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超能力という名の呪い  作者: ノーム
八章 神魔大戦・前編
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132話(神サイド) War


『死神』セバス・ブレスレットを仲間にするという佳境を乗り越えた宏人だったが、現在もまた生きるか死ぬかの狭間にあった。

 

「ほんっとうに!申し訳ございませんでしたッ……」


 宏人は地面に頭を擦り付けながら、凪とカナメと瑠璃に土下座した。

 3人の、というかカナメの冷ややかな目が宏人を視殺する……。

 セバスとの一件があった後、宏人は元『Gottmord』から通信機材を使い凪らとコンタクトを取ったのだ。

 そして、凪が用意したという隠れ家で再会し、今に至るわけなのだが……。


「あの時俺がどんだけ心配したか分かってんのか?」


「……ああ。本当に、すまん」


 そこで宏人は立ち上がり、頭を下ろした。

 やはり、土下座よりも、こちらの方が適している。

 カナメははぁーとため息を吐いて、頭を掻いた。


「……まあ、無事で何よりだ」


「カナメ……!」


 宏人がパアァと顔を輝かせたところで、凪がゴホンと咳き込んだ。

 凪が場を整える際によくする咳だ。

 ちょっとした懐かしさを覚える宏人に、凪は──


「宏人くーん!わた──俺も、宏人くんが無事で何よりだぜ」


「……凪???」


 困惑する宏人に、ため息を吐きながら瑠璃が近づいてきた。

 そんな瑠璃に、宏人は助けを求めるようにバッと振り向く。


「ニーラグラ!凪が、凪がぁ……!」


「落ち着きなさい宏人。ニーラグラ、いや神の特性忘れたの?」


「……ニーラグラ?違うな、お前瑠璃か!という事は……」


「そうよ、ニーラグラが私から凪に移ったの」


 そう聞いて、宏人は凪をまじまじと見た。

 そこでやっと気付いた──凪の上半身が元に戻っている。

 ちゃんと、左腕がある。

 そこに宏人か気付いたと分かってか、凪──ニーラグラはふふんと鼻を鳴らした。


「神を舐めないでよね!なんと『器』にした人の身体を修復する事も可能なのです!」


「すげー!……アレ?じゃあもう凪に戻っていいんじゃ……」


「ギクッ!」


「……ギク?」


 宏人の発言に、ニーラグラが嫌なところを突かれたとでも言うように顔を伏せた。


「……大きく見せちゃってごめんね。神の『器』としての回復は正確には回復じゃなくて一時的な処置なんだ。無理やり『器』としての役割を果たすために神の力的なもので生やしてるだけで、私が抜けると凪くんの左腕、腐っちゃうんだよ」


「……そうか。なら、しょうがないか」


 雰囲気が暗くなり、沈黙が訪れる。

 そんな空気を払うように瑠璃が小さく手を叩き、皆の注目を集めた。


「だから、凪は今できる最善の策を取った。確かに指揮官としても優秀な凪という人材を失うのは痛いけど、負傷を負っている凪は言ってしまえば足手まといだったの。……私が言えた事でもないのだけれど」


 そう、瑠璃の能力は『読心』。

 対象の思考の一部を読み取るといった、普段はともかく今回の戦争では役に立てる様子はない。

 

「だから凪は戦力増幅に手を打った。私を指揮官にして、凪の身体をニーラグラに渡す。するとニーラグラは自身の神の力に加えて凪の『模倣者』も使用出来る。私も最善だと思うわ。一応、凪とこれからについて話し合いはしたし、私も指揮官としては申し分ないと自負しているからね」


「……そうか、で?凪はこれからどうしたら良いと言っていた?」


「宏人、あなたは──」


「──やあ、またまた来ちゃった聞いちゃった」


「──え?」


 ──瞬間、ニーラグラがぶっ飛んだ。

 ニーラグラは部屋を突き破って外に叩きつけられた。

 各々戦闘態勢を取る中、カナメだけ皆の前で横に手を振った。

 

