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超能力という名の呪い  作者: ノーム
間章 Missing story
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117話(神サイド) 5.5章④


「──で?お前らとカミに反抗するってか?バカだろ」


 『Gottmord』の本部のリビングにて、ある少年は態度悪くそう言った。

 その少年は左隣の男の肩に手を回し続ける。


「俺とカナメはお前らみたいな得体の知れない組織のお邪魔にはならねぇ。な?カナメ、──ニーラ」


「いや私達はお邪魔になるけど。ね?カーナメッ!」


 それに対し、とある神──ニーラグラがそう答えながら、右隣の男の肩に手を回した。

 

 それを──宏人と凪は見ていた。


「……」


 正直、宏人は疲れていた。

 この三人組ときたらいきなり押しかけて来た後、長野華の能力で以って回復させ、今までの敬意を話しこの組織に勧誘した。

 ぶっちゃけ宏人がしたのは説明ぐらいだが、まあそれが大変だった。

 言葉を発するたびに「雑魚だなー」やら「戦いのセンスがまるでかんじられない」だの「よく死ななかったな」と言った言葉が飛んできた。

 しかもそれを言っているのは一人だ。


 今、宏人の目の前にいる──海野維祐雅。


 宏人でも知っているほど強いと有名の、元『勇者』。

 

 宏人は思い出すだけでも腹が立ち、じとーっと祐雅を見つめてしまう。


「──あ?なんだお前、文句でもあんのか?」


「おうおうありありだね。お前こそ何渋ってんの?さっさと入れよ。俺らが雑魚いならお前がリーダーにでもなって引っ張っていけばいいじゃねぇか」


「オイオイ、そんな簡単じゃねぇから言ってんだろぉ?神の強さを侮るな。お前はアルドノイズを倒したんじゃねぇ、倒させてもらったんだよ、吐夢狂弥になぁ!」


 そう言い、祐雅は机を蹴飛ばした。


「ひいいいいいいい!暴力反対!」


「海野維祐雅、そろそろいい加減にしてくれ」


 するとニーラグラは悲鳴を上げ、凪は静かに言った。

 宏人の背筋が凍る。

 ──今、凪は怒っている。

 最近ほぼずっと共に行動していたのだ、凪の些細な表情の変化に気付けるようになってきた。

 案の定、凪は祐雅に向かって手を突き出す。


「してくれないと──殺すぞ?」


「いいねいいねぇ!やろうぜ凪ィ!──ちょうど俺もお前を殺したかった」


 凪の言葉に、祐雅は高らかに答え──最後は静かに言った。

 そして、凪から視線を外し、宏人へ向ける。


「だが今じゃねぇ。今は──向井宏人。テメーを殺す」


 すると──祐雅虚空より『魔王剣』を取り出した。

 禍々しい異形の剣が、まるで宏人を笑っているかのように耀く。

 宏人の背筋から、少量の汗が垂れる。


「向井宏人。俺とサシで戦え。お前が勝てば俺はお前の軍門に降ると約束しよう」


「……お前が勝ったら?」


 宏人は訳が分からないながらもそう聞いた。

 宏人と祐雅が会ったのは今日が初めてだ──なのに。


 なぜ、祐雅はそんな憎んだ目で宏人を──


「何もしなくていい。だって──俺が勝つということは、テメーが死ぬ事と同義だからなぁ!」


 祐雅はそう言うと共に宏人に斬りかかる。

 宏人は反射的に手を何か硬いものに『変化』させ、受け止めようとするが──


「──ッ!」


 一瞬で仰け反り、ギリギリ回避した。

 宏人の鼻上がピッと切れる。

 宏人は抗議しようと口を開くが、そんな隙を与えないほど凄まじいスピードで祐雅が宏人を殺しにくる。

 反撃の隙も与えない、まさに完璧で──歪な剣技。

 

