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超能力という名の呪い  作者: ノーム
八章 神魔大戦・前編
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143話(神サイド) Overwhelming


「──ハッ……!」


 一体いつまでこうしていればいいのだろうかと、何度考えた事か。

 身体中が爆発しそうなくらい悲鳴をあげ、でも人間の身体はそんな柔くない、何故か、それを憎んでいる自分もいる。

 いや、自分はここでくたばる訳にはいかない。

 いかんせんこちらは戦力不足。

 相手方にはあの『神人』ダクネスと、目の前にいる──!


「あはは……そろそろいい加減にしてくれない?──エラメス」


「こちらとしても怒り心頭なのだ……!早く解放しろ、何より現在の情報を開示しろッ……!」


 黒夜は、呪縛の異能を含んだ『魔弾』によってエラメスを拘束していた。

 それもまる3日。

 黒夜の目から血が滴れ、膝は笑っている、立っているのはエラメスの目からしても賞賛するレベルだ。


「あっ──」


 一瞬、一瞬だ。

 一瞬、気を抜いてしまった。

 その一瞬は、エラメスにとって。


「──好機」


 エラメスを囲んでいた黒い半円球にヒビが入り──やがて砕け散った。

 黒夜は地に膝を付き、うつ伏せで倒れようと──する体に必死に鞭を入れ、よろよろと立ち上がる。

 エラメスは首を鳴らし、肩を回し、深呼吸をし──


「さて、黒夜。死んでもらうぞ」


「……私、おじさんに殺される趣味はないの。やめてくれる?キモい」


「……死んだぞ」


 エラメスは右手を黒夜に向けた。

 その手より、濃厚な『能力』が集結していく──それは止まる気配を見せず、どんどんどんどん大きくなっていく。

 

「……」


 その間に、黒夜は左手で己のありったけの『能力』を込めた。

 左利きではない、単にエラメスと被るのが嫌だったのだ。

 

 ──構成するは『腐食』の『魔弾』。

 

 おそらくエラメスの攻撃を止める事は出来ない、ならば相打ち覚悟で殺すしかない。


 ……まあ、この『魔弾』もエラメスの攻撃によって掻き消されるだけだろうが。


「──私は簡単に負けてやらない」


「私とアスファス様を長い間放した罪の重さを知れ」


 エラメスから、名も知らない『能力』が、黒夜を喰らい尽くさんばかりに迫り──


「──式神展開」


「「ッ!?」」


 その一言に、エラメスも黒夜も驚く。

 なにせその声、その式神、その姿は──


「コット・スフォッファムッ……!?」


 エラメスは信じられない物を見る様に目を白黒させた。

 

「……貴様、死んだはずでは……?ダクネスから逃げおおせたとでも言うのか?ありえんぞ、そんな事……!」


「黙ってよおじさん」


 コットはエラメスの言葉をピシャリと遮ると、黒夜に向き直った。

 取り繕う暇も無かった今の黒夜からは、男装用の道具が全て剥がれていて……。

 だから。

 

 コットは、女の子には、一番最初に必ず同じ言葉を言う。


「僕に、惚れたか?子猫ちゃん」


 *


「──さて。案外早く片付いたね」


「ふむ。『魔手』はともかく、『金剛』は今後使えますな」


 ニーラグラは快、アトミックは雫をそれぞれ相手にしたが、快と雫は呆気なく気絶した。

 

