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超能力という名の呪い  作者: ノーム
六章 アスファス親衛隊編
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106話(神サイド) 最終目標


「神々は、何が目的だと思う?」


「なんだいきなり」


 凪の質問に、宏人は困惑しながら答えた。

 少々辛辣になってしまったのは仕方ないだろう。


 なにせ──ここは葬式の会場だ。


 心は萎えている。

 だが宏人は少し思考し……思った事を口にした。


「神ノーズはお遊び、アスファスは人類の掌握……的な?あとの神は知らん」


「大体合ってる……80点くらいだ」


「自分で言って何だが、そんな薄いか」


「ああ、神々は小学校は愚か、幼稚園にすら通ってないからな」


 凪は真顔でそう言う。

 たまにマジかギャグかわからない奴だ。

 宏人はギャグだと受け取り、取り敢えずははは……と笑った。


「マジなのだが」


「マジか」


「ここ葬式だぞ、笑うのはやめとけ」


「……」


 そんなこんな話していると、良子が話しかけてきた。


「この度は──」


 凪と良子が話し始めたため、宏人は取り敢えずその場を離れた。

 仲間とはいえ、宏人は新参者だ。


 加えて仲間らしいことをする前に死んでしまった。


「80点か……」


 宏人はついさっきまでの凪との会話を思い出す。


 しかし──後の20点がさっぱり分からない。


「それにしても、まさか合ってるとは……」


 お遊び。

 

