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超能力という名の呪い  作者: ノーム
間章 Missing story
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115話(神サイド) 5.5章②


 宏人と凪、エーデンでアルドノイズを封印した後、3人はいつの間にか『暗館』へ戻った。

 いや、その時にはもう『暗館』ではなく、別の『世界』となっていた。

 どこか不気味で、だがそこまで危険視するようなものでもない。


「ここは……。ッ!まさか!」


 すると突然凪が叫んだ。

 その時にはもう、手遅れだった。


「は?」


 宏人の目の前に、いきなり刃先があった。

 死に際で神経がフルに働いているのか、やけにスローモーション、だが身体は対応出来ない現実。

 宏人は体の至るところから一瞬で冷や汗を出す。


 ──何かないか何かないか何かないか!何かないか!!!


 ──対応は不可能。

 ──押し返す事も不可能。

 ──『変化』も、間に合わないッ!


「『強運』!」


「──ッ!」


 エーデンが、そう叫んだ。

 すると、鎌はまるで最初からそうであったかのように軌道を変え、明後日の方向へ振り払われた。

 宏人は一瞬何が起こったのか分からずボーッとする。


「向井宏人ッ!」


「──はっ」


 凪に名前を呼ばれた瞬間我にかえり、取り敢えずバックステップ。

 一体、今の攻撃は誰からのものか。

 分からない。

 だが、今この状況が大変不味いことは分かる。

 アルドノイズと戦った宏人だから分かる、今の攻撃はアルドノイズをも上回る。

 まさに、神がかった神の真技──ッ!


「……おい、どうしたよ『死神』よ」


「……新野凪、アルドノイズ様はどこだ?答えようによっては殺す」


「殺した」


「……ぁ?」


 凪はそこで一白置くと、声を大きくしはっきりと言った。


「だから──アルドノイズは俺が殺した」


 突然の静寂。

 宏人は凪が何を考えて今の発言を言ったか分からない。

 だが不味いのだけは、さっきから直感でビリビリと感じる。

 あの鎌──『死神』の鎌は、とくにヤバイ。


「は、はは……はっはっはっはぁ。──死ね」


 瞬間、セバスは一歩踏み出し──一瞬で凪の元へ。

 流石の凪も顔を引き攣らせながら『空間圧縮』にてセバスの空間を破壊。

 セバスは大きく飛ぶが、避け切れなかったのか腹から盛大な血が舞う。

 腹が抉られたのだ。

 人間、この出血量じゃ生きていけない。

 勝った。

 だが──セバスの腹が、まるで動画を逆再生したかのように、どんとんと回復していく。


「ありえねぇだろッ……!」


「宏人!今のうちにここを出るぞ!」


 凪が叫んだ瞬間、宏人は一瞬で理解し駆け出した。

 

「エーデン!『強運』に死ぬ気で集中しろッ!しなきゃ死ぬぞ!」


「はいぃ!『強運』!『強運』!『強運』!『強運』!」


 エーデンは泣き叫びながら『強運』を連発する。

 『強運』についての詳細は一切分からない宏人だが、先程の戦いでおおよそは掴めている。

 それは、全てエーデンの生存が叶うかどうかというもの。


 そう──例えば。


「グッ!」


「宏人っ!」


「気にすんな!集中しろ!」


 エーデンの悲鳴に、宏人はつい声を荒げながら答える。

 今、セバスが『鎌』をエーデンに向かって投げ、それを宏人が庇ったのだ。

 とっさに右手を『アルドノイズの手』に『変化』を解除し、その手自体を『盾』にしたのだ。

 だがそれを呆気なく『鎌』は突き破り、宏人の右手さえもぶっ飛ばした。

 宏人の右腕から大量の血が噴き出す。

 

 そう、例えば、なぜ宏人は先程エーデンの『強運』で息を吹き返す事が出来たか。

 それは今、この瞬間、エーデンを守るため、盾になる未来があったからだ。

 これは宏人の憶測でしかないが、現状と一致している。


「……向井宏人と言ったか、大した者だ。人というのはそう簡単に他人を守れるものではない」


「ありがとよ『死神』。あんたなら死んでもアルドノイズを守りそうだな」


「……当たり前だ。今までも、これからも」


「ははっ……」


 セバスの言葉に、宏人は小さく笑った。

 それが気になったのかセバスは『鎌』を手元へ戻した。

 そして見る、見てしまう。


 ──宏人の血痕を。


「──まさか」


 セバスは一瞬で宏人の腕を拾い上げ、匂いを嗅ぐ。

 

 顔が、歪む。


「宏人!できたよ!」


 エーデンの方を見ると、確かにこの『世界』に『穴』が出来ていた。

 つくづく『幸運』様々だ。

 宏人は振り返らず『穴』に向けて走る。

 振り返ってなどいられない。


 ──もうセバスは完全に回復していて、今宏人に向かって再度『鎌』を投げようとしているなんて、見れるはずがないッ!──


「宏人ッ!避けろオオオオオオオオオオオオ!」


 凪が今までで1番大きな声を出す。

 だが宏人は避けられない。


 だから──ッ!


