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超能力という名の呪い  作者: ノーム
間章 Missing story
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116話(神サイド) 5.5章③


 ここは砂漠のど真ん中。

 だがしかし、つい1、2年前までここは草が生い茂る大草原だった。

 なぜ砂漠と化したのか。

 簡単である、超能力のせいだ。

 超能力──特に『式神展開』は、この世の『自然』を喰らい尽くす。


 凪の背中は砂だらけだった。

 当たり前だ、宏人が突き飛ばしたのだから。


「よく無事に戻ってきたな、宏人」


「……この有り様を見て言ってるか?」


「ああ、生きているだけで儲けものだぞ」


 凪はそう言いつつ、宏人の手元から視線を離さなかった。

 微笑んでいるが、目は暗い。


「ニューマンはどうした?」


「死んでない、多分だけどな。アイツに連れていかれた」


「……それは大分痛いが、死んでないならいいか──凌駕は、違うみたいだが」


 そう──宏人の手元には、凌駕がいた。


「美琴も忘れんなよ」


 そう言い、宏人は背中におぶった永井美琴を見せつけた。

 ──既に死んでいた。


「逆だろ?なんで凌駕がお姫様抱っこで美琴をおぶってんだよ」


 凪ははは……と笑いながら言った。

 宏人は、言葉が出てこなかった。


 2人は、首を切断されて死んでいた。

 見るも無惨に。


 だから、宏人は2人に『変化』を施し、あらゆる素材で以って、繋げた。


 ──他人に、『変化』を使った。


「……すまん」


 宏人は、自然とそんな言葉を口にしていた。

 凪に謝ったのではない、何に謝ったかすら自分でも分からない。

 だが──とにかく、謝りたかった。


「……」


 凪はもう、何も言わなかった。


 ──宏人自身、なぜ己の四肢が未だ健在なのかすら、分からなかった。


 *


「──と、いうわけだ」


 宏人はそう言い、口を閉じた。

 今、宏人の目の前には異様な人物がいる。

 宏人はその人物に、これまでの経緯を話した。


 その人物とは──七録菜緒。


 平凡な家庭で生まれ育った──『神人』。


「へぇ……。まあとにかく、あなたたちは相当波瀾万丈な人生を送ってきたってことね」


「まあ……そういうことになるな。え?合ってるよな、凪」


「──で?なんで俺らに過去の話なんてさせたんだよ、七録菜緒。あんたの『神能力(カミノミワザ)』を使えば一発だろ」


 この『神人』である七録菜緒の能力は『世界真理(ゴッド・ノワール)』。


 戦闘系ではない、唯一の『神人』だ。

 その力は全てを見通し、全てを否定出来る最強の能力。

 そう──『世界真理』は、全てが分かる異能である。


「ええそうよ。でも──世界改変系の能力を持っている人に聞かれたんだもの。そりゃあ聞きたくもなるわよ」


「……世界改変系?」


 聞きなれない言葉に宏人は首を傾げた。

 ここ数ヶ月でこちら側の世界の言葉や人物名の大半を覚えたが、それでもやはり世界は広い。


「ええ。例えば……向井宏人──あなたの事よ」


「……?」


「だからね、簡単に言ってあなたの『変化』は世界に『バグ』を起こす能力の一つってこと」


 菜緒がそう優しく教えてくれるが、余計分からない。

 凪は驚いた顔をしている、相変わらず置いてけぼりだ。

 だから少し自分で考えてみる。


 ──この世界に『バグ』を起こす能力。


 確かに、『変化』について今まで妙な事を言ってた神が2柱いた。


 アスファスは──『お前の超能力である変化は、特性を引き継ぐ能力を持っている』


 アルドノイズは──『お前はその能力を十分に使いこなせていない!』


 あらゆる特性を引き継ぎ、宏人はそれで以って攻撃したのにも関わらず、アルドノイズからの一言。

 何か、『変化』には宏人自身ですら知らない謎がある。


「──整理は終わった?宏人くん」


「──え?あ、おう。……心でも読んでた?」


「正解よ。私は知らない事がたくさんあるけど、何でも知れるからね」


 菜緒はそう言い、テヘッとウインクをする。

 そんな菜緒に宏人はこの人は絶対に敵に回してはいけないと思いながら、あははと苦笑いした。

 デジャブ、まるで菜緒は瑠衣の上位互換だ。


「──で、本題だ。あんたの弟はどこで何をしている?調べたところ表から消えたらしいな。何があった?」


「……弟?」


「ああ、七録菜緒の弟、七録カナメ。『爆破』の超能力者だ」


