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超能力という名の呪い  作者: ノーム
七章 開戦前の朝ぼらけ編
133/301

126(神サイド) 『破壊者』


「オイオイ、どうする凪……こいつら」


「決まっている。殺すしかない、俺は援護、お前らは突っ込め」


「ねぇ、やっぱり私も?」


「「当たり前だ」」


「とほほ……」


 そんな呑気な会話をしながらも、三人とも冷や汗を垂らしていた。

 ニーラグラは半泣きなくらいである。


「余計な抵抗しないほうがいいで。アタシら、アンタらの能力完全に分かっとるからな」


 そう言い、百人近くの能力を取り仕切るのは、革緑茅。

 宏人率いるアスファス親衛隊六番隊の二人いる内の副リーダーの一人。


「それは俺らも知ってるぜ。お前ら全員、『身体能力向上』の『上』から『超』だって事をなぁ!アンタだけは『特大』なんだっけ?」


「そうやで大正解や。じゃあアタシからも、そういうあんたはカナメ、『爆破者』。そこの左半身ほぼない奴が凪、『模倣者』。ンで、アンタが──池井瑠璃。『読心』や」


「──はは」


「ア?」


「ぶひゃっひゃっひゃ!勝ったぜ、これ絶対勝ったぜ凪!」


「オイ、あまり騒ぐな。そして警戒させるな……」


「そういう凪くんだって、少しニヤついてるじゃーん」


「ぶっころすぞ……」


「すみません!」


 そして、三人は笑った。

 逆に茅は、冷徹に三人を見下し──指を指した。


「よし、行くやで」


 茅がいつもと同じ声量でそう言うと、凪たちを囲んでいた親衛隊六番隊約百名が一気に襲いかかってきた。


 だが──


「オイオイ、なんでたった百人如きで俺と相手出来ると思ってんだよ」


 カナメが指をパチンと鳴らすと、カナメらを中心に小さな花火がいくつも発生。

 カナメの『爆破者』──爆破したいところを爆破する、最強の超能力!


 だがやはりアスファス直属の部下。

 数人ぐちゃぐちゃになったが、それ以外は華麗に避け、凪らに向かってくる。


「ありゃりゃ。やーっぱ厳しいや。ンじゃ、やっちまおうぜ──るーりちゃん」


「おうおう私は瑠璃!『読心』、はっつどーう!」


「……ッ!まじか」


 すると次の瞬間、とある神によって祐雅が──じゃなかった、五番隊の下っ端が、この建物ごと吹き飛んだ!


「「んー、デジャブ!」」


「……」


 カナメとニーラグラは、「イヤッホーイ!」と叫びながら、無言の凪と共に脱出した!


「ニーラグラ、これまた今度修復な」


「凪くんったら。んー、デジャブ!」


「ふざけんな」


「んー、デジャブ……」


 *


「あれ、なんか上の方騒がしいですね。茅さんが暴れているのでしょうか」


「……お前は確か、昌斬星哉か」


「いや、あの人はそんなタイプじゃない。なら不測の事態が起こったと考えるべき、ですね」


「オイ、アングル。殺るぞ」


「……アァン?なぁんで俺がテメーと共闘しなけりゃならねぇんだよ」


 凪らが『Gottmord』を脱出してから少し後、祐雅とアングルの元に星埜が来た。

 星哉は腰の鞘から剣を抜き、構えた。

 そんな星哉を見て、祐雅も腰の鞘から『魔王剣』を取り出す。

 一度宏人に『変化』され使い物にならなくなったこの剣だが、どうやら壊れても元に戻るらしい。


「宏人の部下が何の用だよ」


「……なぜあなたが宏人様を知っているのですか。どういう関係です?」


「……ア?」


 そこで祐雅はまだ宏人は組織に残れている事を確信する。

 ではなぜ宏人不在の六番隊がここに来たのかは不明だが、まあ不測の事態なのだろう。

 

「俺と宏人の関係……それはなぁ──知らね」


 祐雅はそう言うと共に一瞬で星哉と間を詰める。

 狙うは首。

 だが、そんな祐雅の速さを、星哉は単純な運動神経で避ける事が出来る。


「『身体能力向上・特大』」


 星哉は大きくジャンプし、上から祐雅の頭を突き刺すように落ちる。

 祐雅はバックステップの要領で避け、星哉の着地点を斬る。

 それを星哉は空中で一回転して避け──自身の剣を投げた。

 祐雅はそれを楽々除け、そのまま突っ込もうとしたが。


「ッ」


 祐雅が気付いた時には遅く、星哉は祐雅の顔面に強烈なパンチ。

 祐雅は吹っ飛ぶが、星哉は止まらず追いかけて更に追撃、優雅を地面に叩きつける。

 すると星哉は一度祐雅から離れ、自分の剣を取りに行こうと──


「!」


「行かせねぇよ!」


 祐雅も星哉に向けて『魔王剣』を投げた。

 星哉は一瞬でそれに気付き、避けようとするが頬を深く抉られる。

 だが、致命傷ではない。

 頬から血を垂らしながら、そのまま自分の長剣を拾──


「え?」


 ──分かる。

 星哉は、分かってしまった。

 今、なぜか自分の背後から『魔王剣』が向かってくる。


 なぜだ、なぜだなぜだなぜだ!