 宏人は口を引き攣らせながらははは……と笑った。


 *


 『式神展開』、それは人類に許された最大の業。


 使える者が少ないのに加え──強力な式神展開を持つ者も少ない。

 カミルドの式神展開は強力ではないにしろ、十分殺傷力が合った。


 しかし──


「甘い」


 宏人は式神を使うことなく、カミルドとオルグトールを倒した。

 ただ、この『世界』一体の重力を何百倍も上げただけだ。

 もちろん宏人自身には『無重力』をかけ、カミルドにも死なない程度に『無重力』をかけた。


「ばかな……ばかなばかなばかな!まさかきみが本体だったのか!向井宏人!」


 カミルドは悔しそう……なんて言葉じゃ甘いほど恨みがましい瞳を宏人に向けていた。

 オルグトールは死んでいる……いや、もう既に死んでいたのだ。

 オルグトールは、今の今まで操作されていたようだ。


「……?どう言うことだ」


 宏人はカミルドの言葉に気になる点を見つけそう呟いた。

 ──きみが本体だったのか──これではまるでアルドノイズが宏人を『器』にしていたようだ。


 宏人はその旨を聞くと、カミルドははいと頷いた。


「情報屋──神滅教会の情報員から、アルドノイズが元『NoS』の向井宏人を殺し、『器』にしてアスファス親衛隊にスパイとして入隊していると聞いたからです」


「そんな怪しげな奴らの言葉を鵜呑みにしたのか……?」


「何ですかその信じられない物を見るような目は。僕もそんなバカではありません、ちゃんと調べました」


 カミルドは調べた『向井宏人』の情報について言った。


 まとめると、突然強くなり堂々と『神格会議』に乗り込んでき、『アスファス親衛隊』のトップに君臨した……と。


「まあ確かにそれだけだと……クソ怪しいな、俺」


「はい、昔についても調べましたがこれと言った情報はなかったですしね」


「昔、ねぇ……あっ」


 宏人はそこで気づいた。


「そう言えばなんで俺がアルドノイズを取り込んだって知ってんだ?」


「……はい?」


「いやだから、なんで俺がアルドを取り込んだって知ってんの?」


「え、えええええええええええええ!?」


 辺り一面にカミルドの声が轟いた。

 宏人は思わず耳を塞ぐ、それくらい大きな声だった。

 デジャブ。

 宏人はまたやっちまったかと呟き、はぁとため息を吐いた。


「取り込んだんですか!?殺したんじゃなく?」


「なんだよいきなり……?」


「取り込んだんですか!!??殺したんじゃなく??」


「あ、ああ。取り込んだ。殺さず」


 圧がすごいカミルドに宏人は若干引きながら答える。

 するとカミルドの顔が笑顔になった。

 宏人はとにかく困惑する。

 そんな宏人に、カミルドは今までの経緯を詳しく説明してくれた。



 カミルドは神滅教会からアルドノイズが宏人を『器』として『アスファス親衛隊』に所属しスパイをしていると聞いた。


 カミルドの生きる目標はオルグトールをアルドノイズに殺された瞬間からアルドノイズを殺すことだ。


 そのためカミルドはアスファスに頼み込み宏人と同じ任務へ。


 コロシアム観戦中宏人が隣に座った女性と既知らしい反応をしていた事から、カミルドはアルドノイズが仲間と勘違い。


 その事から今日中に仕留めると決め、帰り道で襲う事を決意。


 都合よく宏人が気を失ったため、そのまま──で、今に至る、と。


 

「んで、なんで俺がアルドノイズを倒した事を知ってんだ?」


「それはアスファス様がパーティを開いてないからですよ」


「パーティ?一週間ほど前にお疲れ様パーティやったろ、寿司出てきたやつ。それは違うのか?」


「あれはソウマトウ様がお亡くなりになられたからですよ。仮にアルドノイズが死んだ時のパーティはこの世のありとあらゆる美食が用意されるでしょう。寿司如きでなく」


「お、おう……。って、まじか。あの『幻神』死んだのか。え、それであのパーティ開いたのか?」


「そうですね、アスファス様は正真正銘の神、つまり神ノーズ様の次代を狙ってますからね。兄弟が欠けるという事はライバルが減ることと同義なので」


「それで──」


「というか宏人くん、知らない事多すぎません?話脱線してますよ」


「ああ、すまんすまん」


 宏人は頭を軽く掻きながら謝る。

 確かに今の会話は何も関係なかったと、宏人は今更気付く。

 だがしかし……宏人は八柱目の『幻神』ソウマトウが死んだという情報は定かか確かめたくなった。


「……まとめると、アスファスが喜んでない、つまりアルドノイズは死んでない。そして俺と戦っても一向にアルドノイズの姿に戻らない、そしてお前に勝ってもすぐ殺そうとしない、だから俺はアルドノイズではないと確信……なんというか、薄いな」


「うるさいですね、直感も大切です」


「まあいいか、これで信用してもらえるんなら。……いやちょっと待て、何で俺がアルドノイズではないと確信してたのにあんな怒ってたんだ?」


「復讐相手が勝手に知らん奴に殺されたら怒るでしょう……あなたはそんな事知らないとは言わせませんよ──No.2(カオス)


「ッ!……そうだな。で?取り込んだって事は殺したと同義だと俺は認識しているんだが」


「それは違いますよ、さっきもいいました通り、アスファス様は兄弟が亡くなったら喜ぶのです。そして……神々は既知の人物の『死』を感じ取れる能力を持っている」


「なっ……!それってまさか──」


「そうです、宏人くんの中で──アルドノイズは生きている」


 カミルドはそう言うと手をズボンで払い、宏人に手を差し出した。

 

「僕と協力しましょう、向井宏人くん。宏人くんの『アスファス親衛隊』での『目的』を達した後、僕の『目的』を手伝ってもらいます」


「ああ、そうしてもらわないと困るしな。協力しなけりゃ『アスファス親衛隊』追い出される……だけじゃ済まないだろうし。まあ、理由はそれだけじゃなく──お前の力が必要だ。よろしく頼む」


 宏人はカミルドの手をガシッと握った。


 これで、二人は共犯となる。


 この選択が後に正となるか、誤となるかは誰にも分からない──だが、宏人にとってこれは願ってもない展開だった。


 最近、無理を感じてきた。


 この組織が一番達成しやすいからと言っても、それでもこの『目的』に今のところ手は届きそうにもない。


 だが──カミルドという新しい仲間がいれば──!


「差し当たって、宏人く──宏人の『目的』を聞きませんとね」


 カミルドの目は、今までと打って変わって、正気に満ち満ちていた。


 だから宏人は、言った。



 宏人がこの『アスファス親衛隊』に入隊した、最終目標。



「河合凌駕を生き返らせる」



 かつて、宏人を『YES』(外の世界)に連れ出した、あの少年を。

 

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