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超能力という名の呪い  作者: ノーム
九章 神魔大戦・中編
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147話(神サイド) 神魔幻戦③


「イヤァァァァァァァァ────────ッ!」


 閑散としたこの街に、甲高く喧しい声が響き渡った。


「……なんだ?」


 宏人の隣で、先程合流したカナメが呟く。

 まあぶっちゃけ二人ともその声の主を想像するのは容易かったが。

 ゆっくりと歩きながら声がした方向に向かうと──やはりというか何と言うか、飛鳥がいた。


「……」


「よぉ飛鳥。今まで何してたの?」


「心配しろよおおおおおおおお!私、今、敵に人に捕まってるんですけどおおおおお!」


 飛鳥はそう言い己を捕らえている者の手をペシペシと叩く──創也だった。

 

「……瑠璃もすげぇな。お前を引き込むか」


「あー宏人とカナメ。さっきぶりー」


「さっきぶりー」


「無視か!?あんたたち無視なの!?……あれ?この人敵じゃなかったっけ。なんか、ははは、これでダクネスから教わった式神を二重に展開させうんたらかんたら言って襲いかかって来なかったっけ?」


「それはそうと……飛鳥。頼む、俺とカナメの怪我に『再生』を使ってほしい」


「いやよ。何で私があんたたちのために大事な能力消費して『再生』使わなきゃならないのよ」


 宏人が言い終わると共に飛鳥はそうぶちかました。

 

「……なあ創也。こいつアスファスの本拠地にぶち込んできてくれないか」


「分かったわよ治せばいいんでしょしょうがないわね」


「分かったよー。どうする?爆薬服の下に忍ばせて暗殺作戦を実行するっていうのは」


「ごめんなさい!本当にごめんなさい!治します!」


 ──


「ぜェー、ぜェー、ぜェー!」


 その後、宏人とカナメは飛鳥に『再生』してもらい、身体は万全の状態となった。

 なんでも、カナメは結構重傷だったらしく、飛鳥は大分『能力』を持っていかれたのか肩で息をしていた。

 うるさい。


「じゃあ、あと問題は『能力』残量だけだな……」


 宏人はアルドノイズのお陰でまだまだ余裕があるどころか本来の残量を大幅に超えているが、カナメは違う。

 カナメは既に『者』級とアスファスのお気に入りと戦ってきたのだ、どうやらあと一度『式神』を展開すると何も出来ない程しかないらしい。

 まあ、式神を展開出来るくらいだから普通に戦う分に影響はないと思われるが。


「──よかった、飛鳥見つかったのね。じゃあ行きましょうか」


 背後からそんな声が──瑠璃。

 瑠璃は続けてこう言った。

 

