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超能力という名の呪い  作者: ノーム
七章 開戦前の朝ぼらけ編
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120話(神サイド) 帰還


 回廊を進み、とある扉の前へ着く。

 別に豪華や華やかなでもない、ただの普通の扉。

 だがそこに待ち受けるはラスボスなんて甘い言葉なほど、強大な存在。

 神を超える人間──『神人』。

 

「だけど、あんたも所詮人間だ。そうだろ?──ダクネス」


 宏人は扉を蹴破り、そう言った。

 やはり、そこに待ち受けていたのは──


「久しぶりだね、宏人くん。バグ世界以来かな?せっかく親衛隊入ってくれたのに会えなくて悪いね、私意外と忙しいんだー」


 ガチャッと銃をリロードし、突きつける。

 ダクネスの表情は変わらない。

 いや、まず変える必要がない。

 人間が指を指されても怖がらないと同様、『神人』にとって銃とは水鉄砲と同等の威力の玩具。

 

「そんなおもちゃを突きつけてどうしたのー?仕事辛い?辞めたくなっちゃった?」


「……」


「そんな怖い顔しないでよー。私、女の子だよ?」


 ダクネスはそう言いながら背を向け、お茶を注ぎ始めた。

 本気で宏人を相手にする気は無い様。

 まあ当たり前だ、ダクネスにとって、宏人も──人間も、おもちゃ、だ。

 

「で、何の用?無策で私に突っ込んでくるほど馬鹿じゃないって認識してたけど。違ったかな?」


「……ダクネス」


 そこで宏人は、更にダクネスを強く睨みつけながら──


「神ノーズは、どこにいる?」


 *


「やあ宏人!お帰りだな!」


「……おうよ」


 フィヨルド・ナイト・オーパッツとの戦いから帰った後、宏人ら『アスファス親衛隊』の幹部面々は緊急会議に呼び出された。

 その内容とは、死んだと思われていた『幻神』ソウマトウが未だ生存していた事が確認されたからだ。

 別に生きていても関係ないと思うが、アスファスが望むはアルドノイズとの真剣勝負。

 で、今お互い戦力を高め合っている最中だから余計な邪魔は何人たりとも許さん!という事らしい。


「宏人はどう思う!ソウマトウが生きていた件について!」


 そしてこのうるさいのが太刀花創也。

 何故か分からんがいつもこんな感じで非常に喧しい。


「別に。俺は神様はアスファス様しか興味がない」


 そんな宏人の返しに創也はあっはっは!と笑うと別の奴に話しかけにいった。

 

「宏人。やはりいません」


「そうか……」


 小声でカミルドがそう言ってきた。

 もちろん、黒夜の事だ。

 フィヨルドを倒した後、黒夜がいない事に気付き、必死に探し回ったがいなかった。

 本来なら今でも探していただろうが、そこでアスファスから早急に帰るようにと連絡が来てしまった。

 凪ら『Gottmord』に頼むのも一つの手だが……まあなるべく頼りたくない。

 だがもし今、黒夜が危険な状態にあったら?


