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超能力という名の呪い  作者: ノーム
六章 アスファス親衛隊編
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109話(神サイド) 死者


 ある日の空いた時間、宏人と凪はともにのんびりとスマホを弄っていた。

 こんな世紀末になっても、スマホという科学技術が生きている理由は、『復元』の能力者や『開発』、『複製』といった便利な能力者がいるからである。

 まあその能力が発症したおかげでこんな世紀末な世界になったのだが。

 そんなことはともかく。


「なあ凪、なんで『YES』のメンバーは『呪い』を使えていたんだ?」


 宏人は、ずっと気になっていたがいつ聞こうかタイミングが掴めなかった質問を、今した。

 それに対し、凪はのほほんと答える。


「死んで」


「死んで!?え?これ禁句だった?」


 宏人が若干涙目になってオロオロすると、凪は慌てて補足した。

 焦っている凪を見るとは久しぶりである。


「違う違う。死んで手に入れたってこと」


「……余計意味が分からんのだが」


 そんな宏人の質問に、凪ははぁとため息を吐いた後、言った。


「よーするに、『呪い』の獲得条件は死ぬことだ」


 *


「……ネクロマンサー。要するに死霊術師ですか」


「ああ、死者復活の業。だがその復活とは蘇生の意味を指さない、悍ましい死体の姿で自我なく彷徨う怪物と化すこと……それをここで使うということは」


 カミルドと宏人の足元から、何本もの手が生える。

 その手は色々あり、指が欠けているものもあれば、剣を持っているものもある。

 そして遂に地上へ這い上がってくる。

 その姿は死体がそのまま動いているようなものも、スケルトンのように骸骨姿のものもある。

 死んでから年月が経っているなど関係があるのだろうか。


「……しかし、さすがにここに直で土葬しないんじゃないですか?」


「まあ、そこんところ今はどうでもいいだろ。それより──おっさん、あんたは何者だ」


 カミルドの質問を宏人はテキトーに流し、死者たちの奥に佇む老人へと鋭い目を向けた。

 その老人の表情は、笑っている。

 宏人たちを嘲るような笑みではない、死者たちへと向ける優しい目。


「おっさんではない、フィヨルドだ。まあ確かに、私の名などどうでも良かろう。私はただ……無残に散ってしまった哀れなこの不死者たちの復讐を、叶えたいだけなのだから」


「その復讐とやらに俺らは全くの無関係じゃないのか?」


「同感です」


「無関心も見て見ぬふりもまた罪……。私は非常に心苦しいのです。将来に可能性のある、この世紀末的な世界を終わらせ、世に平和をもたらしてくれるであろう若者を罰するというのは……しかし、この死者たちには──」


 そこで宏人は周りに耳の奥を叩くような鈍い音を発した。

 自分とカミルドの周りの重力を何十倍にもしたのである。

 それにより、宏人たちの周りにいた『ネクロマンサー』によって蘇えった死者たちが粉々に砕け散る。

 フィヨルドは目を大きく見開き、口を閉じた。


「どーでもいい。全くどーでもいいね。死者に口無し死人に妄語。俺ら生者は死者の屍を踏み潰して前に進む……なんて真面目腐ったことを言うつもりはないが──」


 宏人は河合凌駕を生き返らせようとしているのだ。

 自分が何か説教垂れたことを言える資格はない。

 ……なんてことも建前で、ぶっちゃけどうでもいいのだ。

 

「話は通じないことは分かった。そしてお前は俺らを殺そうとしてきた、だから殺す。それだけだ」


「あなたはまたもや大罪を犯した。まさか哀れな死者をさらに殺し尽くすとは。私が殺して(浄化して)あげましょう」


 こうして──戦いの火蓋が切られ……る前に。

 

「殺し合う前に、一つ質問させてもらえませんか?」


 カミルドは、そうフィヨルドに聞いた。

 フィヨルドは笑顔で先を促すように頷く。

 

「……あなたは、どこの神の所属ですか?」


「ソウマトウ様です」


 ──瞬間、死者たちが宏人とカミルドを襲い始めた。


「チッ!容赦ねぇな!」


「まったく同感です!」


 宏人は『重力』により向かってくる死者たちを潰し尽くす。

 死者といっても所詮は物体。

 重力に抗えはしない。

 だがしかし、これにより余計分からなくなる。

 なぜフィヨルドに『重力』が効かないのかと──


 *


 カミルド・ミグナスの能力は二つある。

 一つは『破矢』。

 神の一柱である『知神』ニーラグラと同じ名の能力である。

 しかしニーラグラのはカミノミワザで、カミルドのは『超能力』。

 この違いは大分大きいが、神と同じ能力には変わりないため、名に『カミ』が含まれた。

 そしてもう一つの能力……それは──


「『眷属』!オルグトール!」


 『眷属』。

 その力は血縁関係、従属契約を行った者を召喚する能力。

 『NoS』に入隊した際アスファスに無理やりねじ込まれた能力。

 当時のカミルドは使い方の分からない不気味なこの能力を嫌悪していたが──今となっては、感謝しているくらいだ。


「行くよ!父さん!」


 なにせ──アルドノイズによって殺された父親と、また会えるのだから。


 *


 ──沈黙。


 ついさっきまでは蠢く死者たちで埋め尽くされていたコロシアムは、閑散としていた。

 死者はそのまま倒れ、もう動く気配はない。

 その中心で、宏人とカミルドは死者を踏み越え、フィヨルドの目の前へと歩いていく。


 そこで、フィヨルドはパンパンと大きな拍手をした。


「やはり、あなたは強い。向井宏人」


「そうだ、俺は強い。なにせ大体人からもらった能力だからな。だから──俺はお前を殺せる。そしてまた強くなれる。そしてまたお前みたいなクソ野郎を殺せるんだよ」


「その生き方は自己中心的ですね。それに明るい未来が見えそうにない。あなたは悲しい人だ」


 宏人はそのままフィヨルドの目前まで来て、フィヨルドの顔をまじまじと見た。


 その顔は──


「私は対して強くありませんよ。ほら、もう殺せる」


「確かに、死者たち一人一人の力は対したことありません。ですがそれを量産できるとなれば話は別です。あなたはたった一人で軍隊なみの力を宿していることになります。申告すればあなたこそ明るい未来があったでしょう」


 カミルドはそう言いながら、悲しそうな顔をして続ける。


「なぜ、あなたはこの道を選んだんですか?」


「……」


 宏人はそんなカミルドの言葉を聞いて思う。

 カミルドも、今迷っているのだ。

 顔には出さずとも。

 宏人と共闘する理由は、宏人からアルドノイズを取り出し、そのアルドノイズを殺すためである。

 復讐が叶う唯一の道だ。

 しかし宏人と共闘するということは将来的に……追われる立場になるということ。


「それは──」


 フィヨルドが口を開く。

 思わず、宏人はフィヨルドの口からどんな言葉が出てくるのか気になってしまった。

 だから──気付かなかった。


 ──とす。


「──え?」


 宏人は、何者かに背を手で貫かれた。

 

 理由は明白。


 『能力結晶』は、心臓を取り囲むように出来ている──!


「死者よ、抜き取りなさい」


 フィヨルドの口から出てきた言葉は、これだった。


 宏人は、フィヨルドが操る死者に──瞬間、宏人の意識は途絶えた。

 

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