 ──まさか。


 『魔王剣』は、遠隔操作が可能!?


「お前は確かに強い。だが……戦闘神経はねぇよ」


 『魔王剣』が、星哉の頭を貫く──瞬間。


「『破壊』」


「「!?」」


 あまりに予想外の事態に、二人ともその声を出した人物を見た。

 『魔王剣』が砕け散り、地面に破片が散らばる。


「オイ……なんでお前が邪魔する──アングル!」


「はッ!テメーも何手こずってんだよ祐雅!こんなザコさっさと片付けられねぇのかよ!」


 アングルはそう言い、長剣を拾い、星哉の元へ歩く。

 星哉は丸腰で構えるが、顔には冷や汗が浮かんでいる。

 アングルはそんな星哉をおもしろそうに見て、やさしく長剣を投げた。

 星哉はそれを一瞬でキャッチし、剣をアングルに向ける。


「……なんのつもりです」


「オイ、感謝くらいしたらいいんじゃねぇか?助けてやったのに加え、剣も拾ってやったんだぞ、俺」


「……感謝はします。だけど、あなたも殺します」


「ハッ!テメー、真面目そうなツラしておもしれぇ冗談言えんだな」


 アングルはそう言い、手をひらひらさせながら地下室の扉に向かって歩きだした。

 戦う気はないようだ。

 星哉もアングルに気を取られている、祐雅は今しかないと思い遠隔で『魔王剣』を修復しようとした。


 だが──反応がない。


「まさか……」


 冷や汗が垂れる。


「またなテメーら。いや、今から殺し合いすんのか、ンじゃあ次に合うのはどっちかか。まあどーでもいが」


 アングルはそう言うと共にこの地下の扉を開けた。

 

 そして──アングルの首が吹っ飛んだ。


「……は?」

 

 結構離れた場所にいた祐雅の顔に、ビシャッと血が付着する。

 アングルの首を斬った者は、アングルの頭を蹴飛ばしながらこの地下に入ってきた。


「ふぅ、良かった。一番厄介だと思ってた仕事が簡単に片付いた」


 その者──七音字幸太郎は、ふぅ、と額の汗を拭いながらそう言った。

 

 ここにきて──『超能力者』……ッ!


「ッ!」


 祐雅は焦るが、なぜか『魔王剣』を復元出来ない。

 宏人の『変化』からも復元出来たことから、能力の影響を濃く受けないと思っていたが──いや、待て。


 奴の、アングルの能力は何だった──!


 『破壊者』。


 あらゆる物を、その言葉通り『破壊』する力。

 凪がこの能力者を確実に仲間にしなければならないと言う意味が誰にでも理解出来るほど、神をも殺せる異能。


 ──昔。


 一度だけ、何者かに『Gottmord』本部が襲撃された事があった。

 突然本部の入り口付近が粉々になったのである。

 すぐに気づき、凪とカナメと祐雅でその場へ。


 そこにいたのが、アングル。


 三対一で、しかも『超能力者』二人と『魔王剣』所持者である、さすがのアングルも厳しかったようで、アングルは負けた。

 一体何でこんな事をと凪が聞いたところ、どうやらアングルは強者と戦う旅をしていたらしい。

 そして、色々な噂を嗅ぎつけ、ここにいる凪やカナメ、祐雅の元へ来た。

 凪はため息を吐きながらも、協力を要請するがアングルはそれを拒否。

 凪はその後も必死にアプローチを続けたが誘いを蹴られ続け、アングルはどこかに行ってしまった。

 もちろんそんなアングルをニーラグラに尾行させ、コロシアムにて戦いを楽しんでいるのを把握。

 だからこそ、アスファスがアングルを狙っている事が分かってからすぐに対応出来、無事アングルの奪還に成功したというのが今までの流れだ。


 何が言いたいかと言えば、『破壊者』はそれだけ価値があるという事。


 そして、それだけ強力なわけで。


 『破壊者』は、『幻神』と似ていて──破壊された物は復元不可。


「ッ──!」


「やあ海野維祐雅。──カナメは元気?」


 幸太郎はそう言いながら、『魔王剣』の破片を踏みつける。

 すると更に『身体者』の力もあってかバキバキになるが、祐雅はさっきからずっと復元を試みていた事もあってか、幸太郎が踏みつける前の状態に復元された。


 それを見て、幸太郎は──ニッコリと微笑んだ。


「海野維祐雅。アスファス様がお呼びだ。付いて来てもらおう」


「……クソッ」


 祐雅は、アングルを見て──舌打ちを吐いて、従った。


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