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超能力という名の呪い  作者: ノーム
七章 開戦前の朝ぼらけ編
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121話(神サイド) 部隊


「ふむ。それは面白い事を言う」


 城坂の言葉に、アトミックはそう言いながら笑った。

 それと反対に、宏人の表情は固い。

 先程アトミックとの会話で墓穴を掘った事もあるが、それだけではない。

 この男、城坂墓は、半年前──


「追放したはずだが?」


「!?」


 男の声一言で、この場にいる城坂以外の者が全員頭を下げた。

 その男の背後には、表の世界の現代の英雄であるエラメス・エーデン。

 実の名をエラメス・コウセイ・ロンドン。

 そんな男を従わせる事が出来る存在は限られている。

 そう、神──アスファスだ。


「なぜお前がここにいる?墓。あの地獄から帰還する事が出来たのにも驚いたが、まさか戻ってくるとは。正気か?」


「はい、元気ですよ。だから仕事ください」


 アスファスに対しそう言った城坂の首に、剣が突き付けられる。


「……なにこれ?エラメス」


「他の者に対してその様な態度を取るのは構わない。だが──アスファス様には、敬意を払え」


 宏人はゴクリと唾を飲む。

 ついに城坂が帰ってきてしまった。

 

 このタイミングでッ──!


 この、アルドノイズとの戦争が開始される直前で──!


 *


「はぁ、で?黒夜は『Gottmord』に俺のし!ら!な!い!間に所属していたと?」


「まあ、うん……」


「で?またもや俺のし!ら!な!い!間に?まさかの黒夜さんは副リーダーですか」


「まあ、うん……」


「凪の相棒は俺だろ!?」


「あ、そこ!?副リーダーじゃないから怒ってるとかじゃなくて、ただのヤキモチ!?凪くん取られてヤキモチ!?」


 またもや宏人とニーラグラは連絡を取っていた。

 宏人は凪に連絡を取りたくて連絡しているのだが、どうやら本部にいるのはニーラグラとカナメだけみたいで。

 雑務担当のニーラグラが電話当番という事もあり、毎日数分くだらない事を喋った後ため息と共に電話を切る。

 まあ凪がこそこそしてるのはいつもの事だが、今回は異常だ。

 数日本部を開けるなんて、しかも宏人からの連絡に出ないなんて今まで全く無かった。

 

 少し、不気味だ……。


「はあ……」


 それに何より、まずは城坂の件を何とかしなくてはならない。

 なんやかんやあった後、結局城坂復帰の件はアスファスに受諾されてしまった。

 城坂墓は、半年前宏人と共に行動していた際、アスファスの命令を無視して民間人を虐殺。

 アスファスからしたら人間が死ぬのはどうでもいいというか、むしろこれから減らす人数が減って嬉しいとかそこら辺の感情しかないようだが、それらの人間の評判に自分のよくない噂が立つのは我慢ならないらしい。

