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超能力という名の呪い  作者: ノーム
八章 神魔大戦・前編
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139話(神サイド) カナメvsアリウスクラウン③

 

 カナメの拳をアリウスクラウンは受け止めると、顔を顰めながらも余った方の手でカナメに掌底打ち。

 カナメも小さく呻き声を上げながら、余った方の手でアリウスクラウンの顔面に衝撃拳。

 しかしこの『世界』の異能により『能力』消費で無かった事にされたが、カナメはアリウスクラウンの腹を蹴っ飛ばす。

 今度はアリウスクラウンがバックステップを踏み、距離を取った。

 もちろん、腹にダメージはない。


「さて……どうしたもんか」


 カナメは辺りを見渡し、目立つ様な物を探す。

 先程まで『花』が邪魔過ぎて周りを確認出来なかったが、やっと確認する隙が出来た。

 だが、特にこれといった物は見当たらない。

 

 という事は……。


 焦燥感が募る中、やはり目の前の女は待ってくれない。


「させないわよ」


 カナメにアリウスクラウンの手が迫る。

 カナメは取り敢えず構え、思考を巡らせる。

『花』が無くなった事により、現状アリウスクラウンしか『炎舞』を使えない、そのためアリウスクラウンは『炎舞』で炎を操る事とカナメの『爆破』を消し去る事の両立は不可能。

 だからアリウスクラウンは格闘術で絞めようとしているのだろう。


 カナメはすぅーと息を吸って、吐いた。


「……やるしかないか」


 兎にも角にも、まずは目の前の女をどうにかしないと始まらない。

 アリウスクラウンの手当がカナメの首を狙う、気絶させる気なのだろう、カナメはそれを必死に回避し回し蹴り。

 もちろん『衝撃』付きなのだがアリウスクラウンはまたもや苦い顔でそれを受け止め、掴んで地面に叩きつける。


「ッ!」


「甘い」


 カナメは『爆破』を発動させるが、案の定といったところかアリウスクラウンの『炎舞』に打ち消される。

 だがそれのお陰で隙が出来、カナメは足の裏に『衝撃』、アリウスクラウンの手と顎を吹っ飛ばした。


「ッ!?」


 アリウスクラウンが膝から血に落ちる、脳震盪だ。

 カナメはそのまま衝撃拳で顔面フルパンチ。

 そのまま続けて──!


「『花火』!」


『爆破』の複合技である『花火』が、アリウスクラウンに命中。

 アリウスクラウンの体が焼け焦げるが──次の瞬間には完全回復。

 それは顔面を殴った後も同じなわけで。


 アリウスクラウンは、未だに無傷──!


 これがアスファスが見込んだ女──そして、元対悪魔自衛隊特殊機関の隊員。


 だがアリウスクラウンだって人間、脳震盪が起きた後すぐに顔面を殴られ地に叩きつけられたのだ、まだ脳は覚醒していない。

 カナメはその隙を見逃さず駆け出し──その途中でまた『花火』、今度は打ち消された。


「まだ視界ボヤけてるだろうに……!」


 カナメは苦笑いしながらも、アリウスクラウンの腹に衝撃拳。

 アリウスクラウンは咳き込みながらも耐え、カナメに蹴りを叩き込む。

 カナメは迫るくる痛みに備えようとしたが──先程までの威力はなかった。

 それは現在麻痺状態だからなのか、それとも──


「さっきの『花火』か!」


「ッ……!」


 アリウスクラウンの式神展開『血花乱舞』は、傷の度合いに比例して、『能力』を行使し傷を癒す異能。

 

 そう、カナメの『花火』は、余裕で人を二回は殺せる威力があった!


 カナメは再度アリウスクラウンの顔面を衝撃拳。

 アリウスクラウンは吹っ飛び、地に転がり──立ち上がった。


「──『炎舞』!」


「ッ!?『爆破』!」


 アリウスクラウンは突然カナメに『炎舞』の爆炎を、カナメは咄嗟にそれに対抗して『爆破』。

 だがその火炎の衝突によって出来た煙により──アリウスクラウンの姿が消える。


 カナメは警戒し両手を──するとその時背後にいると確信した時にはぶっ飛ばされていた。


 頭を掌底打ちされ、先程のアリウスクラウンのように激しい脳震盪が起きる!

 

「ッ……!」


 続けてアリウスクラウンの回し蹴り、カナメは地に叩きつけられた。

 そして、カナメの顔目掛けて『炎舞』を──!


