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超能力という名の呪い  作者: ノーム
九章 神魔大戦・中編
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148話(神サイド) 神魔幻戦④

 

「──さて。ソウマトウ様、これからどうしましょうか?」


 フィヨルドはそう言いながら、皿に盛られた肉を丁寧にナイフで切り、一口サイズにした後口に運んだ。

 口の中で蕩け、思考が味覚に支配される。

 そんなフィヨルドを一瞥した後、ソウマトウも同じ様にナイフで以って肉を刻む。

 そのまま口に運び──


「っ!」


 ソウマトウが固まった。


「なに!?」


 フィヨルドはまさか毒かとバタンッ!と席を立ったが……ソウマトウは口にその小さな手を持っていき、


「……すごく美味しい」


 ……フィヨルドは静かに座り直した。

 ソウマトウはあまりの美味に気付いていなかったが。

 フィヨルドは疲れた様にため息を吐き、ソウマトウはあまりの美味しさにほっとため息を吐いた。

 ──そんな二人を笑うのが、一人。


「……そんなに可笑しい?璃子」


 ソウマトウが首を傾げならその人物──海木璃子に問う。

 璃子はあははと笑いながら答える。


「いやソウマトウちゃんかわいーって思って」


「ソウマトウ様だ、様」


「フィヨルドじいさんは色々うるさい」


「……」


 璃子は豪快に一塊の肉を一気に口に含む。

 

「……行儀悪いぞ」


「パパか」


 ソウマトウは二人のやり取りを微笑ましそうに見て、向かいの席に座る──アスファスに問う。


「……どうして、私たちのこの幸せな日常を奪おうとするの?」


「どうしても何も、何から何まで自業自得だろう。私とアルドノイズの戦争中に邪魔をしないと約束するなら見逃すと言っているんだぞ」


 アスファスはため息を吐き、肉を口に持っていき──やめ、鼻で匂いを嗅いだ後皿に戻した。


「……毒は入っていないぞ」


「分かっている、ただ私の口に見合うモノではないだけだ」


 アスファスは口を布巾で拭き、璃子を見る。


「貴様はいいのか?海木璃子。七音字幸太郎は死に、七録カナメはアルドノイズ陣営にいる。そんな中、貴様はこの敗北が確定している組織に首を突っ込んでいていいのか?」


「……幸太郎が死んだのは悲しい。けど、別に特別な関係とかじゃなくてただの友達だったし。また今度花を添えに行こうとは思ってるけど」


「なら尚更ではないか。私は今から貴様らを殺す。このままでは花を添える事はおろか、肝心の命がないぞ」


「じゃあ迎え撃つしかないね」


「……全く。どうしてこんなにもこの世は愚者が多いのか」


 アスファスはため息を吐き、片手を上げた。

 それはアスファスが護衛に命令する際の合図。

 こつ、こつという足音が響く。

 アスファスの護衛と言ったら、あの男以外考えられない。


「……ソウマトウ様、本当にこれからどう致しましょうか」


「……計画通りにいく。変更はないよ。みんなにエラメスは任せて、私とフィルでアスファス兄さんを倒そう」


「ソウマトウ様……わたくしフィヨルド、死んでもついて行きます」


「もう死んでるでしょ?」


「全くですな!」


 フィヨルドはガハハと太い声で笑い、ソウマトウは小さく笑う。

 それをアスファスは不快そうに細目で見ていた。


「……茶番は終わりか?」


「まあ待ってやりなよ、この二人、若い頃からの付き合いなんだって。まあソウマトウちゃんはあの時からずっと変わってないけど」


 アスファスが半眼を作っていると、背後にエラメスが立った。

 アスファスはエラメスを確認すると立ち上がり、今度こそ、本当に宣言する。


「茶番は終わりだ──行くぞ、エラメス」


「仰せのままに、アスファス様」


「フィル、みんなを呼んで」


「もちろんですとも──来い、『呪術者』」


 *


 『超能力』には、頂点である『超能力者』が存在する。

 『超能力者』は『超能力』よりも強大な『能力』と身体能力を大幅に向上させる『身体能力上昇・特大』を得る事か出来る。


 そして。


 話は変わり、異能には『超能力』の他に、『呪い』がある。

 『呪い』は多種多様な異能が多くあるが、不完全な状態で一部に配布されたためか、人類の大半に酷く嫌われ──遂には『呪い』保有者が全て死刑されるなんて事が起こってしまったほどだ。

