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超能力という名の呪い  作者: ノーム
八章 神魔大戦・前編
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140話(神サイド) Once upon a time


「『吸収』!」


 先手必勝、クンネルは創也に向けてありったけの『能力』を込めた『吸収』を放つ。

 しかしながら、創也は『吸収』という理自体を『勇者剣』で斬り裂き、あっという間にクンネルの首に剣を添えた。


王手(チェックメイト)


「……ッ!」


 クンネルの額から汗が垂れる。

 だが創也はふんと鼻を鳴らし、『勇者剣』を鞘に納めた。

 

「お前らはさっさと帰れ。ぶっちゃけ場違いだ」


「……」


 クンネルは何も言い返さずに黙ってしまう。

 それを見て創也は更につまらなそうな顔をして踵を返した。

 そんな創也を──瑠璃は止めた。


「待ちなさい。太刀花創也」


「……?お前は確か池井瑠璃か。更に場違いなお前がどうした?」


「言ってくれるわね、あなただって──宏人に背信を唆したのに?」


「ッ──式神展開『勇者城』」


 瑠璃が言い終わる頃には、創也は両手を合わせていた。

 段々と『世界』が構築されていく中、アスファス親衛隊の面々が創也に何か言っているが、創也は無視。

 やがて『世界』は完成する──これが、『勇者剣』に付与されている異能、式神展開『勇者城』。

 

「親衛隊と分断……ていう解釈で合ってるのよね?まさかとは思わないけれどもここから私たちをなぶり殺す気ではないのよね???」


「ハハハ!式神を展開しただけでここまで怖がられるとはな!貴様らはあまり敵の式神の中に入った事はないとみた!」


「……どういう意味よ。なによりそのキャラやめて。私たちはあなたたちアスファス親衛隊に潜入していた宏人の状況を逐一確認していたのよ。あなたが素で宏人と話しているのを何回か確認した事がある」


「ハハハ……まあそうだね、やめるよ」


 創也はそう言いながら頭を小さく掻いた。

 瑠璃は何故こんなめんどくさいキャラを演じていたのか気になったが、今書くべき事はそれではない。


「……あなたは何者?祐雅くんの証言じゃあなたはかつてアルファブルームに敗れ、死亡している。その後ひょんなところでカナメくんと遭遇、そしてアリウスクラウン、七音字と共にカナメくんを瀕死に……その後もちょいちょい私たちの邪魔をし──助けたりもした」


「……」


 創也は頷きもせず、黙って聞いている。


「……正直、敵とは思えない。だからあなたには最低限の戦力と私を割いた」


「……最低限の戦力」


 クンネルが悲しそうにしゅんとするが、瑠璃は構わず続ける。

 

「だから、私はあなたにこう言うわ──私たちの仲間になりなさい。太刀花創也。ぶっちゃけて、こちらは非常に戦力不足なの」


「へぇ、神の二柱仲間にしといてよく言うよ」


「あなたたちだって神人と神いるじゃない。こっちの神人様は既にお亡くなりになっているわ」


「ハッ!」


 瑠璃の言葉に、創也は今日一番大きな声で吹いた。


「吐夢狂弥が死んだねぇ。そう言えばそうだったね、じゃあそっちは大ピンチだ」


「……?」


 創也がなぜ笑い、なぜ今更そんな事を言うのか分からなかったが、瑠璃は構わない。

 

 太刀花創也。


 性格も、能力も、何より戦い方も、まるで二重人格を持っているかの様な異質さを見に纏う少年。

前々から『勇者』の側近の『魔眼』使いとして有名な存在であったが、つい最近死んだという訃報があったのにも関わらず、現在は『勇者』として活動している。

 一言で言って不気味……だからこそ。


「私たちはあなたが欲しい」


「……」


「だから、協力してくれないかしら。宏人にも協力していた事を考えるとあなたはそこまでアスファスへの忠誠心はない。かと言ってそれ──」


「──いいよ」


「……え?」


「間抜けな顔するねぇ。そっちが誘ってきたのに」


 ニヤニヤと笑う創也の内心は読めない。

 だが仲間にする方が得策なのは間違いない、裏切ったとしても、太刀花創也ならカナメやニーラグラでも対処は出来る。

 だから。

 瑠璃もニヤッと笑う事にした。


「これからよろしくね。太刀花創也」


「うん、よろしくー」


「……自分はいる意味があったのだろうか……」


 クンネルが何か言っていたが、瑠璃は無視してこれからについて創也と話し合いをした。


 *


「おっ」


「あら、そっちも無事だったのね」


『勇者城』から出ると、カナメが胡座を描いてボーッとしていた。

 その隣には正座で姿勢を正しながらこちらを見ているアリウスクラウン・カシャ・ミラーの姿も。

 

