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超能力という名の呪い  作者: ノーム
六章 アスファス親衛隊編
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102話(神サイド) 英雄殺し


 深夜のとある山の中──二つの陰が木と木の間を駆け抜ける。


『宏人、そちらの状況はどうだ?』


「問題ない。城坂(じょうさか)がまた一般人を二人殺したくらいだ」


『気を付けろ、奴は正常じゃない』


 宏人は片耳に付けた通信機にコクッと頷いた。

 そんな宏人の様子が気になったのか、黒夜(こくや)は首を傾げる。


「ねーねー、今誰と話してたのー?」


「お前には関係ないだろ」


「あるよぉー。今から共同任務だよ、僕ら」


「……それでも、だ」


 そう会話しつつ、二人はその山の最奥へと到着した。

 かかった時間はわずか数分。

 それだけで東京ドーム3個分ほど有るであろう山を周りきる事が出来──ついに見つけた。


「こちら『変化』。発見しました」


『結構。やれ』


「なんだってー?」


「やれ、だとさ」


「あいあいさー!」


 宏人がそう言うと共に、黒夜は駆け出した。

 山に住んでいるとあるご老人が、どうやら『者』級超能力者なのらしい。

 そんなバカな、と宏人が思っても命令は命令。

 従うしかない。

 

「出てこいクソジジイー!『魔弾』!」


 黒夜はそう言いながら、見ず知らず人の家を平気で壊す。

 得体の知れない物体を何個も生成し、それを投げつける。

 だが──家に直撃する寸前で静止した。


「まったく……これだから血の気が騒ぐ系の若者は」


 そう言いながら、その家から歳はもう七十程の老人が出て来た。

 人類に『超能力』という異能が与えられたのは数十年前。

 その『超能力』に適合出来たのは大体が子供から若い大人までで、それ以上の人間は適合出来ずに大体が死んだ。

 だが──生き残っている者もいる。


「おうおう出てきたなクソジジイ!やるぞぉー!」


 黒夜は老人が出現すると共に、老人に向かっていくつもの『魔弾』を放った。

 だが、やはり寸前で止まってしまう。


「ッ!?」


 すると突然黒夜が地面に倒れ伏した。

 自分の体の制御が効かないという状態に黒夜は唸るが、やはり体は地面に張り付いたまま。

 やがて黒夜は諦めたのか、それとも老人が何かしたのか、パタッと意識を失ってしまった。


 カラスの声だけが響く山の中で、宏人はパチパチと拍手をした。


「さすが、『重力』使いですね。いや、『重力者』か」


「ああ。そんなワシに何か用か、若造」


 そう、宏人の目の前にいる老人の能力は──『重力者』。

 世界にわずか十六人しか存在しない、『超能力者』の一人。


「はい、アスファス様から殺せとの命令が」


「アスファスか……奴も随分と偉くなったものだな」


「アスファス様をご存知で?」


「ああ。ワシはソクラノトス様が支配していた頃からの人間だからな」


 老人はそう言い、唾を吐き捨てながら続ける。


「で、前置きは終わりとして……そろそろ死ぬか?」


 老人は宏人に向かって手を伸ばした。

 その手に力を入れた途端、『重力』の『者』級能力が発動し、宏人の自由を奪うだろう。

 いや、奪うだけでなく、生殺与奪の権すらも握られるだろう。

 しかし、宏人はニヤリと笑った。


「やってみろ、かつてアルドノイズを圧倒した……ニカイキさん」


「言われずとも、『重力』……!」


 宏人の挑発に、ニカイキは何の予備動作もなく能力を発動、宏人の自由を封じ、地面に倒した。


 しかし──


「『無重力』」


「馬鹿な……ッ!?」


 宏人は何の苦労もなく立ち上がった。

 そんな宏人に、ニカイキは腰を抜かした。

 かつて神々をも圧倒した、地球の法則をも操る能力が、たかがアスファスの下っ端ごときに打ち破られたのだ。


「『無重力』だと!『能力の法則』を自ら破っているではないか!シンノーズううううううう、がっ──」


 ニカイキが叫んでいる途中で、宏人は手に銃を生成し、ニカイキを撃うった。


 ニカイキは、ドサッと地面に倒れ伏し……。


 こうして、かつて世界を救った英雄は、息を引き取った。

 