 だが、やはり世界は広く、全員が死んだ訳ではない。

 さて、ここからが本題である、『呪い』は『超能力』と同じ格として人類に配布される異能だったのだ。

 『超能力』に出来る事は、大体出来るわけで。


 『超能力』に『超能力者』がいるのならば、『呪い』にも上位互換が存在するのはとても当たり前なわけで。


 それを──『呪術者』と言う。




「──なるほどな……」


 エラメスは目の前の光景を見て、ぽつりと呟いた。


「『超能力者』は全てで16人。そのためおそらく『呪い』も16人いたはず……否、16人いる様にする『設定』だったのだろう。だが去年、『呪い』保有者が処刑される法が下された。そう考えると……これほどの『呪術者』を収集したのは流石と言える」


 エラメスはクククと笑い、周りを見渡す。

 11人の『呪術者』たちを。


「……」


 彼らは無言でエラメスを見据える。

 その目は殺気立っており……エラメスは久々に自分が高揚しているのに気付いた。

 アスファスは初めから『完全顕現』するつもりはない、そのためエラメスは不完全体のアスファスより一段階強い状態で彼らからの猛攻を耐えなければならない。

 それに、エラメスは。


「……上等だ」


「ッ!?」


『呪術者』たちの背筋が凍る。

 いくら『者』レベルでも、エラメスの──神の力は別次元。

 エラメスはそんな彼らにクイクイと指を動かし。


「かかってこい──小僧ども」


『呪術者』たちは、一斉に飛びかかった。


 *


 アスファスとソウマトウ、フィヨルドは、エラメスと『呪術者』たちと多少離れた場所にて対峙していた。

 

「ふん。よくここまでの人数が集まったな。『呪術者』なんて化石共、既に滅んでいると認識していたぞ」


「それはソウマトウ様の人柄のお陰ですな。アスファス、あなたみたいな自己中心的な性格なら成し遂げられなかったでしょう」


 フィヨルドはアスファスを煽るように喋る。

 だがアスファスはフィヨルドに視線を寄越さず、ソウマトウを冷めた目で見た。


「私との戦いに、部外者のこの男も入るのか?死ぬぞ。いいのか、昔馴染みなのだろう」


「……私は止めた。でも、フィルが死ぬ時は一緒だって」


「……死ぬ事は視野に入っているのか。尚更意味が分からないな……だが、もういい。理由はもう聞かん。ただ、殺す」


 アスファスはそう言い──両手を合わせた。

 ソウマトウも続いて行い、両者の手からパチンと音が響く。


「式神展開『龍宮城』」


「式神展開『幻想幻魔』」


 両者の背後の空間が割れ、裂け目から『式神』が『世界』を構築していく。

 アスファスからは地には透き通る様な青い海、そしてそこ上には眩い黄金の神殿が鎮座する『世界』が。

 ソウマトウからは紫色の霧が支配する、魔物が蠢く森林が。

 海を支配するアスファスと、自然を支配するソウマトウ。

 両者の力は互角──なはずがなく。


「──神は、年月と共に無限に成長していく事を忘れたのか?」


 アスファスの『龍宮城』が、ソウマトウの『幻想幻魔』を押し潰す。

 『式神展開』とは即ち『世界』の構築、それには相当の『能力』を消費する。

 一度展開するだけで枯渇直前になる者もいるくらいだ、だからこそ、押し合いで負けるなど、勝負は既に決していると言っても過言ではないわけで──!


「そうならんために、私がいるッ!」


 アスファスとソウマトウの『世界』がせめぎ合う中、遅れてフィヨルドも両手を合わせる。

 ──フィヨルドが汗と血を垂らしながら、必死に会得した、未完成の式神──!


「式神展開ッ!『幻想幻魔』!」


 神は、人間と『契約』を結ぶ事で、己の式神の異能を与える事が出来た。

 『幻想幻魔』が、『龍宮城』を押し返す。


 ──異なる『世界』が激突する不協和音が、皆の耳に爆ぜた。

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