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超能力という名の呪い  作者: ノーム
八章 神魔大戦・前編
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133話(神サイド) Chain Of Death


 宏人が、セバスに頼んだ事、それは──


「コット・スフォッファムを探してほしい」


 宏人はセバスに向けて、力強くそう言った。

 セバスは少し逡巡した後、宏人を睨む。


「……それは、誰の願いだ?」


「……誰の?」


 宏人が首を傾げると、セバスは小さくため息を吐いた。


「お前か、アルドノイズ様か。どちらの願いだと聞いている──」


「──両方」


 それに対し、宏人は間髪入れずそう答えた。

 少し、セバスが気圧された気がする。

 宏人は、そのまま続けた。


「やれるな?セバス・ブレスレット」


 *


 アスファスから背を向けた瞬間──創也とアリウスクラウンは駆け出して来た。


「……もうかよッ!」


「戦争はもう始まっているんだ、何を気遣う必要がある?」


 アルドノイズの姿をした宏人に、創也の『魔王剣』が──刹那、後ろにグイッと引っ張られる。

 凪の姿をしたニーラグラだ。

 ニーラグラはそのまま足元に『流水群』を発動し、宏人と瑠璃と共に離脱した。


「……あれ追う?」


 アリウスクラウンは気怠そうにアスファスに聞いた。

 それにアスファスは少し笑い、手を横に振る。


「いい。アレは──私の獲物だからな」


 *


 アスファスが戦争場所にしていした街──守龍街は、大混乱に堕ちていた。

 なにせ、能力者集団およそ一千人が、街を徘徊し、『身体能力上昇』系統以外の能力者を片っ端から殺しているのである。

 まさに地獄。

 阿鼻叫喚の渦に巻き込まれているこの街は、もう機能しないだろう。

 何百もの人間がこの街から脱出を試みたが──


「逃げたい?ほな地獄いきな」


 八つある入り口付近には、一番隊から八番隊の副リーダーが二名が滞在し、逃げようとする者を問題無用で殺していた。

 もちろん今の声は── 革緑茅。

 この街の一番大きな出入り口である門には、六番隊副リーダーが派遣されていた。

 ここを茅と星哉が任されたのには、ちゃんとした理由がある。

 それは──


「お前さんで何人目や……ほい、死ね」


 そう、革緑茅の、人を殺す事の一才の抵抗の無さ。

 それが、ここには適任だったのである。

 

「……ッ!」


 だが、この場を任されたのは茅だけではない──星哉もだ。

 星哉は普通の倫理観に加え、正義感が強い、そんな星哉にとって、この光景は。


「うおおおおおおおおお!」


 ──到底、赦せるものではなかった。


「──は?」


 茅の首が、落ちた。


 星哉は、今自分がした事の意味が分からなかった。

 ただ、これだけは分かる。

 自分はたった今、悪になった──


 ──この世界に、正義などなかった!


「アアアアアアアアァァァァァァ!」


 そのまま星哉は暴走し、自ら街の人々を殺していった。


 ──それを、流音は見ていた。


「や、やばいっす……」


 流音はガタガタ震えながら今の光景を見ていた。

 ここを見ていたのはただのちょっとした偶然だった。

 守龍街は見ての通り今大変ヤバい状況にある、アスファスとアルドノイズの戦争が始まってから、人の命がセミの寿命より短いくらいだ。

 変な少女にボコボコにされて気絶し、目が覚めたらこんな状況である、何も考えずひたすら逃げるしかない。

 そしてこの街の一番大きな門に辿り着くと、流音と同じ様に逃げようとした人々の首がらバッサバッサと飛んでいた……。

 無言でUターンしようとした時、ふとこんな会話が聞こえてきたのである。


『宏人様はきっと納得していません!』


 ──宏人。


 向井宏人。

 この前流音をぶん殴り、『Gottmord』という組織に勧誘した少年の名前。

 ……流音を嵌めた疑いもある(ダクネスの件)。


 そして、そのまま門番の少年と少女の会話を聞いていたら──現在の状況にある。


 そう、少女の首がぶっ飛んだのである……。


 そう、少年が片っ端から民間人を殺しまくっているのである……!


