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超能力という名の呪い  作者: ノーム
八章 神魔大戦・前編
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131話(神サイド) Unlucky


 ──剣と鎌がぶつかり合う。

 

 ニューマンが振るう『死神の鎌』は超凶悪な武器で、その効果はなんと『蘇生』不可。

 まあ傷修復不可よりは現実味がなく気楽ではあるが、今の時代『能力』によって何でも応用が効く中、それを絶対不可にしてくる能力は正に死神。

 中途半端な死を許さず、徹底的に殺してくる。

 しかもこれ、ただの鎌ではない。

 その鋭利な刃は何でも容易く斬れる上、刃こぼれなど無縁の化物。

 何より普通誰も鎌なんて使わない、ここで宏人の適応力が試される。


「……宏人」


 互いの『生』にどちらが先に手が届くか争っている最中、ニューマンが呟く。


「確かに宏人は強い、そして僕もこの一年でそれなりに強くなった。でもきみには届かない……だから、ズルをさせてもらう」


「……いいぜ、こいよ」


「ああ──『強運』」


 ──刹那。

 ニューマンの鎌が風圧で少し曲がり、宏人の頬を深く抉った。


「ッ!?」


 さすがの宏人も下がるが、ニューマンはそれを追いかけ追撃。

 だが宏人も負けじとカウンター、ニューマンのバランスが崩れる。

 ブラフか、ガチか。

 宏人は安全を考慮し死神の鎌に狙いを定め、命中。

 鎌は大きな金属音と共に地面に転がり、ニューマンをその身一つへ。


「もらった──」


 宏人はそのままニューマンの首へ『白龍』を。

『強運』を考慮し、斬撃を放つ後の動作も考慮した、無慈悲な一撃がニューマンに命中、だが──


「は?──ガッ!?」


 確かにニューマンの首に王手をかけた宏人だったが、なぜかニューマンの首は一切斬れず、ニューマンからカウンターの拳を食う。

 見事鳩尾に命中、宏人は疼くまるが、すぐさま体制を整える。

 だがその時にはもう、ニューマンの手には『死神の鎌』が──!


「……そんな馬鹿な」


 宏人が神剣『白龍』を確認してみると、見事な刃こぼれ、これでは何も斬れない程だった。

 片頬が引き攣るが、気を引き締め直す。

 宏人は刃こぼれした『白龍』を普通の右手に戻した。

 

「……オイ死神、ニューマンが危うくなったら助けてくれるか?」


「もう勝つ気でいるのか、おもしろいな。いいだろう」


「……宏人、さすがにそれはムカつくな」


 ニューマンはそう吐き捨て身構えるが、宏人はその身一つで手を合わせる──これは。


「──式神展開『変化自在』」


「ッ!?」


 宏人が両手を突き合わすと同時、世界が変貌し、『世界』を作り上げていく──!

 やがて一瞬でその『世界』──『変化自在』の構築は終わり、出来上がったのは不均等に関係性が無いものばかりが漂う、創造の世界。

 宏人はそこで、右手を『白龍』に、左手を『黒龍』……のツメに。

 この間エラメスと戦った際の戦闘で負傷した黒龍のツメの破片を飲み込んでおいたのだ、

 実際に己が口に含んだ事のあるモノに変化出来る異能──『変化』。

 どうやらそれは宏人の『器』としての性能は関係ないらしく、アルドノイズへ『変化』する事は出来ない、やはり口に含まないといけない。

 だが──これでいい。


 宏人は駆け出し、一瞬でニューマンの喉元にツメを。

 

「ッ!」


 一瞬遅れてニューマンはそれに対応、宏人のツメを鎌で切り裂き割る──そのツメから、銃が生えてくる。

 連発。


「うっそでしょッ……」


 ニューマンは必死に身体を捻り、迫る銃弾を悉く回避する。

 それでニューマンのバランスが崩れるのを宏人は見逃さない、そのまま一切打ち付けてない『白龍』をニューマンの首へ──ニューマンは尻餅を付いて回避。

 ニューマンは一瞬で立ち上がり、宏人の腹を斬り裂く──宏人は『悪魔化』を腹に集中させると同時にバックステップ。

 腹は斬られたが、擦り傷程度だった。


「……どうすりゃいいんじゃ」


 宏人は息を整えながら、そう愚痴を呟く。

 実際、先程から宏人は何度も人間が対応できない領域の剣をニューマンに向けているが、悉く回避されてしまう。


 まず、あんな至近距離での銃弾六発を回避するな……。


「……やっぱ、全部宏人の方が強いね、運、以外」


「……お前の反則級の運の良さに敵う奴なんぞいてたまるか」


 宏人は引き攣るを通り越して苦笑いをしながらそう言う。


 ……本当に、心からそう思った。


 そこで、ニューマンはふっと暗い顔をする。


「……だけど、ここまでしても、宏人にとって僕は大した事のない存在なんだね」


「……ん?」


「宏人はアルドノイズを取り込んだんだよね。なら、普通に出せるもんね……」


「ん?ちょっと待て、何をだ?」


「バースホーシャとか、黒龍とか」


 ニューマンはそう言い、両手を合わせた。

 その構えは──


「……マジかよ」


 もちろんバースホーシャも黒龍もアルドノイズの許しがない限り使えない宏人は、片頬を引き攣らせるしかなかった。


「式神展開『極幸運島』」


 宏人の『世界』を、ニューマンの『世界』が塗りつぶしていく。

 

