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超能力という名の呪い  作者: ノーム
七章 開戦前の朝ぼらけ編
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128話(神サイド) 撃滅


「──ンで、どうするよ?」


 カナメは凪とニーラグラを小脇に抱えながら、『爆破』を上手く足元で発動して空を飛びながらそう言う。

 占拠された『Gottmord』より脱出した三人は、その後守龍街より北側にある神地町へと目的地を定めた。

 本来なら歩いて二日の距離だが、カナメによって途中休憩を挟んでも数時間に短縮する事が可能だ。


「……」


「……どうした凪?」


「カナメカナメ!凪くん白目剥いてるよぉー!そろそろ休憩しないと!」


 高度数百メートル上で猛スピードで移動するには、まあ、当たり前だが人間は辛い。

 『爆破者』で『爆破』への耐性があるカナメと、神であるニーラグラに比べたら、『者』級であれど凪も人間だった。


「またかよ……いや、もう着くぜ」


 カナメはそう言い、更にスピードを加速させた。


「カナメーッ!凪くんの口から黄色い汚物が!」


「マジかよ!?頑張れ、耐えろ凪!」


 *


 神地町に着いてから約2時間後、やっと凪が起きた。

 

「……ここは?」


「神地町だよー。カナメくんすごくてね、もう数時間前には着いてたよ!」


「……そうか、早いな。助かる」


 凪はそう言い、ふらふらと立ち上がった。

 左上半身がなくなって久しいが、やはりまだ平衡感覚が掴めず歩くのですらやっとだ。

 

「ここは神地の奥の方にあった安いホテル。しかも後払い制。ンで、俺らは手持ちがないわけで」


「落ち着いたらばっくれよーう!」


「……まあいい。目的に支障はない。……多分」


「そして?ここを選んだ理由はなんだ?」


 カナメは凪にそう聞き、ポットから三人分お茶を注いだ。

 どうやら本気で落ち着いてからばっくれるらしい。

 ここは三階だが、まあカナメの『爆破』があれば余裕だろう。

 凪はコホンと咳払いし、話を始めた。


「ここを選んだ理由は、毎月何回かここに『神仰教』の幹部が全員集まる会議があるからだ」


 カナメにお茶を渡され、三人て一度飲む。

 おいしい、じゃなくて。


「そこを叩く」


「……んー、何て言うのかな」


 ニーラグラはそこで唸り、顎に手を置いて考える。

 そしてパッと思いついたように目を輝かせ言った。


「じゃあ何で今までほったらかしにしてたのさ!そんなそこを叩く──!とか簡単に言えるくらいならさっさとしちゃえばよかったじゃん!」

 