「ふぅ……ありがとな、ライン」


 そう呟きながら、宏人はニカイキの胸を突き破った。


 *


「お疲れ、宏人」


「はい、アスファス様」


 宏人が『龍宮城』に戻ると、メンバー全員が揃っていた。

 その事に宏人はやや驚いていると、アスファスが笑顔で迎えてくれ、宏人も答えた。

 宏人の隣にいる黒夜は口を尖らせて喋る様子はない。


「何か大事ですか?」


「いや、今日はただのお疲れ様パーティだよ。決起会の意味も兼ねてね」


 アスファスはそう言いながら、宏人と黒夜を席へ案内した。

 十ある席の内の一つの席に宏人は座る。

 黒夜は宏人の対面の席に座った。


「よお宏人!お前今日ニカイキぶっ殺してきたんだって!?」


「ふむ。その話、ぜひ詳しく教えてくれ」


 宏人が座ってすぐ、両隣の人物らからそう質問された。

 宏人の右隣は太刀花創弥、左隣はアトミック・ピークポイント。

 二人は興味深そうに宏人の顔を見た。


「いや、別に対した事はしてねぇよ。『無重力』で『重力』相殺したら向こうが勝手に諦めただけ。あんな絶対のプライドがなければどうなるか分からなかった」


 宏人は冷静にそう言いながら箸でマグロを食べた。

 基本的にアスファスはイタリアン好きだが、いかんせんここは日本だ。

 どうやらアスファスは本場のスシが食べたいらしいのだ。

 宏人は外国人かと心の中で突っ込みながら両隣の二人の質問をテキトーに返しながら寿司に舌鼓を打つ。


「しっかし宏人が『アスファス親衛隊』に入ってからまだ一年ちょっとかー。すげー勢いで位あげたな」


「ふむ。一年と少しで幹部メンバーへの加入か。これは下っ端共のストレスが溜まりそうだな」


「まあ俺の場合元『NoS』だからなー」


 宏人は二人とそんななんて事はない会話をしながら、今度はサーモンを食べた。

 黒夜は一人無言でマグロを食っていた。


 *


 新野凪は、指定された場所に到着した。

 そこにはかつて世界を救った英雄とされる人物、ニカイキ・スカップラー・ユナイテッドの死体が。

 胸を貫かれ、中を弄られた様な死体は、道徳性の欠けらも無かった。

 

「これが、英雄の末路か……」


 凪はニカイキを見下しながらそう呟き、空いた胸の中に手を突っ込んだ。

 既に一度心臓は抜き取られていたのか、心臓はすぐに抜けた。

 その心臓の中に、凪のコートの裏にあるマークと同じものが付いた手紙が折り畳まれていた。

 黒い血で塗りたくられているが、中身に問題はない。

 凪は躊躇なく開ける。

 すると、手紙には簡潔にこう書かれてあった。


『重力無事習得。次はアトミックと共にアーマルマティ』


「ふっ……」


 凪はその手紙を燃やすと、来た道を戻っていった。

 凪のコートが風で翻る。

 

 そのコートの裏には、十字架を手で握り潰しているという縁起が悪い紋様があった。


 *


 宏人は『龍宮城』のベランダで空を見上げていた。

 もう馬鹿みたいに綺麗な、そして見飽きた星空がそこには広がっている。

 まあ、ここの星空は人工物……いや、神工物だからだが。

 この『龍宮城』も海の中にあるわけではなく空の中にある。

 しかし、かの御伽話が出来る前からあるわけだから、どちかというとかの御伽話の方がパク……まあ、そこのところはどうでもいいだろう。

 宏人は満腹になった腹をさすって、隣を見た。

 そこには、星空をボーッと眺める黒夜がいた。


「ねぇー宏人兄さん。なーんでアスファス親衛隊に入ったの?」


「……」


 黒夜の問いに、宏人は答えなかった。

 ちなみに、黒夜は年も幹部入隊も宏人より遅いため、アスファスから師弟関係を義務付けられていたのだ。

 宏人が答えないでいると、黒夜が話し始めた。


「僕はねー、嫌だったんだ」


「……何がだ?」


「ただただ、神々の選択に自分の運命を預ける事になるのを、ね」


 黒夜はそう言って宏人を見た。

 その目は、一言で言って歪んでいた。

 宏人はそんな黒夜を無言で見つめる。


「もう一度聞くね。なーんで宏人兄さんはアスファス親衛隊に入ったの?」


「……お前には関係ない」


「そっか」


 黒夜はそう言うと、ベランダのドアをガチャッと開けた。

 しかし、そこで黒夜は立ち止まって──


「あ、そうだ。宏人兄さんのコートの裏の紋章、縁起が悪いからそのコート着るのやめた方がいいと思うよ。特にアスファス様が嫌がりそう」


「……ああ、そうだな」


 そう言って、黒夜は中へ戻っていった。

 ベランダに一人取り残された宏人は、自分のコートを掴んで裏を見た。


 そこには、十字架を手で握り潰している紋章があった。


「必ず、達成してみせる……!」


 宏人はそれをクシャッと握って、そう声を押し殺しながら言った。



 向井宏人、またの名を──アスファス親衛隊第六番隊隊長『変化』。



第六章これにて始まりー!……なんだけれども、しばらく休載します。というか復活するかも分からない……つまり打ち切りですね。まあ20話でも一度していますが。まあそれより(!?)ラインくん覚えていますか?ライン・カーゴイスくんです!彼の能力は『無重力』!なんで宏人くんが彼の能力をもっているか、それはアルドノイズがラインくんをバンして宏人くんがアルドノイズくんをゴクンしたからです!あ、後書き長くてすんませんっ!

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