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超能力という名の呪い  作者: ノーム
九章 神魔大戦・中編
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151話(神サイド) 神魔幻戦⑦


『ネクロマンサー』、それは、既に死した者を再度現世に降臨させる『呪い』。

 だがしかし、降臨させると言っても死者に脳はない、そのため記憶は更新されないし、以前の様にまともに会話する事が出来ず、不安定な昔の記憶の欠片から滲み出た言語を垂れ流す化け物と化す。

 ……はずなのだが。


「あははぁ!」


 ミリィ・澤田・マタタークは、そんな楔をいとも容易く打ち破っていた!


「……まあ、私に従うという点は生きていて良かったです。でなければ彼女はアスファスに味方していたでしょう」


「……それは、考えたくないね……」


 フィヨルドとソウマトウが苦笑いしている間に、アスファスとミリィがぶつかる。

 ミリィの前に水妖が立ちはだかるが、ミリィは二つある式神顕現『酪底門』の内一つをオート操作に変更、それで以って悉く水妖を消し去っていく。

 そして残った一つの『酪底門』でアスファスと対峙する。


「一つで足りると思っているのか?人間」


「私はミリィ!」


 アスファスは迫り来るミリィに『流水群』で対処する。

 先程は簡単に防がれたが、それは『酪底門』が二つあった時の話で、一つではそれなりに時間が掛かる。

 アスファスはニヤリと笑い、『凪』の準備をする。

 

「ッ!」


 フィヨルドはいち早く『凪』を察知し──懐より全ての死体をばら撒く!


「死者ども!あの水の女どもを殺しなさい!」


「──!!」


 もはや声ではない声で叫びながら、死者たちが甦り、水妖に突撃した。

 今度はミリィがニヤリと笑い、そのままアスファスに突撃。

 アスファスは舌打ちをしながら完成途中の『凪』を放つ。

 だがやはり未完成、『凪』足り得ずミリィの肌に赤色が走るのみ──ミリィはそれだけでは、止まらない!


「あははぁ!アスファスぅ!」


「チィィィ!ミリィ!」


 アスファスは一瞬で虚空より神剣『白龍』を顕現、それで以って斬りかかろうとするが──その直前でミリィの『酪底門』と衝突、お互い弾かれた。

 

「いっ……!」


 さすがのミリィもうめき声をあげながら浅海を転がる。

 その時、手にある『酪底門』から妙な気配を感じ、確認してみると──


「あはぁ……!」


 ミリィの顔に卑しい笑みが張り付く。

 アスファスも己の左腕に違和感を持ち、見てみると……無い。

 左腕が、無かった。

 アスファスは呆然としながらミリィの『酪底門』を見る、ちょうど、アスファスの左腕が呑み込まれていた。

 

「……」


 開いた方が塞がらないとはこの事か、アスファスは暫く固まり──やがて、ふらふらと立ち上がった。


「人間如きが……」


「あはぁ!続きだねぇ……!」


「人間如きが、私の身体を穢すなァァァァァ!」


「だから、私はミリィ!」


 ミリィは叫ぶと共にアスファスに駆け出す。

 アスファスは再度神剣『白龍』を顕現、そして召喚する──!


「降臨せよ!『白龍』!」


「……来て、『暗龍』」


 アスファスと全く同じタイミングでソウマトウも『龍』を顕現。


「ギシャアアアアアアアアアアアアアアアア!」


「グキャァァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 両者の龍の方向が皆の鼓膜を震わせる。

 そんな中、ミリィは水妖は全てフィヨルドの死者たちに任せる事にし、両手に『酪底門』を握りながら突撃。

 まず狙うべきは『白龍』──と狙いを定めた瞬間、首元に殺気を察知し『酪底門』で防御、すると『流水群』が呑み込まれた。

 

「あはぁ。そっか、アスファスは接近戦タイプだったんだよねぇ……!」


「貴様だけは何としてでも殺す」


「もう死んでるよぉ!」


「これ以上戯言を、ほざくな!」


 アスファスとミリィの背後で、白龍と暗龍が激突する。

 衝撃で両者が吹き飛ばされないよう構える中、アスファスに『ファントムファンタジー』が降り注ぐ!