「『変化』解除ッ!」


「──ッ!」


 次の瞬間、『鎌』は一瞬でセバスの元へ戻っていった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ──」


 宏人は『変化』を解除し、完全な()()()()()()()()()()()姿()に成り防御力を上げたのにも関わらず攻撃を辞めたセバスを見て不思議に思う。


 ──いや、思ったが、思い出した。


 セバスは、アルドノイズをこの上なく敬愛しているという事をッ……!


「ッ──」


 宏人、凪、ニューマンの顔に冷や汗が垂れる。

 

 ──まずい。


 これは3人の共通の感想。

 全く同じ事を考えていた。

 当たり前だ──目の前の、セバスを見れば。


 宏人は、いくら焦っていたといっても、絶対にやってはいけない行為を犯した。

 セバスが宏人の右手の匂いを嗅いだのは、アルドノイズと似た匂いだったから。

 セバスは最初から宏人を怪しんでいた。

 だが──まだ、誤魔化せた。


 あの時まではッ!


「アルドノイズ様ァァァァァァァアアアアア!」


 ──セバスが、来る!


「宏人、早くしろ!死ぬぞ!」


 凪が『穴』の前で必死に叫ぶ。


「ッ──!」


 それに答えるように、宏人は駆け出す。

 『変化』を使い、より早くなれるようなものに足を変える。

 直感と本能での行動だ、今自分の姿がどうなっているのか分からない。

 もしかしたら何も変わっていないのかもしれない。

 もしかしたらアルドノイズと融合した姿に加え、足だけライオンやらチーターの足に成っている滑稽な姿かもしれない。


 ──そんな事はどうでもいいッ!


 駆けろッ!

 もっと早く──ッ!


「宏人、飛び込め!」


 ついに、宏人は『穴』の目の前に来た。

 ──セバスも、宏人の真後ろに追いついた。


「──ああ。すまん、凪」


「──は?」


 宏人は、『穴』の前で待っていた凪を、押した。


「ふざけんな宏人!早くこっちへ──」


 そこで凪の言葉は完全に途絶えた。

 あとは、今の状況を飲み込めていないニューマンを──ッ!


「──がはッ!」


 ついに宏人は『鎌』で背中を斬られた。

 首を狙えた位置からの背中。

 

 ──セバスは、宏人をすぐに殺す気はないッ!


「行けええええええええええ!ニューマンッ!」


「ひ、宏人は!」


「早くしろ──なっ!?」


 ──瞬間、躊躇って突っ立っていたニューマンの、両足が吹っ飛んだ。

 セバスの一瞬の攻撃。

 何物でも切断する最強の攻撃に、ニューマンはやられた。


「あ──ァァァァァァァアアアアアッ!」


 ニューマンは叫ぶ。

 突如失った自分の両足の付け根を必死に押さえつけながら。


「馬鹿野郎!そのまま這いつくばってでも出ろ!」


 宏人は背中から血を吹き出してながらニューマンの元へ走る──が。


 『死神』は、そんな事を許さない。


「ガッ!?」


 宏人は、今度は左腕を切断された。

 だが叫びは上げない。

 今、叫べば、ニューマンは助からないッ──!


「あ、あれ……?」


 宏人は、突然地面に倒れた。

 倒れてしまった。

 大量出血のせいか、それとも先程の戦いの疲労か。

 それとも神と融合した影響か。

 分からない──分からない分からない分からないッ!


 そして──決着はついた。


 目が己の血に染まり、目の前の景色がよく分からない。

 だが、ニューマンが泣き叫びながらセバスの足を掴み、必死に何かを講義しているのは分かる。

 それを見て、察する。


 ──今、セバスの『鎌』は宏人の首元にある。


 そう、今から、死ぬのだ。


「は……はは。結局、何も出来ず仕舞いか」


 自分の結末に、笑う。

 笑うしかないだろう、まさかこんなに自分は呆気なかったんだと分かったのだから。


 ……。


 それから暫く経ったが、何も起こらない。

 目を開け、必死で目を凝らして状況を見る。


 そして、把握した。


 ──セバスは、泣いていた。


 セバスは『鎌』を落とし、宏人の頭を掴んで無理やり起こす。


「貴様がアルドノイズ様を奪った事は絶対に許さない」


 宏人は必死に体に鞭打って抵抗しようとするが、体がいう事を聞かない。

 いや、聞けない。

 既に満身創痍の状態だ。

 口を開くことすらままならない。


「だが……貴様がアルドノイズ様を宿している事もまた事実」


 宏人は必死に目を見開いた。


 ──そこには、涙を流しながら宏人の頭を掴む──セバスがいた。


「少し、考えさせてもらう」


 宏人はそのままドサッと落とされた。


 宏人は倒れ込んだ。

 宏人の隣には──凌駕がいた。

 先程まで、気付かなかった。

 宏人の足元には、凌駕と美琴の──死体が、血の海を泳いでいた。


「待っ……て」


 宏人はそのまま意識を失った。


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