 だから城坂の行動はアスファスからしたら許せないものだったらしく、城坂はアスファス曰く地獄に落とされた。

 どうやらその地獄とは上級悪魔が多く住み着いた魔鏡だったらしいが、城坂は生き残り、しかも親衛隊に帰ってきた、というのが流れ。


 宏人はゴクリと唾を飲んだ後、歩き出し──表へと出

た。



「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!」」」



 鼓膜を貫いてくるような、低い歓声が場を支配する。

 宏人は照る太陽に目を細めながら、目の前の景色を見る。


 そこには、百人以上の人々が、宏人を見ながら叫んでいた。


 そう、宏人はこの隊のリーダー。


 対アルドノイズ側の組織のために作られた、完全無欠の軍勢。

 要するに、これが『Gottmord』の敵。

 一人一人が厳しく訓練された名高い能力者が、百名。

 これでも過剰戦力と言っていいだろう。

 だがしかし、これだけではない。


 宏人は周りを見渡す。


 一番隊隊長『勇者』の太刀花創也。


 二番隊隊長『超人』の七音字幸太郎。


 三番隊隊長『勝利』のアトミック・ピークポイント。


 五番隊隊長──不在


 七番隊隊長臨時『殺姫』のアリアスクラウン・カシャ・ミラー──不在


 八番隊隊長『霊宿』のカミルド・ミグナス。


 そして、六番隊隊長──『変化』の向井宏人。


 それぞれがそれぞれの持ち場に、数百人の部隊が作り上げられていた。


「五番隊諸君!心して聞け!」


 中央にある玉座付近から、そんなエラメスの声が響く。

 もちろん玉座に座るは我らが神──アスファス。

 アスファスは足を組みながら、興味深げに辺りを見渡している。

 エラメスはそのまま、一切道具類を使わず生の声でこの何百人もの前で叫ぶ。


「五番隊長であった黒夜が現状行方知らずだ!現在も捜索しているが未だ見つからん!その為、黒夜には五番隊長の席を降りてもらう事となった!」


 そして──


「元六番隊隊員である城坂墓を昇進し──五番隊長とする!」


 五番隊隊長の場に、城坂がゆっくりと来た。

 その様は不気味なんてものではない、異様だ。


「やあ、みんな。よろしくぅー」


 *


 アスファス親衛隊の部隊は全八部隊。

 本来は全十部隊なのだが、戦いに死は付き物。

 隊長の席は変わり変わっていき──ついに人員不足となった。

 だがそれは実力の話で。

 隊員の数はおよそ千。

 残り四部隊分の隊員は第一部隊から順に割り振られている。


「これが、現状把握している敵に対する──我々の部隊をぶつかる者らだ」


 その後行われた会議にて、アスファスはそう言うと共に資料を見せた。


 一番隊、七番隊vs.海野維祐雅


 二番隊、八番隊vs.七録カナメ


 三番隊vs.新野凪


 五番隊vs.──保留


 六番隊vs.河合凌駕


 宏人が戦う相手──河合凌駕。

 

 アスファスは、まだ凌駕が死んだ事を知らない……?


 というかまず……やり過ぎだろ。

 人一人に対し、互角かそれ以上の奴に加え百名ちょっと。

 過剰にも程がある。

 

 アスファスらしいというか、なんというか──


「さあ、戦争の日は近いぞ。心しておけ」


 過剰だな。


 *


「カナメ」


「……凪か。どうした?」


 夕暮れ時の外のデッキにて。

 凪は簡易キャンプで本を読んで寛いでいるカナメに話しかけた。

 カナメの視線は本のまま。

 凪はふらつきながら、デッキのレールにもたれかかった。


「フィヨルドに逃げられた……」


「そうかい。まあいいんじゃね、別に。対して強くないんだろ?」


「そうだが……しくった」


 そこで、やっと今さっきまで本を読んでいたカナメは凪を見る。

 

 ──凪の左半身は、ほぼ無くなっていた。


 さすがにカナメは動揺し、慌てて本を投げて凪の元は駆け出す。

 それと同時に凪は崩れ落ち、カナメは肩を貸した。


「お前それ……華に──」


「駄目だった。だがこれで今まで謎だった『幻神』の能力がやっと分かった。最近アスファスの動きが怪しいとは言え、これについては朗報だ」


 凪はそう言いながら辺りを見渡す。

 

「ニーラグラはともかく、祐雅はどうした?」


「あいつは今日もアングルに構ってるよ」


 凪はカナメとそれだけ話すと本部の広間へ行った。

 カナメは心配してついて来ようとしたが、凪は断りここへ。

 誰もいないため、深いため息とともにソファーにダイブ。

 常時の凪じゃしない行動だ。

 

「ッ──」


 左半身が酷く痛む。

 当たり前だ、華の応急処置があったとはいえ、これは致命傷。

 華の回復効果と『者』級に与えられる『身体能力上昇・特大』でやっと生きながらえている。

 だが……凪の場合、ただ生きているだけではいかない。

 アスファスとの戦いが近づいている今、自分は貴重な戦力だ。

 だというのにッ……!


「こうなったら、アイツしかいない……」


 *


「──で?出来の悪い弟と共に、頼れる私の元へ来たと」


「ああ、悪いか?」


 凪が怒ったような低い声でそう言うと、目の前の人物はケラケラと笑う。

 凪はあの後すぐカナメの肩を借りながらここに来た。

 立っているのも辛い身体に鞭をうちながら、目の前の人物を見る。

 一見、普通の少女だ。

 だがその実態は違う。

 そう、彼女は、この『世界』で神々を超える力を持つ三人の内の一人。


 『神人』の中の一人──


「この、七録菜緒に何の用かな?」


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