「なっ……!」


「残念」


 それを、カナメは懐に隠していた『花』で打ち消した。


「さっき一個だけ丁寧に摘んでもらって正解だったよ──『爆破』」


「ッ──!」


 反対にカナメの『爆破』がアリウスクラウンの顔面に命中、アリウスクラウンには無限回復があるが、やはり人間、一瞬意識が飛ぶ。


「今だ」

 

 カナメの言葉の次の瞬間。

 アリウスクラウンの首に、一筋の炎が横走った。


 *


「……」


「おかーさま!こいつ失礼だわ!せっかくおかーさまが愛称呼びを許可してあげたってのに無反応なんて!」


 幼いカナメは、セリウスブラウンの言葉を無視して黙りこくったままだった。

 セリウスブラウンはアリスと呼んだ少女をよしよしと撫でてから、カナメの目線に合わせる様にしゃがむ。

 カナメはそれから逃げる様に視線を逸らすが、負けじとセリウスブラウンもその方向に行き無理やり合わせた。


「……なんなんだよ」


「あー!やっと喋ってくれた。嬉しい。じゃあ名前を名乗るのもいってみよーう!」


「……」


 セリウスブラウンの陽気なオーラにカナメは顔を顰め、また黙りこくった。


「めんどくさっ!」


 アリスは舌をうぇーと出しながらそう叫ぶ。

 本人からしたら言ったの領域だが、いかんせん声がでかいため叫んでいるようにしか聞こえない。

 カナメは黙りこくったまま。

 そこでセリウスブラウンははぁとため息を吐いた。


「じゃあこの工程は飛ばしていくね。アリス、この少年の名前は何だっけ?」


「カヌメ!」


「カナメくんね。じゃあ好きな食べ物は何かな?」


「???」


 カナメの頭を無数のハテナマークが支配する。

 何だこの小芝居というより、こいつらは一体何が目的なんだという感想の方が大きいかもしれない。

 

「……何だお前ら」


 カナメはそうぶっきらぼうに言いながら、小さく吹いた。

 それを見て、セリウスブラウンは嬉しそうな顔をし、立ち上がると同時にカナメを持ち上げた。


「えっ、ちょ、何を」


「七録カナメくん、今日からきみは、私の子です」


「……は?」


「おかーさま!こんな奴いりませんっ!」


 セリウスブラウンは足をポカポカ殴るアリスを宥めると、カナメを降ろし、再度腰を降ろした。


「きみは強いね。だから、私がもっと強くしてあげる」


「……」


 カナメはセリウスブラウンの明るい雰囲気に押されながらも、どこかいいなと思いつつ、こくっと頷いた。


 それと同時に──異常だとも思った。


 政府の人間ら──闇裏菱花らは、七録菜緒を連れ去るためにここへ来た。

 そんな事、もちろんカナメと菜緒の親も反対だったわけで──


『邪魔をしないでいただきたい』


 ──菱花によって、殺された。

 

 それに怒り狂い、『者』級として覚醒したカナメが暴れる事により、菱花の護衛らを殺しまくり──


 セリウスブラウン、アリス、カナメの足元には、死体が散らばっていた。


 *


 突然の斬撃に、アリウスクラウンの首が落ちたかと思われたが、それはなくただ式神だけが崩壊していった。


「やっぱ『血花乱舞』の崩壊条件はアンタの首か。この式神『花』以外特に目立ったものないから一か八かアンタの『死』が条件だと思ったんだけど、正解だったな」


 カナメは頭を掻きながらそう言う。

 目の前のアリウスクラウンの何が起きたか分からないとちう動揺にクツクツと笑いながら、目の前──つまりアリウスクラウンの背後を指差す。


 するとそこには、先程カナメが顕現出来た式神、人型の炎──『炎武魔人』が。

 そう、炎武魔神の人の手に位置する鋭い爆炎が、背後よりアリウスクラウンの首を斬り裂いたのだ。

 アリウスクラウンは何も言わずはぁとため息を吐き、崩壊していく『世界』を眺めていた。


 そして、両者無言のまま『世界』は崩れ去り──そこにはやはり、アスファス親衛隊の隊員らが待ち構えていた。


「……やめなさい、あなたたち。私の負けよ」


 親衛隊隊員がカナメに矛先を向けようとするのを、アリウスクラウンは制した。

 隊員らに動揺が走るが、やはりアスファス直々に隊長を課せられているアリウスクラウンには絶大な信頼があるのだろう、皆すぐに黙りこくる。


「これまた意外だな。アンタならここからが本番やらなんやらとか言いそうだと思ってたんだが」


「……低く見くびらないでちょうだい。式神が壊された時点で、私はもう死んだも同然だもの。加えてあなたにはまだ『能力』に余力がある。後一回式神展開するのなんて容易いでしょ」


 カナメはそこまで聞くと、ハッと辺りを見渡した。

 すると、誰もいなかった、やはり皆誰かしらの式神の中に入っているのだろう。

 

「さて、これまたどうしたもんか」


 カナメは目の前にいるアリウスクラウンと隊員らや他の皆の事を考え、はぁとため息を吐く。

 

 取り敢えず身体中痛いため、地べたに胡座をかいて座り、宏人たちを待つ事にした。



 カナメは、アリウスクラウンに勝った。

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