「神ノーズのところに」


 *


「──で?神ノーズはどこにいるの、宏人」


 12月下旬、補装されていない揺れまくる道を車で駆けていると、程よく涼しい風が窓から流れ込んでくる。

 この黒色のキャンピングカーは、先程皆で飛鳥を探している際に瑠璃が発見したものらしい。

 現在、運転席に瑠璃、助手席に宏人、後ろの席にカナメと創也が座っている。

 それはそうと、この世紀末的な世界にはもう月日と季節は似合わない。

 今の時期で、やっと昔で言うところの秋の終わり頃だろうか。

 まあこの時期だとあまり違和感はないが、これが七月や八月といった夏に本気を出してくる。

 色々バグってるため規則性はないが、とにかく寒いのだ。

 宏人は呑気に微睡に身を任せていると、隣の瑠璃がピシャリと言った。


「これからこの世界で一番偉い人に会いに行くのよ。気を引き締めなさい」


「どうしてだろうな……その言い方されると全く緊張しないのは」


 今回神ノーズに会いに行く事になったのは4人。

 瑠璃、宏人、カナメ、創也だ。

 残りの智也、クンネル、飛鳥はそれぞれ探し物をするため現地に残った。


「それで、神ノーズはどこにいるの」


「保育所」


「分かったわ、場所はどこ?」


「えーっと、確か」


「ちょいちょいちょいちょい!なんで瑠璃はそのまま続けられるんだよ」


「?どういう事?」


「いや、保育所」


「保育所って、そんな変?」


「……」


 カナメと創也の一悶着(?)あった後、宏人は具体的な道を言う。

 神地町の道を何の変哲もないほどの普通の道のりのそれは、本当にただの保育所を目指しているようで──


「──着いたわ」


 神地町の端っこにある降神地という山の付近に、それはあった。

 相変わらずこの町は神って単語が好きだなと思いながら宏人は車を降りると──やはり何の変哲もない、保育所だった。


「……神ノーズ、ロリコンか?」


「宏人、創也、カナメの事は無視していいわよ。所詮戦闘タイプよ、頭はダメなの」


「ひどくない!?俺的には今の結構おもしろいと思うんだけど」

 

「ショタコンの可能性もあるわ」


「……反応に困る」


 急に冷めたカナメを瑠璃がシメていると、突然創也が笑い出した。

 いきなり過ぎて、一瞬宏人は瑠璃とカナメのやり取りに笑ったのかと思ったが──違う。

 それは、創也の次の一言で暴露される。


「いやー──まさか今いるとは。きみたちほんとに運が良いねぇ……!」


「……何よいきなり、運が良いってどういう──!?」


 ──刹那。


 空気が揺れた。


「──うん?有名人が揃いに揃ってこんな辺鄙な保育園に何の用だ」


 すると、いつの間にか保育園の入り口に男が。

 その男を見て、カナメが目を見開く。


「ははぁ……お前こそこんなところで何やってんだよ、政府のお偉いさんよ!」


 そう──その男は、カナメの因縁の相手である、闇裏菱花。

 菱花は眼鏡をクイッとあげ、宏人たちを交互に見る。



「一般人に、超能力者、そして勇者剣の所持者に──神の『器』、か」


「誰が一般人よ」


 瑠璃は菱花に詰め寄り、ピシャリと言った。

 そして──頭を下げた。


「菱花さん、政治界を収めているあなただからお願いしたいです。どうか──神アスファスを人類の『敵』と認定し、国の戦力で以ってこの戦争を終結させてほしいのです。国民の力を集めればきっと──」


「駄目だ」


「ッ……!」


「理由はある。確かに街を壊滅状態にさせられたのは辛いが、場所が場所だ。何せコロシアムなんて物騒な施設に加え、そこではギャンブル、賭等行われていた形跡が多分にある。コロシアムはもうないが、現在でも裏取引等行われている報告もあがっていた。守龍街の優先順位は──最も低い」


 菱花は瑠璃を通り過ぎ、宏人の元へ──行く前に、カナメが割って入った。


「久しぶりだな、闇裏菱花」


「ああ、久しいな、七録カナメ。10年……いや、もっと前ぶりか」


「お前には聞きたい事が富士山ほどあるが……敢えて一つだけ聞く──なんでお前、あの時から歳とってねぇの?」


「ッ!」


 そこで宏人も気付いた。

 カナメから闇裏菱花について聞いた事は少なからずあったが、確かカナメが6歳頃の出来事、つまり今から大体15年前だ。

 あの頃の菱花は既に政府の高官で──少なくとも部下を持っている立場にあった。


 ──菱花は、一体──


「簡単だよ」


 菱花よりも前に、創也が口を開く。

 それは流暢に、当たり前のように、何ともなく。

 創也にとってはごく自然で、さも当然の事。

 生命を脅かす、かつて恐竜という種族を壊滅させた原因であるとされる隕石が、宇宙界での日常という様な、視点、捉え方によって楽観的、悲観的になる様に。


 目の前の人間だと思っていた存在が、全く別の存在である事なんて、宏人たちには違くとも、創也には当たり前なわけで。


「闇裏菱花。そいつ、神ノーズの一人だよ」


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