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超能力という名の呪い  作者: ノーム
八章 神魔大戦・前編
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137話(神サイド) カナメvsアリウスクラウン①


 ──それぞれが対峙する中、突然下の階が『爆破』した。


「ッ!?」


「ハハハ!おもしろい!」


 一同が集まっていたこのアパートはそれで限界を迎えたのか、崩壊し、下にいたアスファス親衛隊の隊員を数人巻き込みながら倒壊した。

 

 そして──宏人たちは、アスファス親衛隊のおよそ五百人に、それぞれ包囲された。

 そんな中、ニーラグラが片手を上げて。


「ちょっと、戦いやすくしよう」


 ニーラグラの手から『ホリズンブレイク』が散弾され、親衛隊の隊員達を退けさせた。


「あなたたち、手を出すのは私たちが危険に晒された時にしなさい。それぞれ配置に付き、ここぞという時に畳み掛けなさい!」


 アリウスクラウンがそう叫ぶと、親衛隊の隊員らは一瞬で配置につく。

 それぞれ、宏人たちにほぼ均等ずつ。

 宏人──否、アルドノイズはニーラグラを見て舌打ちし、小さく笑った。


「……宏人くん?」


 それを城坂が訝しそうに見つめる。


「ふん。ニーラグラにばかりいい仕事をさせても平等じゃなかろう。だから今度はオレだ──『バースホーシャ』」


「「「!?」」」


 アルドノイズがニーラグラと同じように天に向かって『バースホーシャ』を放つと、敵方の各々が驚愕に目を見開き、すぐさま最大限の戦闘態勢を取った。

 爆炎の奔流が天高く飛び、余波の熱だけで服の端が燃えていく──アルドノイズ限定の『カミノミワザ』。

 それを見て、アリウスクラウンはあははと小さく苦笑する。


「向井宏人、あなたは──アルドノイズなの?」


「さあな、いいだろう別に。ここでお前たちはオレの炎に焼かれるのだから──」


 落ちてきた『バースホーシャ』が地面を、逃げ遅れた親衛隊を巻き込むと同時に──戦いは始まった。


 *


 各々が戦い始めた中──カナメとアリウスクラウンの所だけ静寂であった。

 お互い先に出たのは『能力』でなく、口だった。


「……あなたは頭がおかしいの?それともただのバカなの?教えてくれると助かるんだけど」


「は?なんで俺がアンタを警戒しなきゃいけねぇんだよ」


 カナメの返答にアリウスクラウンははぁとため息を吐き頭を掻いた。


「幸太郎倒したから調子に乗ってるなら今すぐお仲間とバトンタッチしなさい。あなたは強いけれど、『能力』に相性は付き物よ」


「へー。意外だな、アンタが俺を心配するなんて」


「これでも意外とあなたに愛着があったのよ。一緒に戦ったりしたし、イケメンだし」


「じゃあなんでこの前殺そうとしたんだよ。アンタがアスファスに付く理由はもうないはずだろ。狂弥死んだし」


「バカね。吐夢狂弥みたいな理不尽の極みの塊のような『能力』持ってる奴がそうそう死ぬわけないでしょ。仮に死んでるとしても何か莫大なの残してるに決まってる。なにせ時間を操るんだから。だからアスファスの後ろ盾は必要なの、お分かり?」


「いーや、全っ然分かんねーな。──かつて仲間を大量虐殺された奴の下に付くなんて」


「……」


 カナメの言葉に、アリウスクラウンは黙り込んだ。

 何か言おうとして、でも言わなくて。

 昔同僚だったから、カナメはアリウスクラウンの過去を知っている。

 だからこそ、知った上で納得出来ない。

 アリウスクラウンはそんなカナメを数秒見つめ──


「やっぱ、こうなるのね」


「当たり前だろ、ここは戦場だ──『爆破』」


 アリウスクラウン目掛けてカナメの『爆破』が発動。

 だがアリウスクラウンには何の被害もなく──!