 そんな事を思った瞬間、宏人はアスファスの式神出て、簡単に隠されそうな場所にて凪に連絡した。


「もしもし、凪か?」


「みんな大好き!ニーラグラちゃんですよー!何か用かにゃ?宏人くん」


「……はぁ」


「え!?何故???」


 宏人はアスファス親衛隊に入隊する前に、凪から特製イヤホンを持たされた。

 そのイヤホンはなんと回線が『Gottmord』組織内の受話器にしか在らず、内密な連絡が可能なのだ。

 だからまあ、誰でも出られる訳で。


「今回ははずれか……」


「今とんでもない事言ったね宏人くん!で、要件は何さ?宏人くんが連絡するなんてよっぽどの事でしょ?」


 そこで宏人はああと言った後、はっきりと言う。


「黒夜って奴が行方不明なんだ。忙しいのは分かってるが、悪いが探してくれないか?」


「……黒夜?黒夜ちゃんの事?」


「……?黒夜、ちゃん???」


 そこで宏人は首を傾げた。

 『Gottmord』に黒夜という人物がいるなんて聞いていないが、ニーラグラがやけに当たり前のように言ったからだ。


「うん。昨日辺りに帰ってきたよ。でもまだ全然話してないや。凪くんと忙しそうにしてたし」


 それを聞き、宏人はイヤホンの電源を切って走り出した。

 決まっている、今から向かうは『Gottmord』本部だ。

 黒夜の謎、何故凪はろくに情報を与えてくれないかで腹が立ってしょうがない。

 だから宏人は、後先考えずアスファスの結界を出ようと──


「──ふむ。どちらに行かれるのです?宏人」


「ッ!」


 すると、アトミック・ピークポイントに話しかけられた。

 やけに宏人に接してくる、不可解な存在である奴に今──。

 宏人は思考を巡らせ、適当な答えを返した。


「ほら、『幻神』がまだ生きてこの世界にいるんだろ?散歩がてらに探そうとしただけだ」


「ふむ。賢い行動ですな。私もお供しても?」


 アトミックはそう言いながら宏人の横に並んだ。

 宏人は必死に顔色を変えずに言う。


「いやいや、あんた忙しいだろ身だろ」


「ふむ。だが散歩する暇ぐらいある」


 宏人は、ははは……と苦笑いしながら共に外へ出た。

 無言が続きながらも、二人で道を歩いて行く。

 しばらく歩いた後、二人は同じタイミングで止まった。


「ふむ。紅葉が綺麗だ……」


「……だな」


 季節は旧時代で言うところの12月の中旬。

 なのにまだ暖かいくらいで、木々は紅くなり、紅葉が舞っている。


 秋だ。


 だがそれは一部だけの話であり、今の時代、木々は一年中枯葉をぶら下げているのが大半。

 特に美しい物や自然に関心がない宏人でも、少し気が緩むほど……。


「宏人、お前はたまに結界内からいなくなる事があるが、一体どこに行っているのだ?」


「言う訳ないだろ……俺らは敵だぞ」


「ふむ。そうか、それもそうだな」


 そう言いながら、アトミックは来た道を引き返した。

 帰るのだろうかと思い、同時にホッとする。

 さすがに今更『Gottmord』に行き、帰りが遅くなった場合散歩じゃ言い訳出来ない為行こうとは思わないが……。


「あれ……、俺、今なんて言ったッ……!?」


 *


「ん?宏人と俺の関係ぃ?」


「はい、創也くんの接し方や雰囲気も関係しているでしょうが、お二人は宏人くん入隊時から仲がよろしいので。不思議だなと」


 宏人とアトミックが散歩をしている頃、創也とカミルドが珈琲を飲みながら話していた。

 カミルドの問いに、創也はうぇーと舌を出す。


「なんで俺がそんな事をお前に」


「ああそうでした、ついでになんで僕はあなたから無碍にされているかも聞きたいんでした」


 カミルドはニコニコしながら珈琲を飲む。

 ちょっと唇を付けて辞めた。

 ぶっちゃけ嫌いなのだ、コーヒー。


「じゃあまずはそれから教えてやる。今のだ。お前は嫌いな相手に対して合わせるような行動をとっている。誰がお前に珈琲を飲めって言ったよ?言ってねえよな?じゃあなぜ俺と同じモノにしたか。それは俺に更に嫌われない様に、そしてテメー自身も更に俺を嫌わないように、だ」


「……つまり何が言いたいんです?」


「俺は確固たる自分を持ってねぇモブは嫌いだ。帰れ。そして死ね」


 創也はそう言いながらカミルドを手で払った。

 だがカミルドは動じずニコニコしながらその場に留まる。

 

 しばらく、両者は沈黙した。


 創也は細目でカミルドを見るが、相変わらずニコニコニコニコ。

 そして遂にカミルドが動き始めたかと思えば、珈琲を飲み始めた。


「オイお前、嫌いなんだろ。飲むなよ」


 そしてカミルドは一杯丸々口に含め──ぺっ。


 口から珈琲を吐き出し、創也にビショッと掛かった。


「あ、すみません。ついつい」


「……」


「何か言ったらどうです?」


「……じゃあ一言。やめとけ」


 創也は髪からポタポタと珈琲を零しながら言う。


「何を──」


「やあふたりともー久しぶりー」


 創也は、その言葉を放った人物を見た。

 

 ──城坂(じょうさか)(はか)


「あー、カミルド、創也くんの事いじめてない?もしそうだったら俺ゆるせないよー?」


 カミルドは、思わず片頬を引き攣らせてしまう。

 

 なにせ城坂の肩には──今にも死にそうな少年が担がれていた。


「まあそれはともかく」


 緊急警報が鳴り響く。

 おそらく城坂は、肩の少年の入場許可を取らず無理やり連れてきたのだろう。

 カミルドはチラッと腕に巻き付けていた端末を見た。

 

「はあ……」


 ため息しか出なかった。

 なにせ、アスファス親衛隊のリーダー達全員が、こちらに向かってきているのだから。

 当たり前だ、このアラートは侵入警報だ。


「宏人くんは、どこにいる?」


「ここだが?」


 城坂の問いに、すぐ答えが返ってきた。


 ただ今──アスファス親衛隊のリーダー格全員で、城坂を取り囲んでいた。

 

 もちろんそれは、創也とカミルドも例外ではない。


 そして城坂の問いに答えを返した人物──宏人は。


「城坂……何で帰ってきた?」


「何でって、そりゃあ── アスファス親衛隊第六番隊で、もう一度みんなと戦うためだよ」


 城坂は、ニコリと笑って、そう言った。

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