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超能力という名の呪い  作者: ノーム
六章 アスファス親衛隊編
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107話(神サイド) 再戦


「宏人、ちょっといいかい?」


「あ、はい」


 創弥と会話していると、宏人はアスファスに呼ばれた。

 アスファスの背後に付き従い、かつて『神格会議』を行ったテーブルに付いた。

 アスファスはその席に座ると。


「私はこの組織で何を成し遂げたいと思う?」


「この組織で、ですか?」


「何だ?まるで私個人で成し遂げたいものを知っているかのような口振りは?」


「いや……俺元『NoS』なので」


「ああすまんすまん、あの時の目標はアルドノイズを倒す事だったな。そうだ、この組織で、だ」


「そうですね……」


 宏人は腕を組んで考える。

 記憶の片隅にかつて凪と同じような会話をしたのが蘇るが、すぐに消す。


「人類の平和、ですかね?」


 宏人は無難にそう答えた。

 それに対しアスファスは──驚いたような顔をし、あっはははははと盛大に笑った。

 宏人は若干困りながら小さく首を傾げる。


「ああすまんね、あまりにも的外れなもので……いや、本音ではないのだろうけど」


「……ばれましたか」


「流石にね。私はそんな聖神ではないよ」


 宏人は顔を歪ませて答えた。


「……人類の掌握、とかですか?」


 宏人は偽りなく、かつて凪と会話した時と同じ事を言った。

 あの時80点と言われた回答だが、別に100点を目指しているわけでもないし、もしかしたら神ノーズへの回答が間違っていたという線もありうる。

 だから、宏人はそう言った。


「うーん……。まあ、70点かな」


「下がったぞ……」


「うん?」


「ああいや、何でもないです」


 宏人はあははと笑って逃げた。

 まあ、誤差10点だ、凪の見解は正確と言っていいだろう。

 そんな事を考えていると、アスファスは答え──残りの30点分を言った。



「私の目的はね──■■■■■■■■■■」



 アスファスの回答を聞いた後、宏人は創弥のところへ戻ってきた。

 すると創弥は笑いながら宏人を向かい入れた。


「宏人!その顔、アスファス様がこの『世界』に降り立った目的を聞いたな!」


「ああ、よく分かったな」


「で、お前はどう思った?」


 創弥はたまに真剣な表情をする。

 そして、今、創弥の顔は真剣そのもの。

 だから、この返答は間違えてはいけない。


「さすが、と」


 そんな宏人の答えに、創弥は盛大に笑った。


「……」


 宏人はデジャブを感じ、ため息を吐いた。


「人類を滅亡させる事だ、ねぇ」


 創弥が一人で笑ってる中、宏人はさっきアスファスに言われた言葉を反芻した。


 掌握する、滅亡させる……そりゃあ減点だ。


 *


「はぁ……」


 アトミックは、『破壊者』捕獲後、更衣室でため息を吐いた。

 誰もいないとは言え、アトミックが他人に弱気を見せる行為をするのは珍しい。

 それくらい疲れているのだ。

 なにせコロシアムで優勝したからだ──ではなく、ただ単に優勝した事により周りから鬱陶しいほど話しかけられるのである。

 ある者は金を貸してくれと頼み込み(優勝賞金1000000円)、ある者は求婚してき(優勝賞金1000000円)、ある者は──まあ、鬱陶しかったのだ。

 お陰で宏人たちと連絡を取り合う時間に間に合わなかった。

 そりゃあ周りを吹っ飛ばせば一瞬で着くが、それはしない。

 アトミックは、非戦闘員は絶対に傷つけないというルールを自分に課しているからだ。


『オイオイオイオイ!なんじゃこりゃあああああああああ!?』


 今、アトミックの式神の中に放り込んできた『破壊者』が目を覚ましたのか、アトミックよ頭の中でそんな叫び声が聞こえてきた。

 ……鬱陶し過ぎる、アトミックはそう口にするのをグッと堪えた。

 さっきのため息は思わずしてしまったが、例え誰に見られていなくても見られる可能性があるのなら絶対に弱気を見せるような事はしないのだ。


 だが、今とてもため息がしたい。


 アトミックは周りをきょろきょろと見る。

 当たり前だが人はいない。


 そして──


「はぁ──」


「アトミックさーん!サインくださーい!」


 アトミックのため息の途中、見ず知らずの女が更衣室に侵入してきた。

 

