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超能力という名の呪い  作者: ノーム
六章 アスファス親衛隊編
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105話(神サイド) 神からきみへ①


「……は?」


 宏人は、いつの間にかここにいた。

 ここに来る前後の記憶がない。

 なのに、まるでここに来る事が決まっていたかのように、違和感が一切ない。

 これは何だ、何が起こっている、自分はどうなる──そんな疑問すら湧かない。

 だがそれが不気味だ。

 そんな自分が、恐ろしい。


「─────────」


「ッ!?」


 頭の中に何かが流れ込んできた。

 だがやはり不快感など存在しない。

 むしろ──幸福感が募る。


 これは──まずい。


 宏人はそう直感してここを抜け出そうとするが──これも直感で分かった。


 ここから抜け出す事は不可能、と。


「───────」


 だから宏人は、この■■■■■に耳を傾けた。


 *


「……ぁ?」


 宏人は目を覚ました。

 そしてすぐに現状を理解する。

 自分は今、気を失っていたのだと。

 なぜならさっきまでカミルドと黒夜と会話しながは歩いていたからだ。

 そこからの記憶がない。

 攻撃を受けたのか、それとも己の体の故障かは分からないが、今はそんな事より現状確認だ。

 宏人は怠い体に鞭を打って辺りを見回した。


 すると──黒夜がボロボロになりながらも必死にカミルドからの攻撃に耐えている。


「……なるほど」


 宏人は頭を指すってみた。

 するとやはり、気持ち悪い触り心地がし、自分の手を確認すると血に塗れていた。


 宏人は、カミルドから攻撃を受けたのだ。


「……その、何だ。気付いてたのか?」


「はい。気付かないわけがありません」


 宏人がそう聞くと、カミルドは攻撃の手を休めて答えた。

 黒夜の息が上がっている。

 黒夜も相当強い部類に入るのだが、やはり経験が足りていない。

 宏人は立ち上がり、カミルドを見つめる。


「黒夜、下がっとけ」


「えぇ……?」


「いいから」


 宏人は無理やり黒夜の前に立ち、戦闘態勢を取る。

 

「黒夜。ちょっとジュース買ってきてくれ」


 そして宏人は200円をノールックで黒夜に渡した。

 当たり前だが黒夜は首を傾げる……が。


「はぁ、はぁあ……わかりゃっした!」


 黒夜は息を整えた後、どこかへ駆け出していった。

 すると、カミルドは一定のリズムで手を叩き出す。


「……拍手のつもりか?」


「ええ、お互い信頼し合っているなぁと」


「今回の任務、明らかに過剰戦略だ。絶対アスファス様にお前から願い出たろ。念のためってな」


「さすがですね──アルドノイズを倒しただけはあります」


 カミルドの笑みが深くなる。

 これだ、これが宏人が気になっていたカミルドの表情。

 特に気にしてなかったが、今になって分かったのだ。

 この笑みは、殺意を必死に抑えている時の表情だと。


「いつから気付いて……いや、知った?」


「ふむ……まるで僕が自力で気付く事はなかったとでも言いたそうですね」


「もちろんそうだ。気付くわけがない」


「それは……まあ、いいでしょう。では、定番の台詞を言わせてもらいます。──それは僕に勝ってからです」


 そう言うと共にカミルドは手を払った。

 するとカミルドの周りにいくつもの『矢』が出現、と同時に発射された。


「なるほど、確かに『破矢』だ」


 宏人は手で顔だけ守り、カミルドに向かって駆け出す。

 

「体の中を『変化』……いや、『戻した』、のでしょうか?」


「さてな?くらいやがれ」


 そして宏人は一瞬でカミルドに詰め寄ると、拳を放つ。

 そんな宏人の至極単純な動きを見切ったカミルドは足の裏から『矢』を発射し大きく飛ぶが──


「『重力』」


「……ッ!?」


 宏人はカミルドを地面に叩きつけた。

 その能力は──ニカイキから奪った、英雄の業。

 カミルドの顔が苦痛に歪む。

 

「この能力は最近手に入れたばっかだからな、まだ情報を手に入れたなかったんだろう──お前に俺のことを話した情報屋は」


 宏人はカミルドの前髪を掴み上げて続ける。


「まあ『超能力』の略奪方法はアルドノイズが独自で調べ上げたらしいから知らなくても当然だろうが。──さて、誰だ?お前に俺のことを話した奴は」


「……言わないと言ったら?」


「お前は今日、何者かの不意打ちに合い突然の死亡、となるだろうな」


「……それでいいよ」


 カミルドはそう言った後、ニヤリと笑みを深めた。


 ──瞬間。


「ッ!?」


 宏人は首元に殺気を感じ、カミルドから離れた。

 すると、目の前の人物に目を奪われた。

 宏人は自分の首をさする──血だ。

 宏人の首から少量の血が垂れた。


 まあしょうがないだろう。


 なにせ目の前の人物は──

 

「死者が出しゃばんなよ、オルグトール」


「さあ父さん!こいつを八つ裂きにしましょう!」


 オルグトールは、生気のない顔で宏人を見ていた。


 *


 黒夜はスキップをしながら街を歩く。

 こんな治安の悪く、しかも深夜帯のこの街で少女一人が行動するのは格好の的だ。

 まあ黒夜の場合見た目は少年だが、この世紀末的な世界でそんな事は関係ない。

 ここに住まう者たちは皆──自分よりも格下の弱者を常に探しているのだから。


「オイ少年、ちょっと待がっ!?」


「お前なにしてくれちゃば!?」


 黒夜は話しかけてくる相手を全て『魔弾』で払い除けながら歩き続ける。

 宏人のジュース買ってこいは、俺がさっさと片付けるからどっか遊んでこい、という合図なのだ。


「ねえきみ、ちょっと止っ──れって」


「ん?」


 黒夜は話しかけてくる相手に容赦なく『魔弾』を放っていたが──受け止められた。

 黒夜は瞬時に戦闘態勢を取る。

 それは常に宏人が使用している型と同じだ。


「その型──きみか」


 黒夜はその人物を見る。

 どこかで見たような……気もしなくもない、という感想だ。

 そんな黒夜を見て、目の前の人物はわははと笑う。

 黒夜は警戒しながらも首を傾げた。


「ああごめんごめん、俺も随分知られていると自負していたが……過大評価だったみたいだ」


 その人物は、黒夜を見ながら。


「俺は七録カナメ。きみの上司の、アトミックと宏人はどこにい──」


 黒夜は先手必勝と言わんばかりに『魔弾』を放った。


 *


 オルグトールの『八戒群』を、宏人は『重力』で叩き落とす。

 『八戒群』とは、八角系の物体を構築するという、一見普通に思えてもその実とんでもない能力なのである。

 『八戒群』で構築された物体は術者と離れても霧散する事はなく、残り続ける、つまり無から有を造ることが出来るのだ。

 それは他の能力も同じだが、使用後は残らない──つまり、『八戒群』は、この世のものではない未現物質。


 そんな物に触れれば──まずい、宏人はそう直感した。


「『重力』……やはりとんでもない力ですね」


 カミルドは二人の戦いを見ながらそう呟いた。

 それに加えて宏人は『無重力』を所持しており、手札は完璧だ。

 だがオルグトールも負けていない、しかし勝ち筋は見えない。

 しかしそれはさっきまでの話。


 今は──


 宏人が『重力』で『八戒群』を叩き落とす。

 宏人がオルグトールの顔面を殴る。

 宏人がオルグトールの首に手を添え──


「させるかあああああああああ!式神展開『矢破異(ヤバイ)』!」


 ──瞬間、『世界』が構築される。

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