「まあ二人とも援護系だもんね。いかんせん火力が足りてないよ……」


「ふむ。しかしながらこの快という男の『魔手』……強くはなくとも何だか嫌な予感がするのは何故でしょうか」


 アトミックが顎に手を置き悩み始めたところで、祐雅が咳き込んだ。

 祐雅はそのまま地に倒れ込み、浅い呼吸を繰り返す。


「祐雅くん!」


 ニーラグラは牢を一瞬で破壊し祐雅を抱き上げた。

 そう言えば祐雅は2日程飲まず食わずでこんな汚いゴミと埃だらけの部屋にいたのだ、どんな症状が起こるか検討もつかない。


「アトミックくん、どうすればいいかなぁ!?」


「ふむ。そちら側の陣地には回復系統の『能力』を持つ北岡飛鳥がいるでしょうに。その方に頼めばどうでしょう」


「いや今急いでるからぁ!そこを何とか、この組織の回復役の人とかに──」


 ニーラグラがそこまで言うと、アトミックは不思議そうに首を傾げた。

 ニーラグラはそれを見て一瞬で回復役なんて用意していないと言われる覚悟をし、必至に他の方法を模索したが……違った。


 アトミックが、黒夜と約束したこと。


『アルドノイズとニーラグラの願いを一度、一度だけでいいから叶えて』


「はて……何故私がニーラグラ様の願いを二つも叶えないといけないのでしょう?」


「……ッ!」


 ニーラグラはアトミックに戦いの前こう言った。


『祐雅くんの居場所を吐きなさい!』


「あはは……じゃあ私だけで頑張って探すよ……」


「ふむ……では私はそれを止めさせていただきます」


 アトミックは、そう言いニーラグラの前に立ちはだかった。

 ニーラグラの顔から、一粒の汗が垂れる。


「……えーと?私に協力した理由は黒夜ちゃんとの約束とソウちゃんの妨害のためじゃ……」


「ふむ。そうする為にニーラグラ様を捉え、アスファス様と共に戦ってもらおう」


「えぇ……」


 ニーラグラは片口を引き攣らせながら、優しく祐雅を地に置いた。

 アトミックの戦い方は相手が式神展開をした中で式神顕現『処刑人』を召喚し、『能力』である『視線界』で己の存在を別のどこかに隔離し安全圏より攻撃するというもの。

 理不尽な強さ極まりないのは、アトミックの式神と『能力』の相性の良さからくる。

 本来なら『視線界』は自分自身も相手に触れる事は叶わないが、それを自動人形であり不死の式神展開『処刑人』が相手を断罪するのだ。


「だけどそれは……初見殺し」


 ようは、こちらが式神さえ展開しなければいい。

 そうすれば、容易に逃げ切れる。

 アトミックはクククと笑い──戦闘の構えを取った。


「でも……私は神なわけで」


 ニーラグラは、ニコッと笑った。


「めっちゃ強いよ!」


 *


 ──『世界』が、構築されていく──!


「『魔国魁星』」


 コット・スフォッファムが作りだした『世界』は、まさに魔界、そのままだった。

 薄暗い闇の中、木々が騒めき、波が笑う。

 そんな中、もう一人ここへ侵入してきた。

 コットが式神を展開してから来た事から、コットの味方だと分かる。


「……『死神』の片割れか。今宵は珍しい人物がよく集まるな」


 そう言ったのはエラメス。

 アスファスの側近にして最強の盾と名乗る彼は──全く動揺していなかった。

 

「……エラメス・エーデン。先程貴様の子であるニューマン・エーデンを殺してきたぞ」


「そうか……対して愛情も無いが、いざ死ぬとなると些か悲しいな……。何かしらの役には立てたろうに、何もせず死んでいくとは」


 エラメスはそこまで言ってため息を吐き、続けた。


「そんなお前でも、まあ、敵討ちくらいはやってやろう」


 瞬間、エラメスは懐から剣を取り出し、セバスに肉薄する。

 それをセバスは華麗に避け──


「ッ!危ないセバス!」


 そこでコットは悲痛な叫びを上げた。

 黒夜もそうだが、セバスは意味が分からず、そのままエラメスに自慢の『死神の鎌』を──!


「エラメスの『能力』、『随伴者』は、主人と決めた者より一段階強くなるという異能だ!何が言いたいかって言うと──神の前述は、懐で攻められたら『龍』を召喚して対象を潰──」


「ふん、正解だ──『白龍』」


 エラメスはノータイムで『白龍』を顕現させ──セバスを下敷きにした。


「……ッ!」


 黒夜は、ゴクンッと息を呑む。


 ──主人と決めた者より一段階強くなる。


 つまり現状のエラメスは現在のアスファスより一段階強いと言う事で──もし、今アスファスが『神化』したら?


 神は人間界へ来ると、余りにも強大な力を一時的に神ノーズへ預けられる。

 だから、今のアスファスは本来の力を宿している訳ではない。

 

 では、アスファスが『神化』すれば、エラメスも『神化』すると同義なのでは?


「ッ!」


 黒夜は理解するや否や立ち上がり戦闘体制を取った。

 コットは最初から分かっていたようで、黒夜を見て嬉しそうに頷く。

 現状の力でもあの『死神』を一瞬で葬り去るのだ、それよりも上の段階があるなんて考えたくない。

 それに何より──ここでエラメスを倒さなければ、その牙は宏人へと向かう。


 それだけは、魂をかけても阻止しなければならない。

 

「まずは一人……後は二人か。なかなかに面倒臭い」


 ポリポリと後頭部を掻くエラメスに向かい、黒夜は『魔弾』を、コットは『変換』を。


 それに対し……エラメスは『清き明き魔水の波動(ウォトルビオラ)』を!


「「今、ここで倒す──エラメス!」」


「来い!アスファス様に楯突く愚者共!」


 黒夜とコットは協力して、そのままエラメスを追い詰め──結果。




 ──敗北した。



       











          第八章 神魔大戦・前編──完


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