 もちろん──ため息を見られた。


「あ、疲れてますねー!これどーぞ!私よくオールするんですけど、これあればまったく疲れないてゆーか……どうしまし──!?」


 瞬間、女は更衣室のロッカーに叩きつけられた。

 女がアトミックに差し出そうとした栄養ドリンクが粉々に粉砕し、中身が床に溢れる。


「え、ええ!?一体なにが……!?」


 女は恐る恐るアトミックを見た。


 アトミックの顔は──怒りに染まっている。


「な、何でそんなー!?た、ため息をしたのを見たから!?」


「ふむ!それもある!」


「ふむ!?それもある!?」


 女は困惑しながらもちゃんと反応する。

 肝が据わっている──それだけだとアトミックは思わない。

 実際、アトミックが怒っている理由はため息を見られたなんてくだらない事ではない。

 まあ怒ってはいるが。

 しかし、前述した通りアトミックは非戦闘員を傷付けはしない──だが、この女は例外だ。


 なにせ、アトミックはため息をする前に辺りを警戒したのだ。


 アトミックが警戒したのにも関わらず──気配を掴めなかったのだ。


「ふむ、何者だ?」


「私は瑠衣ちゃんで──ふわあああああああああ!?」


 女──瑠衣がピースしながら言うと、ピースした指をガシッと掴まれた。

 少し逆方向に曲がっていて痛い。


「な、なにするんですかぁ!」


「何が目的だ仲間はどこにいるその数はどれほどだ貴様の超能力は?」


「そんな事言うわけな──言います」


 瑠衣は自分の指の悲鳴を聞いた瞬間──ゲロった。


 *


「んで!ゲロったと?」


「はいぃ……」


「ったく、とんだお荷物だ」


 瑠衣は涙をポロポロと落としながら祐雅に説教されていた。

 今まで、海野維祐雅、池井瑠衣、七録カナメの三人は、アトミックを見つけようと三手に分かれており──瑠衣が発見し、単独で乗り込み──失敗に終わったのだ。

 しかも瑠衣がアトミックにコンタクトを取った理由が、コロシアム優勝者のサインが欲しい──もう怪しさマックス。

 普通の人間は、コロシアム優勝者を怖がるどころか存在すら知らない。

 サインなんてもってのほかだ。


 しかし──カナメはニヤリと笑った。


「でも、見つけはしたんだ。さっさ倒して──『破壊者』を奪い取ろうぜ」


 まだ、この作戦は終わっていない。

 瑠衣が暴露した情報は作戦──というか組織の根本的な物は含まれていないのだから。

 カナメの言葉に、祐雅も瑠衣もニヤリと笑う。


「ああ、俺もあのクソ野郎をぶっ飛ばしたくてしかたねぇ」


「祐雅くんは一度負けてるもんねぇー!」


「ぶっ殺す!」


「きゃー!」


 そして三人は、決意を新たにした。

 しかし、カナメの顔は若干曇っていた。

 

 ──なぜアトミックは、怪し過ぎる瑠衣をそのまま帰したのか、と。


「……ッ!」


 そこで、カナメは気付いた。

 祐雅から既にアトミックは慎重な男、ということを聞いていたからこそ気づけた。


 瑠衣の背中に、小さな発信器が付いている事を!


「まずい!今すぐここを離れるぞ!」


「その必要はない」


 カナメが叫んだ時にはもう遅く──アトミックが現れた。

 そして唱える。

 アトミックの持つ、最強の、相手を戦いの舞台へ上がらせない『式神』の名を──!


「『式神展開『処刑台』」


 瞬間、世界が変換されていく。

 その中で、三人はそれぞれの表情を浮かべていた。


 カナメは苦笑いながらも、やる気に満ちている。


 瑠衣は腰が抜けている。


 祐雅は──満面の笑みを浮かべている。


「さあやろうぜおっさん!リベンジだ!」


「ふむ、やっと年上に対する敬意がないガキをこの世から殺せて私も嬉しいよ」


 そして完成された世界で──アトミックは手を突き出し、言った。


「来い、『処刑人』」

 


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