてその中でミリィは自害し、『移動』空間自体を消滅させる!


「──チィッ!」


 早くもエラメスはミリィの狙いが読めたのだろう、だがしかしミリィは既に逃げ場は封じている。

 今度はミリィががっちりとエラメスの手を掴む!


「あはぁ!離さないぃ!」


「このクソガキがァァァァァァァァァァ!」


 ミリィとエラメスの戦いの一方では──!


「『カオスリヴィエール』!」


「『ファントムファンタジー』!」


 アスファスとソウマトウのカミノミワザがぶつかり、海が震える。

 大量の水妖が海より産まれ、ソウマトウに襲い掛かる。


「くぅッ……!」


「ハッ!そんなものか、ソウマトウ!」


 遂に、ソウマトウは無限に湧き出る水妖に体の自由を奪われてしまう──が。


「『ファントムファンタジー』!」


 ソウマトウがそう呟けば最後、周りのものが一切消え去った。

 ソウマトウは息を切らしながらも、よろよろと立ち上がる。

 それをアスファスはつまらなそうに鼻で笑い、命じた。


「便利だな、そのワザは──水妖、津波だ」


「〜〜〜〜!」


 雑音の様な奇声を発しながら、一部の水妖が海に戻っていき──数瞬後、巨大な津波と化してソウマトウに一直線。

 もちろんアスファスはそれだけでは済まさない、余った水妖と共に、アスファス自身も『凪』を用意し始める。

 完全に、今、この瞬間、アスファスはソウマトウを殺し尽くす──!


 ──……んな事、されてたまるか。

 

「『ダーク・ナイトメア』!」


「ッ。何だそれは……!クソ、これだから万年引き篭もりは情報が無くて面倒くさい」


 苦虫を潰した様な顔をするアスファスの目の前には──黒いオーラを纏う、異形な怪物が。


 これは、ソウマトウの奥義。

 理性を失くす代わりに、己の力の全てを引き出す最強の形態!


「──────────!」


 水妖とはまた違う、悲痛な叫びの様な声を上げながら、アスファスに向かって──!

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