「……兄弟揃ってすげーな」


 凪はそのまま菜緒に詰め寄る。

 こうして見てるとまるで凪が苛立ちながら菜緒に詰め寄っている風に見えるが、実際凪は何も思っていない。

 ただ、急いでいるのだ。


 何かに。


「まあ落ち着きなって凪くん。心配しなくてもその内くるよ。だから今日は帰りな」


「その内とはいつだ?」


「その内はその内よ。ドッキリがあるから彼らの意思を尊重させてもらうわ。安心なさい、一週間以内には来るから」


 菜緒がそう言うと、凪はさっさと踵を返してこの部屋を出ていった。


 この──豪華な牢獄から。


 この部屋には何でもある。

 何ものでも、注文すれば何でも出てくる素敵な部屋──しかし、ここからは出られない。

 厳重な整備のもと、ここを守護しているのはこの表の日本での最強クラスの能力者2人と、1人の超能力者。


 今日、宏人と凪がここに来た理由、それは──何でも『知れる』七録菜緒に、河合凌駕の完全な復活の手順と、その弟の居場所。


 河合凌駕の復活の手順、それは至極単純──『蘇生』の能力者に蘇生してもらう。

 『蘇生』の能力者は凌駕も然り、それなりにいる──が、どれも『蘇生』期間は死んでから5分以内。


 凌駕の死は、もう半年前。


 セバスから逃げ帰ってきてからすぐに蘇生しても、間に合わなかっただろう。


 だが──『蘇生』の能力者を、『超能力者』にするとどうだろうか。


 なんでも知れる菜緒曰く──


『超能力者をもう9人殺したら、枠の補填のため神ノーズが動き才能ある者を超能力者に選びます。そして補填される中にはもちろん──『蘇生』の能力者がいます』


 だから、宏人と凪は──『超能力者』をもう9人殺さなければならない。

 

 否、殺す。


「……あ」


 そこで宏人は思い出した。


「凪の話も終わったし、『バグ』って何か教えてくれ。というか今まで凪と凌駕と狂弥たちがどんな事をしてきたかも教えてくれ!」


 宏人が身を乗り出してそう聞くと、菜緒はうふふと笑った。

 宏人もあははと笑う──瞬間、宏人の意識は途絶えた。


 *


「──は?」


 気付くと、宏人は元『YES』の自分のベッドで寝ていた。

 ……意味が分からない。


「いや、え?──あ、凪」


「起きたか宏人」


 宏人のベッドのそばで本を読んでいた凪はパタンと本を閉じて反応した。

 そして困惑している宏人を見てはぁとため息を吐く。

 なんかイラッとしたが流し、起き上がって部屋から顔を覗かせる。

 誰もいない事がよく分かるほど人の気配がしない、宏人は不思議に思いながら凪の顔を見た。

 みんなは今、仕事中だろうか──そんな事はともかく。


「──で、俺は何でここに?」


「七録菜緒にぶっ飛ばされて気絶しただけだ」


「いやそれが意味不明なんだが。あの人戦闘能力皆無って自分で言ってなかったか?」


 宏人がそう言うと、凪は更に深くはぁとため息を吐いた。

 やられた身からすると何も言えないが、それでもくるものがある。

 しかし話を進ませるため堪え、凪に喋らせる。


「七録菜緒は確かに戦闘力はない──だが、それは『戦場』になると違う。鉄の塊、戦闘兵器対策の防壁ですら、『存在』の縫い目を見通し、完全に破壊する。生物だって例外じゃない。つまり──あの人は最強だ」


「なるほど……いやなるほどじゃなくて。あの人に護衛絶対必要ないやん。凪、戦ってきたんだろ?」


「いや──やめた」


「……え?」


 すると凪は顔を伏せた。

 そんな凪を見て、宏人は思う。

 そういえば、凪のこの血表情の時はいつだって『過去』──いや、前回以前の『パラレルワールド』を思い出している時だ。

 だから、今、凪に声をかける正解答は──


「──凪」


「?」


 宏人が名前を呼ぶと、凪は首を傾げて続きを促す。


 そして、宏人は言った、凪に──この世界に、宣言するように。


「絶対に、凌駕を生き返らせような」

 

 ──そして、宏人は笑った。


「手始めに、アスファスをどうにかしよう」


「ああ、そうだな」


 宏人がそう言うと、凪も乗った。

 

 アスファス──今のところ、何をするにも一番邪魔な存在だ。

 生捕りにし情報を吐くまで拷問か、それともどうにかして仲間に引き入れるか、それとも──


「殺すぞ」


「──だよな」


 そう、もう宏人は決めた。

 

 アスファスを──殺す!


「Gottmordの始まりだ──ッ!」

 

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