「……何だよ」


「下がれって意味だ。──こいつとは、いい加減俺が決着をつける」


 カナメはそう言い、宏人たちに手をしっしと払った。

 そして、前を見据える──そこにいたのは、やはり七音字幸太郎。

 最強の身体能力を持つ超能力者──『身体者』。

 幸太郎はニヤッと笑い、無言で畳み掛ける様に瑠璃に回し蹴りを──


「──幸太。何がお前を変えた?」


「さっすがカナメ。動体視力エグいね」


 瑠璃まであと一歩のところで、幸太の蹴りをカナメが止めた。

 カナメはそのまま後ろに下がり、いつの間にか戻って来ていたニーラグラに話しかける。


「ニーラグラ。連れていけ」


「え?でもカナメが……」


「頼む。別に俺を置いて先に行けとか言ってるわけじゃない。ただただ俺が──幸太を、七音字幸太郎と、決着をつけたい」


「……分かった、場所は分かるね?」


「ああ」


 それだけ言うと、ニーラグラは走り出し、宏人と瑠璃の手を握った。

 宏人は振り払ってカナメと共に戦おうとしたが──ここで、さっきの瑠璃の言葉が頭をよぎった。


 ──足手まとい。


 この間のエラメスに何も出来なかったのが影響しているのか、先日のセバスの件が関係しているのか分からないが……とにかく、自信がなかった。


 そこからは、宏人はされるがままニーラグラに先導される。

 幸太郎はニーラグラらが逃げる事に気付いたのか、駆け出すが──


「お前の相手は俺だろ──幸太郎」


 そして、宏人たちは『流水群』に乗って逃げた。


「──向井宏人。お前、今度こそバレたらアスファスに殺されるぜ?」


 ──宏人は、何も出来なかった。


 *


 無事にニーラグラにより幸太郎から逃げ切った宏人は、アルドノイズが指示した場所へと赴いていた。

 どうやら、そこにアスファスがいるらしい。

 宏人はアルドノイズに『変化』し、道を踏み締め──いた。

 

 神の一柱、『造神』アスファス。


 アスファスは宏人──アルドノイズを見つけると、フッと微笑んだ。

 アルドノイズの後ろを、ニーラグラ──凪と瑠璃が付いてくる。

 アスファスの背後にも二人、ちょうど数は揃った。

 ──太刀花創也と、アリウスクラウン・カシャ・ミラー。


 アルドノイズは、凪と瑠璃より一歩先に出た。


 アスファスは、創也とアリウスクラウンより一歩先に出た。


 この戦争で、宏人がすべき事は三つ。


 アスファスの幹部──『変化』の向井宏人として、アルドノイズサイドの敵を殺す。


『Gottmord』の構成員として、アスファスサイドの敵を殲滅する。


 アルドノイズとして──アスファスを倒す。


「──久しぶりだな、アルドノイズ」


 アルドノイズの目の前には──アスファス。


「……ああ」


 そして、アルドノイズ──宏人はそう言い、己の陣地に戻っていった。 

 アスファスもそれを笑いながら見送る。

 これはアスファスとアルドノイズの戦争だ、どちらかの駒が全て壊れた時、王の首を狙える。


「……とかアスファスが考えていてくれそうでよかった……」


 じゃなきゃ宏人が疲労で死にかねない。

 だが、宏人はアスファスに勝てるのだろうかという疑問が頭の中を支配してくる。

 アルドノイズ曰く、アスファスとの戦いは全力を投じてくれるらしい、そんなアルドノイズの本気に、宏人の微力。

 これなら、もしかしたら──ついに。


「アスファスを殺せる」


 そして、戦争は始まった──













 ────


 アスファスサイド


 ・アスファス 『清き明き魔水の波動』


 ・エラメス(不在) 『随伴者』


 ・ダクネス 『旧世界』


 ・太刀花創也 『勇者剣』、『魔眼』


 ・七音字幸太郎 『身体者』


 ・アリウスクラウン・カシャ・ミラー 『炎舞』


 ・アトミック・ピークポイント 『反転』


 ・城坂墓 『支配』


 ・カミルド・ミグナス 『眷属』


 ・向井宏人? 『変化』


 ・一番隊から八番隊──約一千人の能力者


 ────


 アルドノイズサイド


 ・アルドノイズ(向井宏人) 『変化』、『爆炎と聖水の邂逅』


 ・新野凪 (ニーラグラ) 『模倣者』、『地平線の破壊方程式』


 ・七録カナメ 『爆破者』


 ・池井瑠璃 『読心』


 ・クンネル 『吸収』


 ・北岡飛鳥 『再生』


 ・黒夜(不在) 『魔弾』


 ・海野維祐雅(不在) 『──』


 ・吐夢狂弥──死亡? 『時空支配』


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