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超能力という名の呪い  作者: ノーム
六章 アスファス親衛隊編
118/301

111話(神サイド) 正体


 対立するカミルドと黒夜の横を、急速な何かが通り抜ける。


「ガッ!?」


「「ッ!?」」


 それは宏人にぶち当たり、吹っ飛ばした。

 奇声を発しながら転がる宏人を横目に、黒夜とカミルドは警戒を強め辺りを見渡す。


 するとそこにいたのは──


「向井宏人、落ち着け」


 ──凪。


 新野凪。

 能力名──『模倣者』。


「『魔弾』ッ!」


「父さん!『破矢』!」


 カミルドは凪にノータイムで同時に発射。


 悪寒、恐怖、本能、どれでもいい。

 何かが、カミルドを突き動かせ、凪に向かって攻撃したのだ。


 それに対し凪は『空間切断』と呟き、空間に裂け目を入れなんとはなしに対処した。

 そんな凪に、カミルドは緊張を高める。

 さまざまな神の『カミノミワザ』を操るこの男に、勝てるビジョンが見つからない。

 

 ──『空間切断』。


 それは、その能力は、『力神』ソクラノトスの『カミノミワザ』。


「ガルル……ッ」


 そして、ついに──宏人が動き出す。


「ケモノか」


「ガアアアアアアア!」


「いや──哀れな子羊か」


 凪はそう呟きながら、襲い掛かる宏人に戦闘態勢を取る。

 そして楽しそうに手をクイクイとする。

 まるで──今まで何回もやってきたかのように、慣れているように。


「久しぶりにやろうか、宏人」


「『ガアアアアアアァァァァァア』!」


 宏人は叫びながら『無重力』により宙を舞う。

 それと同時に『変化』にて手と足を『銃』に変え──撃つ!

 空中より放たれる何十もの弾丸が、地上へと無慈悲に注がれる。


「ちょッ……!それは勘弁ですッ!」


「あはははは!やっぱ宏人兄さんすげー!」


 カミルドと黒夜は一目散に逃げる。

 それを凪はなんなく『空間切断』により回避。

 弾丸の雨が止む。

 それと同時に凪は『空間切断』によってこじ開けた空間に手を入れ──


「『空間切断』」


「ッ!?」


 そこからさらに『空間切断』。

 宏人の真後ろの空間に使用し、自分が手を突っ込んだ空間と繋げる──!

 

「堕ちろ」


「──ッ!」


 そして凪はその空間に『流水群』!

 神水を纏ういくつもの隕石を、避けようのない空間に投入。

 宏人はモロに全て食らい、地へと叩きつけられた。

 宏人の身体の至るところが壊れた生々しい音が響く。


「……宏人兄さん?」


 そこから数秒、数十秒経っても、宏人は起き上がらない。

 そんな宏人を心配するように、不安そうや黒夜の声が響く。


「あなた、新野凪ですよね?」


 そんな黒夜をよそに、カミルドは凪に話しかけた。

 凪は無言で頷く。

 

「では、さっそく言わせてもらいますが──」


「──ッ!?」


 カミルドが話している途中、殺気を感じた凪は咄嗟に退避。

 するとその一瞬後、自分の首があった部分をオルグトールの剣が通り過ぎた。


「……何の真似だ?」


 凪はそう言った後ため息を吐いた。

 そんな凪にカミルドは舌打ちをしながら凄む。


「アレは僕の復讐対象です。邪魔しないでいただきたい」


「そうは言ってもだな、宏人はお前じゃ対処出来ない。──死ぬぞ?」


「やってみないと分からないでしょう。それに僕は父さんという─ッ!」


 瞬時、凪とカミルドは話を辞めて横に跳ぶ。

 だがカミルドは一白遅かったのか、半身に攻撃を受ける。

 攻撃──地獄の業火。

 放った者は──宏人、否。


「アルドノイズ。目が覚めたか」


 そう、凪の目の前に悠然と佇んでいるのは、アルドノイズ。

 宏人の身体を『器』とした姿の。

 そんな宏人──アルドノイズは苦虫を噛んだ顔をしながら、凪を睨みつけた。


「……ああ。癪だがな」


「……?どういうことだ」


「お前には関係ない。黙って戦え。『バースホーシャ』」


 アルドノイズは容赦なく『カミノミワザ』を連射。

 なんなく凪は対処するが──カミルドが動かない。


「チッ……!」


 凪は『空間切断』によりカミルドを回収、そしてそのまま『重力操作』で以って黒夜にカミルドを渡した。


 マトモテリオの『カミノミワザ』──『重力操作』。

 

