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超能力という名の呪い  作者: ノーム
五章 封印前夜・後編
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99話(神サイド) 封印前夜⑦


「凪さん!」


 アルファブルームの前で膝をついて息をする凪に、ニューマンが急いで駆け寄った。

 実際、ニューマンは今もずっと何もしていない。

 ただ、見ていた。


 ただ、凪とアルファブルームが戦っているのを見ていた。


 だからこそ分かる。

 これは人間が敵う存在じゃないと。

 今目の前にいるのは、正真正銘の神だ、と。


「ふぅ……。お前、強いな、それもかなり。だが……どうやら『模倣』は『者』級になっても完璧なコピーは作れないのか」


「ッ……。ああ、『者』級でより本物に近くなれただけだ。どれだけ本物に似せようが、偽物は偽物だ」


 凪はニューマンに支えられながら、ゆっくりと立ち上がった。

 大きな怪我はないが、それは致命傷を必死に防いだだけであり、流れた血は少なくない。


 だが……いいのだ。

 

「俺の大役は、ここまでなんだからな」


 凪がニヤッと笑うと、アルファブルームの背後に、何かが現れる──!

 アルファブルームは、油断していた。

 向井宏人という人間は、ただの『器』の完成版という認識だったのだから──


「なっ!?『フレア』!」


「『時空放射』!」


 アルファブルームはとっさに短く唱えられる『フレア』を放つが、『時空放射』という吐夢狂弥の技の前では──無意味。


 そしてその技が今使えるのは──この『世界』ではたった一人。


「向井宏人おおおおおおおお!」


「うおおおおおおおおおおお!」


 ──宏人の両眼から『11』が消える!


 フレアと『時空放射』がぶつかり、爆発──せず『時空放射』は圧倒的なパワーでアルファブルームに直撃。

 凄まじい『法則』の塊が眩しい光の本流となって現れる。

 さっき宏人が『三回』分使い切った時よりも威力ら高く、強い。

 これはアルファブルームも食らって平気なものではなかった。


 そして、ついに、アルファブルームは膝を地に付けた。


「見事だ……。本当にな」


 アルファブルームは、ポツンとそんな事を呟いた。

 なにせ宏人は、いつの日かアルファブルームが太刀花創弥の『世界』で手に入れた幾つもの無数の『眼』たちを倒し、ここに来たのだから。

 アルファブルームは、心から宏人にそう呟いたのだ。


 だが宏人は知っている。

 直前まで凪と戦っていた詳細は知らないが……アルファブルームは、そんな簡単に負ける奴ではないという事を。

 宏人は警戒を緩めず戦闘態勢を取る。


「ああ向井宏人。まだ全然終わってない」


「おう。いくぜ相棒!」


「相棒になった覚えはない!」


 そうして、宏人と凪はアルファブルームに向かってそれぞれに叫ぶ。


「手『変化』!」


「『流水群』!『バースホーシャ』!」


 凪はそのまま、宏人は駆け出した。

 アルファブルームもニヤッと笑い、立ち上がる。

 そして叫ぶ。

 楽しそうに、心地よさそうに。


「はははははは!こんなに傷ついたのは初めてだぞ人間!よかろう!神という存在の強大さを改めて身体に!記憶に!歴史に!世界に教えてやろう!」


 アルファブルームはそう言うとともに己の周りにいくつもの火球を創った。

 それだけで辺りに爆風が泳ぐ。

 余りに熱い風から、その火球がとんでもない熱を持っている事が理解出来る。


「『銃』!」


 宏人はまず火球を狙う。

 しかし宏人もわかっていたが、案の定それだけで火球はビクともしない。


 時間差で凪の『流水群』の『バースホーシャ』バージョンが降り注ぐ。

 全てを焼く炎がこの『世界』に降り注ぐ。

 

「抗え人間!」


 アルファブルームはそれと同時に周りにあった火球を発射。

 無数にあった『流水群』は跡形もなく破壊され、全てを破壊せんとばかりにこの『世界』を燃やした。

 幸いにニューマンの『強運』があるお陰か着弾する気配はない。


 だが、防げるのはそれだけだ。


「かはぁ……!」


 宏人は急激に気温が上昇するのと、酸素が一気に減ったというのを肌で感じた。

 宏人は、今しかないと静かに立ち止まった。


「すぅ……!」


 深く、深く息を吸い込む。

 ここにある全ての酸素を飲み込むつもりで、吸い込むだけ吸い込んで……叫ぶ!