「──て、逃げるっすううううううううう!」


 流音は全力ダッシュ──しようとして、転んだ。


「あっ……」


 背後から足音が。


 ──やばい……しんだわこれ。


 流音はそう思いながら、おそるおそる背後を振り返って……。


「……」


 そこには、流音が絶対に敵わない強者が──


 流音と星哉の目があった。

 流音の頭の中に高速でこの前の出来事が過ぎった──


「……って、お前かーい!」


 そう──この前、宏人と戦う前に数十秒で流音に負けた少年、星哉。

 それが分かった瞬間、流音はナイフを手に持てるだけ持ち、投げ、ぶん殴ると──星哉は気絶した。


「……コレ、どうすりゃいいんでしょ……」


 流音は星哉を見下ろし、そう呟いた……。


 *


 宏人は吐き気を覚えながら、アスファス親衛隊の隊員の首を刎ねた。

 死体は『変化』して砂にし、姿を隠しながら窓から撒いた。

 サラサラと宙に砂が舞う、かつてコレが人だったと考えるだけで、自分の能力がどれだけの残虐性を持っているのか理解出来る。

 

「……他対象の『変化』、上手く使えるようになったの……?」


「いや、今だってやってみただけだ。そしたら最高した。最高して、しまった……」


 今、宏人たちは守龍街のボロアパートの一室に来ていた。

 そこで運悪く親衛隊の隊員と鉢合わせしてしまい、戦闘となって今に至る。

 やはり、人を殺すと自分の心も殺されていく。

 慣れたものではない、慣れていいものでもない。


「では、やるべき事を、さっさとしてしまいましょう」


「ああ、まずは民間人の救出だ。八つある門を開放する」


 宏人はそう言い、窓から付近にあった門を見た。

 そこには案の定、二人の親衛隊副幹部が。

 あれは……確か五番隊の。

 宏人はホッと胸を撫で下ろす。

 これで知り合いだったら宏人の心は持たない。


「うん。じゃあ私が一から四番隊、宏人くんが五から……あ」


 そこまで言って、ニーラグラは気付いた。

 そう、宏人はかつて、六番隊の隊長だったのだ。

 ニーラグラは己の迂闊さを恨みながら訂正しようとするが、それを言う前に宏人が口を開いた。


「問題ない、というかやらせてくれ。あいつらは……茅と星哉は、俺が何とかする」


「……本当に?あなたからはロクに攻撃も出来ず殺されるくらいしか出来ない未来しか見えてこないのだけれど」


「ッ!瑠璃ちゃん!」


「本当の事でしょ。今は強がるべきじゃない、その強がりであなたの命──引いては仲間の命に危険が訪れる可能性があるという事をきちんと理解しなさい」


 瑠璃がそう言うと、ニーラグラは押し黙る。


 瑠璃は一才間違っていない、宏人も先程の発言の数割かは強がりの部分はある、だけど──


 瑠璃はニーラグラを静かに見た後、続けた。


「その上で聞くわ、宏人。あなたは、それでも六番隊を倒せる?いえ──殺せる?」


「……」


 宏人は瑠璃の強調された最後の言葉に逡巡する。

 茅と星哉を殺す。

 それだけだと、どうしても出来ない。

 だけど──その二人を殺さなければ、凪、カナメ、ニーラグラ、祐雅、瑠璃や飛鳥、クンネル、ナンチャン──凌駕が死ぬのならば。


「俺は──殺せる」


 宏人は、誰だって殺せる。

 殺して、みせる。


「……そう、なら決まりね」


 瑠璃のその一言で、宏人のすべき事は決まった。


 ──五番隊、六番隊、七番隊、八番隊の隊員を──


「殺す」


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