「わっと」


 黒夜は自分に向かってきたカミルドをキャッチ。

 その見事な曲線と、受け取った時点での衝激の軽さから『重力』的な異能を使ったと理解する。

 それと同時──カミルドの右半身が焼け焦がれていることも分かった。

 

「ッ──!」


 カミルドは痛みを堪えながら呻く。

 そんなカミルドを見て、黒夜は──無感動。


 そう、黒夜は宏人以外どうでもいいのだ。


 ──瞬間。


「チィィッ!向井宏人、干渉するな──かはっ……!」


 アルドノイズが、凪の『模倣者』によって作られた『カミノミワザ』で押されていた。

 

 宏人の身体が、どんどんと痛め尽くされていく。


 黒夜はチラリとカミルドを見る──気絶している。


「……」


 黒夜はそのままカミルドをそっと地面に置き、歩き出した。

 

 何度も、何度でも述べよう。


 黒夜という少女は、向井宏人以外どうでもいいのだ。


 それすなわち、向井宏人はどうでもよくない。

 向井宏人だけは、絶対に守らなくてはいけない。

 

「ナギッ……!」


 凪はさきほど、宏人を傷付けた。

 理由は単純、宏人の理性が失われていたから。


 しかしそんなこと──まったく関係ない。


 黒夜にとっては、まったく関係ないのだ。

 

 だから──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「凪。ちょっと待って。宏人兄さ──宏人様の対処は私もやります。あなたは過剰過ぎて見ていて不安です」


「……相変わらず、お前の宏人好きには困ったものだな」


 そう──黒夜(くろや)

 牙咲(きざき)黒夜(こくよ)は、別名──セカンド。


 アスファス親衛隊にスパイとして潜入した向井宏人の──スパイ。


 *


 アルドノイズが向井宏人の身体の自由を掌握するのと同時刻──アスファスは気付いた。


「フフッ……」


 アスファスは堪えるように口元に手を置いた、が……。


「フハッハッハッハ!やはり!やはり貴様はまだ生きている──アルドノイズ!」


 アスファスは涙を零すほど笑う、笑い続ける。

 最近音沙汰が一切なく、何かしらあったかと思われていたアルドノイズの気配を感じた。


 つまり──アルドノイズは、アスファスの好敵手は、まだ生きている!


「待ってろアルドノイズゥ!──決戦の日は近いぞ」


 アスファスは、笑う、笑い続ける。

 

「あはは。アスファス壊れたね、エラメス」


「口を慎めダクネス。アスファス様は今、幸福絶頂にあるのだから」


 *


 アルドノイズが向井宏人の身体の自由を掌握する直前──宏人の精神世界にて。


「俺の方が頑張った──努力した方がいい、か。なるほど。シンノ凪か」


 アルドノイズは少し思考し、黙る。

 今──この身体、この状況で、勝てるか否かを。

 そんなアルドノイズの思考を破るように、宏人は言った。


「んじゃ、凪によろしく言っといてな」


「……は?」


「そしてぶっ飛ばされてここに戻ってこい。俺が俺の身体を使うのは、それからでいいぜ」


 ──瞬間。


 アルドノイズは、宏人の身体の主導権を握っていた。

 そう、宏人が突然抵抗を辞めたのだ。

 凪に、新野凪に──勝てるものなら勝ってみろ、と──


「ふざけるなよ……向井宏人ッ!」


 アルドノイズは、怒りとともに、地獄の業火を撒き散らかす。

 そして、証明するのだ。


 たとえどんな状況にあろうと、神は人間如きに遅れをとらない、と。


「アルドノイズ。目が覚めたか」


「ああ──癪だがな」


 まるで向井宏人が、自分を試しているようで。



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