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超能力という名の呪い  作者: ノーム
八章 神魔大戦・前編
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138話(神サイド) カナメvsアリウスクラウン②


「──少年、名前は何て言うのかしら?」


「……」


 少年は黙りこくったまま、顔を上げた。

 そこには、長い紅色の女性が、カナメを心配そうに見つめていた。

 いや……それには警戒の色も多少は混じっている。

 この国を守護する役割を持つ彼女が幼いカナメを警戒する理由、それは彼女の背後にいるカナメより五歳ほど年上の少女のためだろう。

 

「おかーさま!こんなガキほっといてさっさと帰りましょうよ!」


「ちょっと待ってね、アリス。少年、アリスもこう言ってる事だし、名前教えてくれないかな?」


「……」


 それでもカナメは何も言わなかった。


 一時間前──七録菜緒が政府に誘拐された、どうやら初めてただの一般人が『神人』に成ったそうで、その力は国が管理するとか何やら。


 カナメにはよく分からなかったが、とにかく、抵抗し──『爆破』の能力が覚醒、『爆破者』と成った。

 

 カナメはとにかく『爆破者』の異能を払い政府の護衛を殺しまくった、が。

 肝心の、菜緒を連れ去る闇裏菱花を取り逃した。

 いや、今となっては菱花の方が強かっただけかもしれない。


 その後──


「私はセリウスブラウン・カシャ・ミラー。セリスって呼んでね」


 今に至る。


 *


 ──式神展開『血花乱舞』。

 実はこの『世界』の無限回復を破る方法は、それだけだと、至って簡単だ。

 それは、カナメが意味もなく自分の周りを『爆破』し続け、アリウスクラウンにも『炎舞』を使わせ続ければ『能力』残量勝負になる。

 だがそれを許さないのがこの巨大な一つ目の花。

 これはこの式神の自動人形みたいなもので、頑丈な上『炎舞』も使う。

 もちろん、その『炎舞』はアリウスクラウンが放ったものではないためアリウスクラウン自信の『能力』は減らない。

 では、いくら式神を展開したとはいえまだ『能力』に余裕があるアリウスクラウンを、『爆破』が制限されているカナメが突破するのは非常に困難。

 

 だから──前述した様な、能力残量勝負にしてしまえばいい。


 そのために必要な事は、もちろん決まっている──『花』を全て散らす!


「ッ」


 カナメはアリウスクラウンから距離を取り、付近に咲いていた花に突撃。

 するとその花自信に加え、周囲に咲いていた花の眼が紅く染まった。

 加えて、背後より元からこの花の様に真っ紅な髪を靡かせる女性が──


「『炎舞』」


 四方八方より紅蓮の炎と、『爆破』を制限する『炎舞』が。

 だがカナメは足を止めない、ただ真っ直ぐに火炎放射を吐く目の前の花に向かって突き進み──炎の中に突っ込んだ。

 するとその炎が一瞬で掻き消され、カナメは花の眼を潰した。

 グチュッという不快音が響く──どれも、カナメのお得意技である『衝撃』の拳だ。

 そのままカナメは目の潰れた花を引っこ抜き、背後より今にも迫り来る爆炎らに向かってその花を突き出すと──その爆炎は霧散した。


「ッ!?」


 さすがにアリウスクラウンは動揺するが──ハッと気付く。

 この花は自律行動が出来る、その為自信に害のある攻撃、特に炎は──!


「やっぱ、花も花の『炎舞』を消せるな。次からは上手く引っこ抜こう」


 カナメはそう言ってポイッと花を捨てる。

 この花は眼が弱点かつ急所かつ心臓なのか、カナメが目を潰したため力尽きてしまった。

 

「あはは……。こんな抗い方されるの、久しぶり過ぎて忘れてたわ。さすがね」


「……?俺以外にもこんな事やった奴いるのか?」


「そうね……。残念ながら二番手よ!」


 アリウスクラウンは今度は花を摘ませない!と言うかの様に自らカナメに向かう。

 それに対応するためか、カナメもアリウスクラウンに向かって走り──その背後にある花へ──


「視線が」


 アリウスクラウンはカナメに小さく呟く。


「一度私の後ろの花を見た」


「カッ!?」


 アリウスクラウンの膝蹴りがカナメの腹を突き刺す。

 直前まで走っていた遠心力も合わさる強力な膝蹴りはカナメを気絶させるのに十分な威力──だが。


「ハッ!」


「……ッ!?うっそぉ……」


 カナメは自らの頭に『衝撃』、そして自ら奥底に沈んだ意識を引っ張り上げる。

 そしてそのまま体ごと『衝撃』し、転がりながらもアリウスクラウンから距離を取った。

 