「ああ、こいつ仲間になったから」


 カナメはアリウスクラウンをクイッと指で指しながら言う。


「びっくりだわ、まさかアリウスクラウンもゲット出来るなんて……」


「ゲットって何よ池井瑠璃。というか仲間になってないわよ!カナメ、嘘つくのはやめなさい」


「は?そういう流れじゃねーか」


「どういう流れよ……」


 アリウスクラウンははぁと頭を抑える。

 ピンピンしているアスファス親衛隊らはどうしようかと立ちすくんでいるが、この際気にしない事にした。

 そう言えば今更だが創也の方の親衛隊隊員はどうしているかと見てみると、アリウスクラウンの周りの隊員らと同様にただ立っていた、意外と聞き分けが良い部隊である。


「アリウスクラウンさん、太刀花創也は私たちに協力してくれる事になったわ。私たちとしてはぜひこちらについてもらえればと思うのだけれど……」


「あなた、正気?」


 アリウスクラウンが創也に言うと、創也はニヤッと笑いながら瑠璃に言う。


「駄目だよこの女は。生存本能以外子宮に忘れてきた女だからね。少なくともアスファス陣営が劣勢にならない限りこちらにつく事はないと思うよ。まあ、その場合本末転倒過ぎて話にならないけど」


「……そうよ、私は私の命が何よりも大切なの。確かにこちらは私は式神展開分余裕を持った状態のカナメに負け、創也は奪われた。だけど、それでもこちらの優位性は揺るがない」


「……神人、ダクネスね」


「ええ。彼女に勝てるのはそれこそ吐夢狂弥か、今は海外にいる神人、ライザー・エルバック。あともしかしたら七録菜緒辺りね。神ノーズは知らないわ、いるかどうかも怪しいくらいの存在なんだから」


「……神ノーズ」


 アリウスクラウンに言われて、瑠璃はハッとした。

 八柱いる神の生みの親──本当の神。

 神人を遥かに超える強さを持つとされる、最強の存在。

 

「……なんというか、当たり前過ぎて逆に候補から外してしまっていたわね……」


「?」


 聞き入れてもらえば一発で逆転、逆に敵対されれば一瞬てアウト。

 まるで宝くじ的な存在の事を忘れていたのだ。


 瑠璃の呟きに、皆が首を傾げる。

 そんな皆に、瑠璃はふふんと鼻を鳴らして。

 


「今から神ノーズに会いに行きましょう」


「……は?」


 第一声は、カナメのだった。


 *


 皆が皆式神の中へ入っていく中──宏人、の姿をしたアルドノイズは余裕の笑みで城坂に聞く。


「人間よ、お前は強いか?それとも弱いか」


「僕は強いよ。なにせ──アスファス親衛隊五番隊長『覇者』の城坂墓だからねぇ!」


 城坂はそう叫んだ後、すぐに両手を合わせた。

 その構えは、己の内に潜む式神を呼び寄せる──!


「式神展開」


 城坂の『世界』が、どんどん構築されていく。

 それはまるで、城坂という人間そのものを表したような、禍々しく、暗い『世界』。

 その名は──


「くだらないな。式神展開」


「ッ!?」


 突然、アルドノイズも式神展開……!


 式神展開とは、限られた使用者に付く一種の神。

 その『存在』の力の拡張を指す、そのため二者以上が展開する場合、より強い式神が他の式神を押し返す。

 まず有り得ないが、両者とも式神の力が拮抗している場合は互いの『能力』を掻き消しあった状態、即ち意味がない状態で、混ざりながら展開される。

 それ以外、つまり実力に少しでも差がある場合──より強い式神が、相手の式神を覆い尽くす。


 だがそれは両者とも同じタイミングで展開した場合の話な訳で。

 

 遅れて、ましてや相手の式神が展開する直前の状態で式神を展開するなど、よっぽどの実力さが無ければ不可能。

 だがしかし、裏を返せば、よっぽどの実力ささえあれば可能であり──


「『極廻界』」


 アルドノイズの式神は遅れて城坂の式神を一瞬で喰らい尽くした。

 

「……宏人くん……?」


「未だ分からないか……俺はアルドノイズだ」


「嘘だ……ウソだウソだウソだ!宏人くんの『変化』はこの『世界』に革命を──!」


「死ね。『バースホーシャ』」


 刹那──


 炎を司るカミノミワザが、城坂を焼いた。


「……こんなものか、人間」


 アルドノイズははぁとため息を吐く。

 手応えがあった。

 人間がカミノミワザをモロに受けて耐えられるはずがない。

 ましてや『バースホーシャ』は炎、廃すら残らず消え去るだろう。


 だが、城坂の能力は──!


「──『支配』」


「?……驚いたぞ」


 瞬間、炎の中から炭塗れの城坂が飛び出し、アルドノイズに向かって拳を突き刺す。

 城坂の能力は『支配』、自分よりも弱い存在を自由に操れる禁忌部類の異能。

 それを自分に発動する事により、自分が自分を操るというバグ状態を引き起こし、体が壊れる限り戦い続ける事が出来る様になるのである。

 しかしそんな攻撃はアルドノイズに効くはずもなく、アルドノイズは城坂の手を掴み、そのまま顔面に手を向け──


「『ネクロマンサー』」


「ッ!?」


 アルドノイズは突然背後に誰かいる事を察知し、すぐ振り返る。

 そこには老人が。


 フィヨルド・ナイト・オーパッツが。


「まさか神殺しをする時が来るとは……人生何が起こるか分からないものだ」


「……貴様、どうやってここへ入ってきた」


 アルドノイズの鋭い眼光に、フィヨルドはニヤッと笑った。

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