「ぐぅっ……!」


「お、初めてニーラグラに口籠もっている凪見た。おもしろ」


 ニーラグラはニヤニヤし、カナメはあははと笑う、だから凪はさっきよりも盛大に咳払いをする。


「とにかく、そういう訳だ。だがこれは全員でやる訳じゃない」


「あ?何でだよ」


「いや、本来なら全員でやりたいところだ。いくら非戦闘員の組織でも幹部は上級能力者。舐められはしない。だが、今の状況はそいつらと比べればもっと最悪だ」


「そうだね……。祐雅くんとアングルくんと離れ離れになっちゃったし、通信機材忘れちゃったから宏人くんとも連絡取れないし……」


 ニーラグラのそんな小さな呟きを、凪は聞き逃さなかった。


「……通信機材を忘れた?」


「うん。それが、どうし……た、かなぁ……?」


「……カナメ。分かるな?」


「ああ、分かってる。まぁためんどくせぇ帰り道行ってやるよ」


 カナメは手をコキコキさせ、凪とニーラグラを抱えて三階から脱出。

 そして二人を地に届けた後、自分の足元に超高熱の『爆破』を準備する。


「待ち合わせはどこにする」


「ここだ。そして料金を払う」


「りょーっかい!」


 カナメは爆風と共に消えた。

 ニーラグラが涙目になっているが、怒る気はない。

 仕方ない状況だったし、今は時間が惜しい。


「行くぞ」


 凪はニーラグラに肩を貸してもらい、道を指示する。

 そして着いたのが──


「ここが──『神仰教』本部」


 ニーラグラはほえぇと声を出す程驚く。

 豪華絢爛、まさにアスファスの自己顕示欲が組織にも現れている。

 二人は扉の前まで来て、深呼吸する。


「──ニーラグラ、ここまで来てなんだが、やってくれるな?」


「うん!私も覚悟は決めたよ!」


「俺はサポートしか出来ない。そのサポートもままならないくらい負傷している。それでも、か?」


「うん!私の覚悟を舐めてもらっては困るなぁ!」


「ありがとうな」


「うん!」


「相手の中には幹部の監視と護衛を任されているアリウスクラウンもいる。気を付けろよ」


「うん!……うん?アリウスクラウン?」


「ああ。かつてアスファスが初めてこの世界に君臨した際、世界が連携して作ったチームの──」


「いやーーー!!!やっぱ嫌だー!何でアリスちゃんがいるの!?神仰教の幹部集会じゃないの?みんな強いんじゃないの?護衛なんていらないでしょー!」


 そう言ってニーラグラはみっともなく地でバタバタして愚図る。

 とても神とは思えない。

 凪ははあ、とため息を吐き、頭をポコンと殴った。


「いたー!?凪くんひどい!」


「痛くないのに痛いと言うな。俺を見てから言うんだな」


 そう言って凪は自分を叩く。

 ニーラグラはむすっと膨れて黙った。


「だからさ」


 凪はそのまま、ニーラグラの肩に手を添えた。


「頼むよ」


「……しばらく本当に休むよ?」


「ああ」


「ほんとにほんとに、何もやらないお荷物と化すよ?」


「ああ」


「……もう、今回だけだからね」


「……」


「……ん?何で返事しないの今回だけだからね!」


「……」


「凪くーん!だから──」


「オイ!どこのどいつが教会の前で大声でだべってやがる!」


 ニーラグラが叫んでいると、神仰教の扉をパン!と蹴破って男が大声で出てきた。

 その男は逞しい上半身を外部に晒し、おそらく上の服を腰に付けるという正にパワータイプ。

 ここにいる事から幹部と予想出来る。

 そんな男は凪とニーラグラを見つけると一瞬で間合いを詰め、その鉄のような拳を振り上げてきた。


「死刑……執こ──うううううううう!?」


「うるさい!今凪くんと話してる!」


 ……ニーラグラは一瞬で男を消し飛ばした。


「……あれ?うわあ!一般人殺しちゃった!」


「……一般人ね。まあいい、ニーラグラ。アリウスクラウン以外は全員こんな感じのザコだ。やれるな?」


「うん!アリスちゃん以外はね!」


 そう言って、ニーラグラはこの教会を吹っ飛ばす。

 それは口論より一瞬で、少し腹が立った凪であった。


 *


「あれー?何でここにアリスちゃんがいるのー?」


「……ん?ああ、ダクネスさんですか。何でって?」


 ダクネスがアスファスの結界内──アスファス親衛隊の組織内に入ると、広間のソファでアリウスクラウンが寝転んでいた。


「またまたー。今日神仰教の幹部集会でしょー?アリスちゃんそこの護衛担当じゃーん」


「……ああ、そうでしたね。でもそれ向こうから蹴ってきたんですよ。我々は最高幹部だとか、強いとかなんとか」


「へー。……なんかテンション低めだね?狂弥が死んだ時はあんなはしゃいでたのに」


「え?……ああ、私これがシラフです。あんま気にしないでください」


「ふーん。じゃあね」


 そう言ってダクネスはひらひらと手を振って広間の奥へ──行こうとする前に。


「あ、そう言えば。ついさっき神仰教幹部集会の場所襲撃されて──全員!死んじゃったらしいよー」


「……はい?」


 ダクネスの発言に、アリウスクラウンはばっ!と立ち上がった。

 ダクネスがニヤリと笑う、冷や汗が垂れる……。

 

「……ヤケ酒だー!」


 アリウスクラウンはそのまま自室へとダッシュした……。


「お酒はほどほどにねー……って、行っちゃったや」


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