「……ッ!」


 なんとか避け切ったアスファスの周りに、今度は大量の──


「『闇』」


「はっ、私の真似事か」


 アスファスは冷静に、以前と同じように水妖を集結させ難なく回避。

 だが──その行動は、フィヨルドたちにとっては朗報で──!


「読んでいた!死者たちよ、畳み掛けなさい!」


 水妖に対処していた死者が一斉にアスファスへ。

 そう、フィヨルドは確信した──アスファスは全ての手札を出し切っている!

 

「……ッ」


 フィヨルドの読み通りアスファスは手札を使い果たしており、歯噛みする。

 再度『マーレ・サイズミック』をしてもいいが、いかんせんあれは『能力』消費が半端ではない。

 ……だが、そんな事は言ってられないのもまた事実。


「『マーレ・サイズ──」


「あはははぁ!『移動』ぅ!」


「……式神展開『幻想幻魔』」


「ッ!?」


 ──刹那、三人の大技が一気に解放される!


 だが──ソウマトウの必死の式神展開によってアスファスの『龍宮城』の必殺技が中和され──残るは、突如アスファスの目の前に現れたミリィのみ。


「あはぁ♡」


「──」


 死。

 

 アスファスが最も嫌うソレが、たった今最も身近にあるのが感じられた。

 

 ──私は、何を間違えた?

 『白龍』を顕現させず、己の得意である剣技に集中した方が良かったか?

 それとも序盤から『神化』はせず、敢えてソウマトウに式神展開を譲らせて残機を確保した方が良かったか?

 分からん……分からん分からん分からん分からん!


 だがこれだけは分かる……私は。


 ──死にたく、ない!


「私を助けろ……エラメスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」


「──お呼びですか!?アスファス様ァァァァァァァ!」


 たった今この瞬間──エラメス、現着。


 *


「──那種!?」


 突然倒れた那種に智也が慌てると、傀羅はため息を吐いた。


「那種は『サタノファニ』を使った後は大体こうなる、安心してくれ」


「そ、そうか……」


 智也はゴホンッと咳払いすると、真面目な顔つきになる。

 そして、ついにクンネルも気になっていた事を聞く。


「……さっきエラメスから逃げてきたって言ってたよな?んじゃあ、今、アスファスは何をしている……?」


 傀羅は那種の頭をそっと持ち上げ、自分の上着の上に乗せた。

 那種の苦しむ様な顔が多少和らぎ、傀羅も少し微笑み……一瞬で真剣な表情となり、口を開く。


「現在アスファスはソウマトウとフィヨルドと交戦中だ」


「何だと……!」


「ああ、今にもエラメスがアスファスと合流するかもしれない、手伝ってくれるな?」


 傀羅が差し出してきた手を、智也は瞬時に取って頷く。


「当たり前だ。あの人は恩人だからな──クンネル」


「ッ!な、何だ?」


 クンネルは自分!?と驚きながらも律儀に向き直る。

 

「取り敢えず傀羅を回復させたい、飛鳥を起こしてくれ」


「え、ああ。何というか、意外だな」


「……意外?」


「ああ、お前なら蹴飛ばしてでも起こすかと思っていてな」


 クンネルは少し微笑みながら、飛鳥のおでこをぺちぺちと叩き始める。

 

「……」


 智也はクンネルに言われた言葉を少し考える。

 以前までの智也なら……確かに、蹴飛ばしていたなと。


「ハッ……どっかのバカが止めたからか?ちょろいな、俺」


 智也は一人そう呟き……やがて飛鳥が起きて、傀羅を『再生』の異能で治癒。

 そして不安ながらもクンネルに飛鳥の子守りとカミルドの捜索を任せ──


 いざ、決戦へ。


「……エラメス、か。あれ?これ俺死んだ……?」


 ……内心ビクビクしながら。

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