「?」


 アリウスクラウンは腰辺りに違和感を覚え見てみると──


「……やっぱすごいわね、あなた」


 アリウスクラウンの腰辺りの服が燃えていた。

 つまり──アリウスクラウンに『爆破』が命中した。


 先程から今となっては十四本の花らは、一本以外『炎舞』の炎、そしてその一本だけ『炎舞』の炎を掻き消す能力を採用していた。

 そして、たった今、『衝撃』で己の体をぶっ飛ばし──アリウスクラウンの背後にあった花の元まで移動したカナメが目を潰した。


 それと同時にアリウスクラウンに向かって『爆破』。


「……何その神業?次からは掻き消し部隊増員ね」


「ハハッ……!また目ェ潰しちまった」


 カナメは無理やり笑いながらそう言うが……正直、限界だ。

 花の残りは十三本。

 式神展開のぶつけ合いでは負ける気はしないが、それも賭けだ。

 まず勝てるかどうか定かではないに加え、この後もある。

 自分の能力残量は直感で分かる、次式神を展開したらもう能力切れは免れない。

 

 なら──

 

 カナメは顔をパンッと叩き、何故か手もパンッと鳴らした。


「……あなた、正気?」


 カナメが構え出したのを見て、アリウスクラウンは首を傾げた。

 あの構えは先程見たから分かる──殴り合いのだ。

 ついさっきカナメは体術でアリウスクラウンに敗れたばかり、それもかなりの差で。

 アリウスクラウンが訝しんでいると、カナメは駆け出した。

 今さっきのようなフリではない、完全に視線も軌道もアリウスクラウンへ向けられている。

 

「いくぜ、お師匠様」


「来なさい、クソ弟子」


 カナメの拳がアリウスクラウンへ突き出される。

 アリウスクラウンはそれを簡単に受け流し──


「捕まえた」


 カナメの腕をガッチリと掴み、そのまま周りの花と共に『炎舞』を放つ。

 カナメは辺りを『衝撃』し、『炎舞』を掻き消す──が、アリウスクラウンは手を離さない。


「いった……。お返し!」


 アリウスクラウンはカナメの顔面に膝蹴り、カナメはその勢いを利用して『衝撃』、アリウスクラウンの手から離脱に成功した。

 カナメの鼻から多量の血が垂れる。

 それはアリウスクラウンに殴られたからだけではない、カナメは先程から脳を酷使し過ぎている。

 カナメの能力は『爆破』であり、『衝撃』ではない。

『爆破』の炎だけをわざと不発させ、その衝撃のみを生み出すという、まさに神業。

 だが、それ故に、カナメはもう限界直前で──!


「お花さんたち、やって」


 アリウスクラウンが片手を上げ、十三本の花が一斉に『炎舞』の爆炎を──発動しなかった。

 

 アリウスクラウンは血の気が引いて背後を確認した。


 すると──全ての花が散っていた……!


「……式神顕現。式神展開よりもコストを最小限に抑えられる、式神展開の能力を引き継いだ自動人形……ね。あなた、そんな高等技術出来たの?」


「いーや、何回も練習したけど無理だったよ──だけど。さっき出来た。救われたね、自分の才能に」


「……はぁ、これだから天才は嫌いなのよ」


「アンタも十分だと思うけどな」


 カナメははははと笑った後、真剣な表情となり戦闘態勢を取る。

 これで、やっと邪魔者はいなくなり──これで、やっとカナメと式神vs自動回復付きのアリウスクラウン。

 カナメの式神──人型の炎は、まるで役目を終えたと言うように霧散した。


「……これでも尚、劣勢っていう自覚はあるのよね?」


「ああもちろん。これ、俺どうやったら勝てる?マジで」


 カナメは苦笑いをしながら、アリウスクラウンに拳を──!

 

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