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超能力という名の呪い  作者: ノーム
八章 神魔大戦・前編
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141話(神サイド) Long time no see


「──大丈夫ですか?」


 死にそうな時、女神ではなくおっさんが話しかけてきた。

 だがそれでも良い。

 城坂は縋るような気持ちになりながらも、わざわざこんな姿を見た上でのその質問に苛立ちをかくせなかったため、少し意地が悪い返しをした。


「……全然大丈夫じゃないねー」


「はっはっは。でしょうな、生きながら死んでいると言ったところでしょうか」


「……」


 遂に口を開くのですら難しくなってきた。

 城坂はそれでもこの任務を──アスファスから言い渡された、単独で地獄を制覇する任務を達成しようと……起き上がろうとしたところで、何かがプツンと切れた音がした。

 城坂は、意識を失った。


 *


 頭を撫でられている。

 それが分かって、目を開けると──おっさん。


「……あはは」


 さすがに笑った。

 だが幸いな事に城坂の頭を膝に置き撫でてくれている人物は別にいて。


「……目が覚めたかい?」


 紫色の髪をした、独特の雰囲気を持つ女性だった。

 

 この女性の正体が分かったのは然程先ではない。

 この人は、神だった。


 ──『幻神』ソウマトウだった。


 フィヨルドはソウマトウの側近らしく、地獄の調査中にたまたま城坂を見つけ、ついでに助けたという流れらしい。


「……きみの名前は?」


 ソウマトウが微笑みながら城坂に言う。

 ソウマトウの容姿はなんというか、気怠げ美人と言うべきか。

 目元には分かりやすいほど大きなクマが出来ており、何より胸の大きさが目立つ。

 感じるだけで分かる、これは『器』ではなく、ソウマトウ本人だ。


「墓ー。城坂墓」


「墓……なんかとてもしっくりこない名前だね。親に名付けられたの?」


「いやいやぁ、親の顔なんて知りません。お墓に捨てられてたんで墓って名付けられたっていう流れですー」


「そうか。なかなかの人生を送っている様だな。それはそうと、何故地獄に?」


 そこでおっさんが割って入ってきた。

 城坂はソウマトウに感謝を述べ、隣に正座で座り直した。

 

「ああ失敬失敬。私の名はフィヨルドと言ってね、こちらの方は神の一柱であるソウマトウ様という」


「……ソウマトウだよぉ。よろしくね」


「よろしくですー。地獄にいた理由はですね、調査です!」


「……調査?」


 ソウマトウは首を傾げ、フィヨルドは腕を組みながら黙って聞いている。

 城坂はうんと頷き続きを話した。


「アスファス様からの命令で、地獄を調査していましたー」


「ッ!?アスファスだと……?何のために?」


 急にフィヨルドの顔色が悪くなり、口調が荒くなるが城坂は気にしない。

 否──気が付かない。

 これが城坂が周りから嫌煙される理由、他人の思考を全く読み取る事が出来ない。

 顔色を窺うなんて、城坂の辞書にはない。


「……?ただの調査です。何があって、何がなくて。何がいる……とか?」


「……なるほど。つまり墓は捨てられたわけだね」


「そうなんでしょうかー……?まあ生きてるわけですし、何とかなるのではー?」


「では、私たちが何とかしてやろう」


 フィヨルドは組んでいた腕を解き、その手を城坂へ持ってきた。


「私たちのために、アスファスを裏切ってほしい──」


 *


「ハッ!向井宏人がオレを呼ぶ際にお前がいるのは何かの仕様か」


「でしたら面白いですね。ですが申し訳ありませんね、私にはソウマトウ様がいるので」


 式神展開『極廻界』にて。

 あちこち焼け爛れた少年──城坂墓と、フィヨルド、そしてアルドノイズが対峙していた。


「……?」


 そこでアルドノイズは気付いた。

 自身の『世界』内にどれ程の数の人間がいるかなど当たり前の様に伝わってくるはずなのだが──アルドノイズの他に今は一人、城坂墓分の気配しかない。

 

