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超能力という名の呪い  作者: ノーム
間章 Missing story
125/301

118話(神サイド) 5.5章⑤


「この世界において、『超能力』とは人権を指す」


「……」


 闇の中、突然そんな声が聞こえた。

 だが宏人は動じない、いや、もし仮にこれを予測出来ていなかったのなら同様していただろう。

 しかし、分かっていた。

 こいつが今、この場所に現れる事は、分かっていた。


「その事についてどう思う?向井宏人」


 そう問いてきたのは──太刀花創也。

 現、『勇者』の男である。


「どうでもいいな。それより俺の質問に答えろ、どうして俺はお前を知っている?」


 それに対し宏人はそう言う。

 何よりもまず、これを聞かなくてはならないからだ。

 だから呼んだ。


 だからあの時手にした──『眼』を使ってここに来た。


 アルドノイズはあの時の戦いでほぼ全ての創也の『眼』を、カオスを復活させるために使い切った。

 だが、たった一つ、たった一つだけまだ手元にあったのだ。

 それを今回使わせてもらった。


 知りたくて堪らないのだ。


 気持ち悪くて仕方ないのだ。


 この、頭の中で叫ぶ声──翔華という人物。


 それを、創也は間違いなく知っている!


「ぶっちゃけ俺もお前の質問なんかクソどーでもいいね。だからまず俺の質問に答えろ。で?」


「……まあ、いい」


 宏人は少し気圧されながらも、コホンッと咳払いして続ける。


「それこそどうでもいいな。それは『超能力』の強さで生存確率が高くなるこのクソッたれた世紀末世界の事を言ってるのか?それとも──『呪い』所持者の全員死刑についてか?」


「ほほう。その心は?後者に聞いている」


 創也の顔が嬉しそうに歪む。

 それを見て宏人は頭を掻いて答える。

 どうにもこの男は掴みにくい性格をしている。

 どこか自分と似ていると思えど、全く感性が違うとも思える、不思議だ。


「もちろんそのまんまだ。『呪い』を持っている者は基本的に『超能力』を持っていない。それが『超能力』とは人権か?という質問に対する回答だ。満足か」


「ああ、満足だね。では今度は俺がお前の質問に答えてやろう」


 簡単に答えた宏人に対し、創也は本当に満足そうに拍手をする。

 これだ、この不思議な違和感が、宏人を苛立たせる。

 通常ならこんな事気にする事はない。

 だが、その相手が太刀花創也となると話は180度変わってくる。

 

「いや、これはその回答に対する道を授けてやると言う事か。回答じゃなくてすまんね」


 この太刀花創也に対する──


「『アスファス親衛隊』に入れ。日時と場所は『神格会議』で聞いたろ」


 『安心感』はなんだ──?


 *

 

「──どうした宏人?大丈夫か」


「……あ」


 気付くと、いつの間にか元に戻っていた。

 目の前に太刀花創也はいない、凪がいる。

 珍しく困惑した顔つき。

 まあ無理もない、宏人が突然驚くような事を言ったかと思えば次の瞬間黙りこくるからだ。

 宏人はあははと笑いだから答えた。


「いやすまん、もう会ったわ」


「???。????」


 凪の困惑顔が限界突破する。

 思わず宏人は笑うが──祐雅に胸ぐらを掴まれ我に帰る。


「何だ?お前は太刀花創也とどういう関係がありやがる?答えろ。答えなきゃ殺す」


「……お前こそなんだよ。この組織に入んないんだろ?さっきもそうだが、何で俺にこんなアタる?」


 宏人の言葉に、祐雅の顔から血管が湧き上がる。


「それとこれは話が別だぁ──まあいい」


 そんな事を言ったかと思えば、祐雅は突然態度を変えた。

 落ち着いた様な──吹っ切れた様な。


「──死ね」


 ──は?

 胸ぐらを掴まれた状態で、身動きが取れない。

 そんな状況で、祐雅は腰から『魔王剣』を抜き、宏人の首目掛けて薙ぎ払った。

 間に合わない、直感でそう分かる。

 これは『死神』セバス以来の感覚、いや、それやりも『死』が迫っている。

 全てが無駄だ。

 例え『強運』があれど、この軌道は変えられない。


 走馬灯はない。


 絶望感もない。


 ただただ、無。


 死にたい訳ではない、だがあまりにも潔い剣捌きに対し──美しいという感情が支配してくる。


 ──だが、諦めがついたわけでは、ない!


「グッ──────────!」


 首に剣が食い込む。

 瞬間的に身体を『悪魔』に『戻し』、首に力を入れる。

 だがそれでも精々人間の身体より斬れるのが数瞬遅くなるだけ。


 だけど──今まで、こんなピンチ何度も乗り越えてきただろ、向井宏人!


 宏人はそう心で叫びながら、無意識に。

 身体が勝手に、いつの間にか、一瞬で。


 ──『魔王剣』に、触れていた。


 そして、これもまた無意識に。


「──『変化』」


 『魔王剣』の構造が、書き換えられた。


 *


「……何だと?」


 ある男の顔が、一瞬驚愕に染まる。

 それに気付いた少女は不思議そうに首を傾げた。


「どうしたのー?」


「いやな……昔、というか先代が神殺しを目的で作った人間の武器が壊れたらしい。あれには先代の魂の一部も含まれているためそうそう壊れるはずないが……」


「じゃあ神が壊したんじゃないの?最近、地上ではアスファスとアルドノイズが目立って行動しているって聞くけど」


 少女はそう言うと再度絵を描き始めた。

 見た目に似合わない、三歳児が描き殴った様な下手くそな絵。

 男はため息を吐き──思考を辞めた。


「どうせ、神ノーズ関連か……」


 なら壊されても仕方ない、と思い込み、目を瞑った。

 

 *


 静寂──


「……ッ!」


 凪は、今、とんでもない現象を目の当たりにした。

 今までのループの中でも見た事がない、『変化』の効果が自己以外に発動される事を。

 

「はぁ、はぁ、は──」


「ひ、宏人!」


 宏人の首からどくどくと血が流れる。

 凪は急いで血止めをし、華を呼び、回復させた。

 その頃にはもう宏人は気絶していた。

 

「祐雅。その剣見せてみろ」


「……ほらよ」


 凪が祐雅にそう言うと、案外呆気なく祐雅は凪に剣を渡す。

 何物でも切断する魔王の剣は──なかった。

 正確に述べれば、刃物の部分が消え去り、『魔王剣』はツカしかなかった。

 凪はそれを見て──喜ばずにはいられなかった。


 ──ついに、どんな存在に対しても有効な攻撃手段を手に入れたッ……!


 そう、『変化』は物質を変化させ、他の物に変えられる能力。

 その強力さ故か今までの『ループ』において向井宏人は自分自身にしか『変化』を使えないでいた。

 一時期向井宏人を徹底的に鍛えた事もあったが……叶わなかった。


 だが、今回は違う。


 やっと、神ノーズらを、殺せる光明が見えた。


「祐雅、カナメ、ニーラグラ。話がある」


 この機を、流すわけにはいかない。



 ──そして凪は、三人と同盟を結ぶ。




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