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超能力という名の呪い  作者: ノーム
九章 神魔大戦・中編
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144話(神サイド) 開幕


「──『支配』」


 城坂墓がそう呟くと、守龍街にて死体と成っていた人々が、一斉に立ち上がった。

 城坂の『能力』──『支配』は、己より格下の人間を操る禁忌能力に分類される異能。

 格下か否かは城坂自身には判断出来ないのがネックだが、まあ使い勝手が良い。

 何せ墓で発動すると軍隊並みの兵を作ることが出来るのだ。

『能力』者達を考慮しなければ国家転覆など容易いと言ってもいい。


「クク……ククククククククッ……!」


 今日、この守龍街で死んでいった人々は三万ほど。

 元々人口が十万程いたのだ、何せここの売りは『平和』。

 確かに他の街より圧倒的に平和であり、それを理由に一時期は何万の人々がここへ流れてきた程だ。


 城坂の不吉な声が響き──三万ものの兵が完成した。


 だが当の城坂の顔は、否──全身は痛々しい程に焼かれている。


「アルドノイズぅ……宏人くーん、必ず助けるからねー……」


 城坂はそう呟きながら死者達──軍を進行させる。

 

 城坂の『能力』である『支配』は、フィヨルドの『呪い』である『ネクロマンサー』に大変似ている。


 違いというと、『支配』は格下全般を己の手中に、『ネクロマンサー』は死体を己の手中に──そう、『支配』の方が、圧倒的に有能なのだ。

 だがフィヨルドの方が戦闘センスがあるため、ここは城坂に任されている。

 そして──ここの意味とは。


「──ふぁっ、死ぬかと思ったー!」


 軍隊を作り出すのと、一人の瀕死の少年を蘇らせるため。


 城坂の『支配』で──七音字幸太郎が息を吹き返した。


「ふぅー助かったぜ城坂。これでまた戦える」


「よかったー、僕としても幸太郎くんに協力してもらえるなんて心強──えっ?」


 城坂の腹に、幸太郎の手が食い込んでいた。

 

 ──気付かなかった、気付かなかった。


 いつの間にか目の前にいた、いつの間にか手が迫っていた──いつの間にか、腹が刺されていた。


「……ごふっ」


 城坂の口から血が滴り落ちる。

 

「おかしいなー……。幸太郎くんは貸し借りをキチンとする人だと思ってたのにー……」


「そうだよ。俺は感謝している人には感謝した文だけ尽くすタイプだ。だから瀕死の俺を、フィヨルドが!助けてくれたから七録カナメを殺す条件で復活させてもらったぁ!──さて。『支配』によって生きながらえている俺は、『支配』する人が死んじまったらどうなんだろうなぁ……」


「あはは……死ねよカス……!」


 ──そこで、城坂の意識は──!


「──殺してやる」


 アルドノイズの前で魅せた、己自身を『支配』で操り、人の理を逸脱するバグ──だが。


「あっっっっそ」


 幸太郎が手を横に払い、城坂の首が落ちた。

 

 手を開き、閉じる。

 次に『身体者』を使い、城坂の死体の腹を足で貫く──問題ない。

『支配』する側が死んでも、された側に影響はない──!

 これもまた『支配』のバグ。

 幸太郎は、高笑いをし──

 

「──よし。カナメぇ、今行くからなぁ!」


 幸太郎は、『身体者』のジャンプで、空高く飛びながらそう叫んだ。


 ──幸太郎が今回ソウマトウらと協力関係を結んだ理由は、もちろん生き永らえるためでもあるが、アスファスにデメリットがないからである。

 七録カナメを殺す条件で協力しているのだ、主人がアスファスだろうと、ソウマトウだろうとそれは変わらない。

 カナメを殺し──ソウマトウも殺す。


「それでいいじゃねぇか」


 幸太郎は、楽しそうに笑った──。


 *


「──俺は『暗館』でセバスによって殺されかけていた時、フィヨルドによって助けられたんだ」


 アルドノイズ、カナメ、瑠璃、クンネル創也の前で、智也はこれまでの事を語っていた。

 ちなみにアリウスクラウンとは先程別れた。

 

「……は?なんでフィヨルドが勝手に他人の式神に侵入してんのにセバスはお前に逃げられるんだよ。式神は使用者の『世界』だ。誰がどこで何をしてるかなんぞ把握すんのなんて容易いぞ」


 カナメの質問に、智也はああと返す。


「そう、そこがフィヨルドの異質な特徴──霊体に関係している。奴はどうやら『式神』でも感知されないらしい」


 智也は少し歩き、空を見上げた。

 そこは先程ソウマトウとフィヨルドがいた場所。


「まあだから、フィヨルドは空を飛べていたってわけ」


 その言葉に、瑠璃が首を傾げる。


「じゃあ尚更なんであなたは空を浮遊出来ていなのよ。確か『操作』でしょ、能力」


「ああ、元な」


 智也は皮肉っぽく笑いクンネルを見る。

 クンネルはため息を吐き、謝るように片手を立てた、大人である。

 智也はクククと笑い、カナメたちに向き直った。


「どうやらアスファスが追加した『ルール』の『能力』の制限の中に、自能力を奪われた奴には能力の再配布が行われたらしく、今の俺の『能力』は──『悪魔』」


 皆が唖然とする中、智也は続けた。


「悪魔を作り出し、操る異能だ」


 *


 ──なぜ、ソウマトウは今更になって人間界へ来たのか。

 しかもこのタイミングだ、この、アルドノイズとの戦争中に……。

 ソウマトウはどちらかといえば戦闘タイプではなく、頭脳タイプだ。

 そんなソウマトウが、今このタイミングを選んだ。

 未だダクネスが健在の時に──


「まさか、ダクネスが協力的ではない事に気付いている……?それともライザー・エルバックを仲間にした……?いや、それは考えられんな」


 アスファスが一人でぶつぶつ呟いていると、ドアをこんこんと叩く音が。

 アスファスはタイミングの悪さに少し苛つきながら返事を返すと、ガチャッとドアが開き──


「ッ!エラメス!」


「お久しぶりです!アスファス様」


 そう、たった今、3日ぶりにエラメスが帰ってきたのだ。

 アスファスは内心喜びながら、エラメスに何があったか聞く。


 エラメスは黒夜の『魔弾』によって動きを封じられていた事と、『死神』セバスとの戦い、そして──コット・スフォッファムが生存していた件について事細かに話した。

 それを聞いてアスファスはふむと頷く。


「なるほど……それで?勝ってきたのは明白だが、どうしたんだ?」


「……」


「黒夜とセバスは、殺したか?」


 そこでエラメスは押し黙る。

 アスファスはため息を吐きそうになる、これでは未だエラメスを三日も拘束出来る戦力が向こうにはあるという事に──。


「──ええ、もちろん殺しましたとも。黒夜、セバス両名は、既にこの世にございません」


 *


 ──さて、これで三組織とも準備は整った。


 アルドノイズは生きるために、アスファスはアルドノイズに『復讐』するために、ソウマトウは──『能力』を消すために。


 それぞれの思惑が交差し、それぞれがそれぞれの組織を喰らい尽くす。

 己の野望を貫くために、それ以外を破滅させる。


 ──人でなし?


 ──自分勝手?


 ──自己中心的?


 大いに結構。


 なにせ、我らは──!


「「「神なのだから」」」


 アルドノイズは、アスファスは、ソウマトウは──心の内でほくそ笑む。



 神魔幻戦が始まる。

 

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