「だから私は、あなたの天敵よ」


 アリウスクラウンの『能力』──『炎舞』。

 炎を身に纏る踊り子の名前が授けられたその『能力』は、炎の遠距離操作。

 その炎に条件はなく、どんな規模でも──『者』級の『能力』でも、操る事が出来る超級異能。

 アリウスクラウンの言った通り、まさにカナメの天敵、だがカナメの顔は自信に満ちていた。

 そんなカナメを訝しむアリウスクラウンに、カナメは一瞬で肉薄した。


「ッ!?」


 カナメの拳を受け止めたアリウスクラウンの手が悲鳴を上げる。

 そう、カナメは拳に『爆破』の爆風のみを付与し、それで以って敵を突き飛ばすという戦闘スタイルを取っていた。

 普段なら敵を一瞬で葬り去る事の出来る『爆破』が通用しない際の対処法のため、カナメが最近取り入れる事が出来た新しい戦い方。

 実はスピードが付くよう肘当たりにも付与しており、『爆破』は使用者のカナメ自信をも巻き込むため、制御が非常に困難、だがカナメはそれをやり遂げていた。


「ッ──!あなたの脳こそ爆破するんじゃない?」


「そんときゃそんときでしょ!」


 カナメはアリウスクラウンに休む間を与えず拳を連打し──思いっきり拳を振り上げたところで。


「──私が、ただボーッと殴られているだけだとほんとに思ったてたわけ?」


 アリウスクラウンは、咳き込みながら両手を合わせた──刹那。


 『世界』が構築されていく──!


「アンタらは外で待機!」


「「「「ハッ!」」」」


 アリウスクラウンはそれだけ親衛隊隊員たちに伝えると、一呼吸置いて。


「式神展開『血花乱舞』」


 それと同時に『世界』──『血花乱舞』は完成する。

 至る所に、大きな血色の花が咲いているこの『世界』は鉄の匂いが漂り、なんと花の中心には巨大な一つ目が、いくつもカナメを睨んでいた。

 カナメは本日既に幸太郎との戦いで式神を展開しているため敢えて展開を対抗しなかった、『能力』が枯渇して何もできないより、アリウスクラウンの式神内で『爆破』を振るいまくる方が得策だと思ったからだ。


 それに何より、カナメはアリウスクラウンの式神の能力を知っている──この式神内では、アリウスクラウンは死なない!


 まあ、負傷の代わりに『能力』を消費するというものだが、深さによって消費量も変わる。

 ぶっちゃけ普通に殴ってもほぼ消費せず回復するのだ。

 だがこの『世界』を展開するだけで莫大な『能力』を食う。

 その代用か──先程述べた巨大な一つ目の花も、『炎舞』を使える……!


「やっぱカナメ、幸太郎との戦いで『能力』カツカツ?」


「いんや、ただ今戦争中でね、俺っていう戦力は大事なわけ。だからアンタとの戦いでわざわざ使い切っちゃいかんのよ」


「言ってくれるじゃない──お花さんたち」


 アリウスクラウンが片手を上げると、カナメの周りの『花』の眼が赤く染まり──『炎舞』。


「ッ!?」


 およそ15本ある花はご丁寧にカナメの『爆破』も掻き消しており、火炎放射がカナメを焼き尽くす。

 が、カナメはお得意の『衝撃』で霧散させる。


「実はな、この衝撃『能力』の減りがゼロなんだ。本来俺の『爆破』は火を中心に『能力』使ってるらしいから、その衝撃だけだとなんとタダってわけで」


「へぇー!ほんっとうに妬ましいくらい強い能力ね!」


 カナメは花の『炎舞』を払った後、一瞬でアリウスクラウンに肉薄する。

 だがそんなカナメにアリウスクラウンは不敵に微笑み──カナメの拳を腹に受けた。

 カナメ本来の力と、『爆破』の衝撃の二重炸裂、一般人がまともに受けたら内臓が傷付くレベルの威力。

 だがこの『世界』ではそんなものそれなりに『能力』を消費すれば無かった事に出来るのであり──!


「イッ!?」


 カナメは気が付くと頭から落ちていた。

 咄嗟に態勢を立て直し構えるが──次の瞬間にはアリウスクラウンの拳が顔面に突き刺さる。

 カナメは小さく呻きながら地を転がり、アリウスクラウンとの間に『衝撃』を連発して追撃を免れた。

 どくどくと激しく痛む顔を抑えながら、カナメはクククと笑う。


「やっぱアンタつえーよ!対悪魔自衛隊式格闘術だっけ?教わったのに全然覚えてねーわ」


「でしょうね、あなたの戦い方は吐夢狂弥みたいに『能力』を応用した独特の、しかもそれすら未熟な戦闘術だもの」


 そこでアリウスクラウンは小さくため息を吐いて、言った。


「あなたの師匠だった身として、少し悲しいわね」

 

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