「いい加減にしろ──『空間圧縮』」


「凪!お前は俺と戦おうぜ──『爆破』」


 凪は宏人を助けようと、祐雅の身体を死なない程度に潰そうとしたが──その『能力』自体を『爆破』された。


「新野カナメッ……!何だ?お前もこの組織に反対か?」


「いーや、俺はぜひこの『Gottmord』に入りたいと思っているよ。だけど──俺は自分の強さがどこまで通用するか知りたい」


 そして、凪とカナメがぶつかる──傍らでは。


「どうしたよォ向井宏人!お前はそんなへっぴり腰でアルドノイズを殺したのかよ!」


「チィッ……!さっきからごちゃごちゃ──うるせぇんだよッ!」


 すると宏人は剣の隙間を縫うように祐雅の懐に入った。

 祐雅の顔が驚きに染まる──宏人は祐雅の顔を『神の拳』でぶん殴った。

 祐雅はそのまま後方にぶっ飛び、リビングのインテリアをぶち壊しながら壁に突っ込む。

 いつの間にか凪とカナメは外に行ったらしい……窓を粉々に破壊して。


「……」


 宏人は結構傷付いた。

 あれもこれも、結構お気に入りだったのに……と。


「は、はは。ハハハハハハハハッ!そうか、お前の今の神ワザはその『眼』の──吐夢狂弥の『眼』のお陰か」


「……ああ、そうだが」


 ──そう、宏人はアルドノイズとの戦いで吐夢狂弥から、12と書かれた『眼』をもらった。

 その『眼』は使用するごとにその数を減らし、最後の1を使うと霧散する。

 宏人は12回全てを使用してもアルドノイズには届かなかった──しかし、凪が宏人に自分の分を譲渡してくれた。


 凪の超能力『模倣者』によって狂弥から『眼』を受け取った方法を『模倣』して宏人に渡してくれたのだ。


 そして宏人はその『眼』を11回使い──アルドノイズに勝利した。

 つまり今、宏人の目には残り1回分の『吐夢狂弥の眼』が在る。


 その眼は時間を操る異能が含まれているだけでなく、吐夢狂弥の動体視力をも含まれているのだ──


「おもしれぇ。本気出してやるからお前も出せ。じゃなきゃ死ぬぜ?『alz──」


「ダメーーーーーーーーーーーー!『神空破』!」


 すると次の瞬間とある神によって祐雅が──この建物ごと吹き飛んだ……。


 *


「──ニーラグラ」


「は、はいぃ……凪くん、何でしょう?」


「これ修復するぞ」


「え、えぇぇ……、いくら何でもそれはさすがにめんどy」


「ふざけんな」


「ですよねー……」


 凪はニーラグラの頭を左手で鷲掴みにしながら右方の瓦礫の山を右手で指差す。

 そこにはついさきほどまで『Gottmord』の本部だったものが見るも無惨に破壊し尽くされていた。

 宏人の脳裏に今までこの『Gottmord』で色々な事をしたのが浮かび、目が熱くなる。

 普通に泣きそうでやばい……。


「オイ向井宏人、少し冷めたが向こうで続きだ。やるぞ──って」


「……?どうした祐雅、固まって──って……向井宏人?」


 カナメは祐雅が呆然としているのを不思議に思い、釣られて視線を宏人に向けると──


「いや泣くなよ宏人……」


「な、なななな泣いてねーし!」


「ニーラグラ、祐雅を誘え。そしたら許してやる」


「え!?これ直さなくていいの?」


「は?祐雅を誘ったら許すと言ったのであって、別に直さなくてよくはならないだろ。当たり前の事を当たり前のようにしろ」


「あ、はい……」


 *


 宏人らはその後、皆で『Gottmord』の組織の修復作業に取り掛かった。

 祐雅も「なんで俺までえええええええええ!」と叫びながらも協力してくれたり、カナメが余計なものを『爆破』し上手く事を運ばせ、ニーラグラがサボる、そして凪に絞められる。

 

「……」


 宏人はそれを見て──胸が痛んだ。

 別に今この状況が辛いわけではない。

 ……この『Gottmord』であった思い出のある場所が破壊されたからでもない、今着々と直っているから大丈夫だろうし。

 昔の──『NoS』時代の思い出が、蘇ってくるのだ。


 凪が読んだのか、瑠衣と華が手伝いにくる。

 遅れて元『NoS』のメンバーのナンチャンとライもくる。

 どうやら飛鳥は面倒という理由で来ないらしい、なんともまあ、アイツらしい。

 

 ここに飛鳥が来なくてよかったとしみじみと思った。

 

 だって──あの時の事を鮮明に思い出してしまうから。


「……。あれ?」


 そこで、宏人は思い出した。

 ちょくちょく脳裏に響く、この声はなんなのかと。

 

「ちょっと待て」


 頭を抱える。

 ──何だあの時って?

 ──俺は何を知っている?

 

 そうだ──俺は何を知らない?


 脳裏に、もう一度響く。


『翔華くんならこんな事にはならなかった!』


「……翔華って、誰だよ……?」


 ──これを言った奴すら、分からねぇッ……!


「あ、そうか」


 そこで、思い出した。

 この思い出せない記憶を色濃く思い出した時の事を。


 アルドノイズと戦った時、ある男と会った事を!


「凪」


「どうした宏人。珍しく真面目な顔つきだな」


「俺を──太刀花創弥に会わせてくれ」


 凪が少し驚き、祐雅の動きが止まった。

 



 


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