「ッ」


 宏人も慌てて『世界』に力を込める。

 宏人とニューマンの『世界』同士がぶつかり合う。

 ここでニューマンの『世界』に入る事になればもう勝ち筋が消えるかもしれない──なにせ『強運』の式神だ、とんでもなく運がいいのだろう。

 今度は首を斬っても治るとかいう運に出くわすかもしれない、まっぴらごめんだ。

 あり得る可能性が十分あり過ぎる。

 だからこそ、ここで『世界』を展開させる訳にはいかない。

『変化自在』に、力を込めまくる──


 ──すると、呆気なく『極幸運島』が消滅した。


「……え?」


「──僕のことが、疎かになってる」


 ──殺気。

 宏人の背後から、殺気が。

 目の前にいたはずのニューマンがいない、『世界』を捨てて、背後に回った……?


 だから思わず、やってしまった。


 最初からしてはいけないと心に誓っていた事を。


 加減が出来ない、理不尽な存在への。


「──『変化』」


 宏人の身体の構造が、高速で書き換えられていき──やがて。


「……『黒龍』」


 セバスはボソッと呟き、目の前の存在──黒龍を見つめた。

 

 付近にいたニューマンは──黒龍に押し潰された。


 *


「──ニューマンッ……!」


 宏人が黒龍に戻った時には、当たり前だが、遅かった。

 だがさすが『強運』といったところか、ニューマンは足が潰されていただけだった。


「……宏人。やっぱ、きみは強いね……」


 ニューマンはそう言い、微笑んだ。

 膝下からの血が止まらない。


「『変化』!」


 宏人はニューマンの膝下に触りそう叫ぶが、やはり効果はない。


 この前のエラメスとの戦いの時と同様に、『変化』は肝心な部分で役に立たないッ……!

 

 宏人はそれでも『変化』と叫び続ける。

 今この場に回復系統の能力者はいない、ニューマンを救えるのは、無理やり形を書き換える異能──『変化』しか、宏人しかいない!


「お前の勝ちだ、向井宏人」


 すると、宏人の背後までセバスが来た。


 思わず知っている!と叫びたくなるが、今はそんな場合ではない、少しでも多く『変化』を唱え、一刻も早くニューマンを助け──


「──は?」


 ──ニューマンの頭が、飛んだ。


 一瞬、いや今も訳が分からない。

 だが、脳が訴えてくる、犯人が誰か、知らせてくる。

 そんな訳ないと自分に言い聞かせても、やはり誰がやったのか簡単にそれは知らせてくる。


 ニューマンを斬ったのは──鎌だった。


『死神』の、鎌だった。


「死神イイイイイイイイ!」


 宏人は一瞬で背後にいるセバスに向かい、『変化』を──


「言ったろう、お前じゃ俺に勝てない」


 セバスは、伸ばした宏人の腕を、鎌で切り裂いた。

 

「がぁッ!?」


 宏人は蹲り、『変化』によって手を生やす。

 だがその時には、首に鎌が添えられていた。

 

「一年、『強運』を見ていて思ったんだ──『強運』は危険過ぎる。あれは一種の化物だ、なにさ思い通りに事を運べるのだからな」


「……だからって殺す必要はねぇだろッ……!」


「『強運』が──」


「──ニューマンだ。ニューマン、エーデンだ」


 訴える様な宏人の鋭い目に、セバスは言葉を止める。

 やがてセバスはため息し、続けた。


「……ニューマンが強くなり、敵に回った時の事を考えてみろ。おそらく、かの『神人』らと近いほどのポテンシャルがあるぞ」


「ニューマンは敵になんねぇよ。そんな事も一年一緒にいて分かんなかったのか?」


「……ともかく、今はやるべき事があるだろ。行くぞ」


 そう言い、セバスは鎌を引っ込み、宏人を無理やり立ち上がらせた。

 宏人は身体中に響く痛みを堪えながら、セバスに言った。


「ニューマンを殺した事は許さない。だが……この戦争には協力してもらう」


「……いいだろう。この戦争は来るべくして来たものだからな」


 セバスはふっと笑い──こう続けた。


「だから、この戦争が終わったら、アルドノイズ様を救出し──お前を殺す。向井宏人」


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