「貴様、幽体か」


「ご名答です。新野凪という少年に一度生き返らされましたが、無事もう一度死ぬ事が叶いました」


「……気色が悪いな」


 吐き捨てるようなアルドノイズの言葉を無視し、フィヨルドは口を開く。


「さて、アルドノイズさん。式神展開のバグについてご存知でしょうか?」


「嫌というほどにな」


「なら──二回目も乙というもの」


 フィヨルドがパチンッと指を鳴らすと──何者かが付近で式神を展開する気配が。


 だがアルドノイズは知っている、このバグは起こす方の技量が低ければ、発生は可能だが起こされる側の式神には何ら影響がないと──


「……なるほどな。まさか貴様が表舞台に出てくるとは──ソウマトウ」


「……久しぶりねアルファブルーム。元気そうで何よりだわ」


 ──刹那。


「『夢と(ファントム・)幻想の世界(ファンタジー)』──」


「『猛炎と聖水の邂逅(バースホーシャ)』──」


 互いのカミノミワザが炸裂。

 辺り一面余波で爆風が凪ぎ、周りで待機していた『影』達が吹き飛んだ。

 煙も立ち込み視界が見えない──だから。


「──顕現せよ、『影』」


 しかし、何も起こらない。

『影』は、影より生み出て主を殺す、つまり、主がいなければ生まれない。


「なるほどな、『ファントム・ファンタジー』でこの『バグ』を壊して逃げたか」


 アルドノイズはクツクツと笑うが、ハッとする。

 ……逃げられたとあっては、向井宏人に顔向け出来ない、と。


「さて、仕方がない。もう少々働いてやるとするか」


 アルドノイズも全力で辺り一面に『バースホーシャ』をし、『バグ』に穴を開けて出ていった。


 ──まあ、収穫はあった。


『バグ』の中では、複数の式神展開の異能が発動可能である事が分かったのだから。


 *


「──『支配』」


「!?」


 カナメたちが今後について話している時、突然『能力』が弾けた気配が、これは式神展開が解除されたという証。

 まだいないのはニーラグラと、アルドノイズといった神の二柱。

 一同が無事を祈る中、そんな声が。


「……『支配』。城坂墓の『能力』だな」


「アルドノイズが倒せなかったって言うの?名前だけ聞くとクンネルの『吸収』の様に何でもかんでも吸い込める訳ではないっていうタイプで弱そうなのだけれど」


「やはり自分はそんなにか……」


「ああ。精々言ってそれなりの能力者なら割と簡単に抵抗出来ると思うんだが……」


 クンネルを無視し、カナメはそこまで言って思考に耽る。


 ──なんの為に?


 ふと周りを見渡す。

 瑠璃、創也、クンネル、アリウスクラウン──アスファス親衛隊およそ四百人……。


「ハハ……まさか」


 カナメが苦笑いをしながら戦闘態勢を──


 ──刹那。


 耳の奥を刺激する不快な音が辺りに響いた。

 その音の先には──


「ハハハ!最後に面白い置き土産を残してくれるな!城坂墓!」


 向井宏人──の姿をしたアルドノイズ。

 アルドノイズは程々の上空の虚空より、アスファス親衛隊およそ百名と共に落下してくる。

 アルドノイズは高笑いをしながら周り一面を爆炎で燃やし尽くす──親衛隊が焼け爛れ、己の落下の殺す。

 百名いた親衛隊隊員は大体が炎で焼け、生き残りも落下の衝撃で命を落としていく。

 まるで死体の雨の中、アルドノイズはカナメたちの元へ着地した。


「どうやら『支配』によって操られた人間は使用者の付近にいなければただの傀儡だな。どうにもつまらん」


「……『支配』が発動していたのに城坂墓の姿が見えない。さては逃したな、アルドノイズ」


「……まあな。言い訳はせん。だが──この戦争。これから大分荒れるぞ?」


「あ……?」


 そこでカナメは上空に唯ならぬ気配を感じ、目を遣ると──


「──ソウマトウか。なんで現世で神さんたち三人が戦争やってんだよ」


 カナメはハハハと笑い、上空に『爆破』。

 それをおそらく『支配』の影響を受けた親衛隊がソウマトウを庇い、落下、肢体が飛び散る。


「さて。『呪い』を否定した愚者共よ──制裁の時間だ」


 そう言いながらまた上空に現れたのは──フィヨルド、フィヨルド・ナイト・オーパッツ。

 そして更にフィヨルドの背後より──


「……あら、随分懐かしいじゃない──山崎智也、だっけ?初対面で気絶していたからよく覚えているわ」


「逆にお前は誰だよ。と、宏人……か?なんか雰囲気変わったな」


 名前は普通の、異端な少年──山崎智也も、そこに居た。


 それと同時、『支配』によって操られたアスファス親衛隊の隊員らが、四方八方よりカナメたちに襲いかかってきた──!


 



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