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超能力という名の呪い  作者: ノーム
八章 神魔大戦・前編
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142話(神サイド) It stings


「──『花火』」


 カナメがそう呟くと、周りの隊員が一斉に吹き飛んだ。

『爆破』の上位互換である『花火』は付近で撃たない程強力な異能故、隊員らの死体は惨たらしく、血の雨が降り注ぐ。

 そんな中カナメはハッと気付く。


「……そういやニーラグラがまだ帰ってきてなくね?」


「そうね……まあいちお神だし大丈夫だと思うけど……心配ね」


 なにせ相手はアトミック・ピークポイント。

 己の姿を消し、後は式神で対象を殺すまで追い続けるという完璧な戦い方をするのだ、たとえニーラグラでも負けかねない。


「どうする?俺が今日ラストの式神展開して『バグ』作って助けにいくか?」


「それはやめた方がいいわね。宏人の『眼』もそうだけど、あなたの式神は私たちにとって最終手段よ。明日も明後日もこの戦いは続くかもしれない……そう考えると今使ってしまうのは悪手だわ。仮に今使ったとして、明日の調子はどうなの?」


「まちまち……だなぁ。まあ一回、死ぬ気で二回は式神出せる」


「却下。今日は使わず明日に備える。ダクネスを筆頭に、まだアスファスとエラメスがいるのだから。……黒夜は無事かしら」


「とにかく、今を乗り越えなきゃって話なわけで」


 そこでカナメはまた『花火』。

 ちょうどアルドノイズの『エンブレム』とタイミングが被ったため、二つが交わり大爆発を起こす。


「ッ!?」


 カナメは咄嗟に瑠璃の前に『衝撃』。

 なんとか瑠璃への被害を免れたものの、クンネルの腕に火花が。


「熱ッ!?」


「チィィ!気を付けろ!」


「五月蝿い。オレは降りかかる火の粉を払っているだけだ」


「その火の粉を爆炎で対処すんなよ……」


 カナメはとにかく『衝撃』を放ちまくり、瑠璃や飛鳥など非戦闘員を──


「つーか飛鳥どこ行った!?」


「チッ、逃げたわね……」


 大きく舌打ちした瑠璃に苦笑いしながら、カナメは『爆破』と『衝撃』を使い分けていき──


「──終わったな」


「感謝しなさい。私も協力してあげたんだから」


 そう言ってカナメの元へ来たのはアリウスクラウン。

 カナメは無視し、再度上空を見上げる──すると、既にそこにソウマトウ、フィヨルドの姿は無かった。

 

 まるでその代わりとでも言うかの様に。


「高みの見物ってやつかしら?山崎智也くん」


「いやいや、実際引いてる。なんで身体能力『大』の連中を悉くぶっ飛ばすんだよ」


 そこまで言って、智也はクツクツと笑う。

 アルドノイズはそんな智也に地上から『エンブレム』を撃つが、やはり距離があるため簡単に躱されてしまう。

 

「というか何で宏人が炎系統の異能使えるんだよ。気性も荒くなってるみたいだし、なんだかアルドノイズみたいだぞ?」


「それはオレがアルドノイズだからな。久しいな智也。元気にしてたか?」


「……ん?」


 そこで智也は情報量が多かったためかフリーズした。


「だから──オレはアルドノイズだ」


「……」


 何だかんだあって、智也を仲間に引き摺り込めた。


 *


「……なん、だと?」


 アスファスはキレ気味に呟く。

 

「その話は本当なのか?」


「はい。アリウスクラウン様たちが七録カ──」


 鈍い音と共に、男の声は途絶えた。

 アスファスがその男──アスファス親衛隊の連絡員を殺したからだ。

 普段アスファスは人殺しはしない。

 それは別に人並みの倫理観があるという訳ではなく、ただ殺した際に飛び散る血、異臭、後片付け等々、かなり面倒な事も付随するためである。

 だが、時に我を忘れるほど怒っている際は例外な訳で。


「予定変更。まず何より先にソウマトウ一派を潰す」


「ヒッ……」


 新たにアスファスに呼ばれた連絡員は、足元の死体に酷く動揺しており──


「返事は?」


「は、はい!」


 アスファスから逃げる様に急いで出ていった。

 まあ、そちらの方が都合が良かったためアスファスは何も口にしなかったが。

 アスファスは苛立ちを隠そうともせずに身近にあった物を叩き壊した。


「あーらら。ソウマトウちゃんも何でまた今なんだろうね?アスファスがブチ切れる事なんて分かってるだろうに」


「おそらく現在エラメスがいない事に関係しているのだろう……。アイツらが関与していようがしていまいようが、今は盛大なチャンスなのだろう」


 アスファスはダクネスにそこまで言って、本当にエラメスはどうしたのかと思考する。

 いなくなったのは、そう……向井宏人がアスファスに向かって式神を展開した際──アスファスを守ろうと代わりにエラメスが入っていってから、戻ってこない。

 宏人から黒夜が助けたと聞いたが、現状それも定かではない。


 ──向井宏人がエラメスを殺した?


 それはどうにもしっくりこない。

 まあ、それはさて置き……。


「私とアルドノイズの戦いを邪魔するゴミは、一匹残らず駆除してやるとしよう……!」


 アスファスは、ソウマトウと戦う事を決めた。


 *


「……それで?私をどこに連れて行こうって言うの?──アトミックくん」


 アトミックと敵対していたニーラグラは、特に戦う事なく共に歩いていた。

 実を言うと、皆が式神の中へ吸い込まれていく中、ニーラグラももちろん式神を展開しアトミックを招き入れたのだが──


『ニーラグラ様、どうか共に来ていただきたい場所があるのです』


 アトミックはそう言い、頭を下げてきた。

 ニーラグラは首を傾げたが、そこで気付く。

 

 以前、黒夜はアトミックと戦っていたと言っていた。


 それ以降特に交流が無かったためおざなりになっていたが、勝負する以上、勝敗がない事はありえない。


 引き分け、逃亡といった考え方もなくは無いが、この二人の性格上それはあり得ないのではないだろうか。


「もしかして……黒夜ちゃんに負けた?」


「ふむ。何故私が黒夜殿に敗北したと?あなた方は特に連絡を取り合っている様子では無かったとお見受けしますが」


「いや……なんかそうかなぁ、って」


「ふむ。なるほど、素晴らしい勘でございます」


 ……バカにしてない?と思いながらも渋々無視する。


「それで黒夜になんて言われたの?その調子じゃあまり命令とかされてない様に見えるけど」


「ふむ……一度。一度だけ、アルドノイズ様とニーラグラ様の助けになれ、と」


「へぇ……。それにしてもよくアトミックくんもそれに従ってるよね。性格上アスくん一筋とか言って無視するかと」


 そこでアトミックは小さく笑い、顎に手を置いた。

 その顔は獰猛な獣か、それとも軍を導く策士か。


「ソウマトウという邪魔さえ入らなければ、もちろんそうしていましたとも」


 そして、着いた。

 アトミックによって連れて来られた場所は──アスファス親衛隊の地下室。

 牢獄だ。

 そしてその一番奥にて──


「あ!祐雅くん」


 海野維祐雅がそこにいた。

 祐雅だけではない、祐雅が入っている牢屋の前に、二人の男がいる。


「あ?あれってアトミックとニーラグラか。タイミングわるっ」


「まあ仕方ないだろう!俺らも本気を出す時だ」


 ──永井快と羽島雫。


 能力名は──


「『魔手』」


「『金剛』!」


 かつて、宏人たちの前から突然姿を消した二人が、アトミックとニーラグラに牙を剥いた──!

 

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