「『時空放射』ァァァァァァァアアア!」


 ──宏人の両眼から一気に『10』と『9』が消滅した!


 二回分の力を込めた結果、凄まじい威力の『時空放射』がこの『世界』に拡散した。

 アルファブルームを狙ったわけじゃない。

 そう、誰に向けたものでもない。

 この『世界』に向けて、『時空放射』を撃ったのだ。

 宏人の思惑通りアルファブルームによって創られた火の海と大気中の酸素なども全てがリセットされた。


「面白い!」


「『時空断絶』!」


 ──宏人の両眼から『8』が消える。


 宏人はそのままアルファブルームの背後へ周り込み強烈なパンチ。

 もちろんただのパンチではなく、『神』の手を宿した神の拳。

 だがアルファブルームはそれを両手でクロスして受け止め、バックステップをとり後方へジャンプ。

 宏人は逃さず銃を連発するが──アルファブルームが虚空より出現させた剣によって全て斬り裂かれた。


 ──神剣『黒龍』。


 アルファブルーム専用の武器だ。


「本気で行くぞ」


「本気本気うるせーんだよ!」


 宏人も一瞬で腕を剣にし激突。

 宏人はもう後先考えず『変化』を繰り返す事を決めているのだ。


「──その剣はッ……!」


 宏人の剣を見てアルファブルームは驚愕した。

 だが宏人は気にせず、いや、気付かず剣と剣をぶつかり合わせる。


 ここで勝たなきゃ帰れない、生きられないからではない。


 ──ただ単純に、アルファブルームに勝ちたいのだ!


「はあ!」


「チィ!」


 アルファブルームの剣が宏人の頬を裂く。

 宏人は必要最低限の剣技しか習得出来てない上、生成した剣は記憶にないほど知らないどこかの剣だ。

 対してアルファブルームは剣技の数こそ同レベルだが、剣は違う。

 身体の一部とも言えるほど長い、とても長い時間共に過ごし、何が足りなくて何が出来ない。

 反対に何が抜きん出ていて何が出来るかを知り尽くしている。

 その二人が戦っても──勝者は戦う前から決まっている。

 だが──この戦いは、一対一ではない。


「『重力増幅』!」


「ッ!?神ノ凪いいいいいいいいいいいい!」


 凪が『感神』マトモテリオ専用の能力を行使した。

 アルファブルームへ、高度の重力が降りかかる。

 だがアルファブルームは宏人に迫る。

 どれだけの困難でも、剣筋に迷いはない。


 だがそれは──限界を超えて戦っているに違いない!


 宏人は確信のまま、叫ぶ。


 ──宏人の両眼から、『7』が消える!


「『時空支配』!」


 吐夢狂弥専用の、馬鹿げた強すぎる能力。

 時をその名の通り支配する、強力過ぎる能力。

 だが宏人は一瞬しか止める事が出来ない。

 たかが一瞬……されど一瞬だ。

 戦いの中での一瞬は、どんな大金に勝るほど価値がある。


「『神の拳』!」



「『空間圧縮』!」


 宏人と凪は一斉にアルファブルームに向けてお互いの出せる最大の技をぶっ放した。

 宏人は『時空』系統が一番強いが、慣れていないためたまに一瞬かかるのだ。

 何度も述べるが、戦いの中での一瞬はどんなものより価値があるのだ。


「ッ……!」


 アルファブルームはそのまま吹っ飛んだ。

 煙が立ち込める。

 視界が悪い中、宏人はアルファブルームを倒したかどうか確認するため目を擦る。

 

 ──何も、動かない。


「やった……!勝っ──」


「ってねぇよ。……アルファブルームは、そんな甘くねぇ」


 ニューマンが叫ぶと宏人は言葉を被せた。

 そう──アルファブルームは、神だ。


「よく、分かってるな」


 立ち込めた煙を霧散させ、アルファブルームは再度姿を見せた。

 しかしその姿は瀕死寸前の大出血に、左腕が消失している。

 今さっきの宏人の『神の拳』を、ギリギリ左手で受け止めたからだ。


「まだ、勝負は終わっていないぞ!人間!」



 『魔神』アルファブルームは、唱える。

 アルファブルームが持つ、世界の名前を。



「式神展開……『獄廻界』!」

ゾロ目!と同時に次回100話です!なんかすごく嬉しい!

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