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超能力という名の呪い  作者: ノーム
五章 封印前夜・後編
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96話(神サイド) 封印前夜④


 ──一瞬で、形成は逆転した。

 

 宏人は何も出来ず、アルドノイズの爆炎の業火を浴びた。


 宏人の両眼から、『7』が消えている。


「あああああああああああああ!?」


「……」


 アルドノイズ──否、アルファブルームは宏人を見下ろし、はあとため息を吐いた。


 アルドノイズがアルファブルームと成った瞬間、宏人は『時空支配』によって数瞬時を止め、アルファブルームに向かって神の力を宿した銃を連発。

 だが──アルファブルームはそんな数瞬時が止まった世界の中でゆっくりと動き──銃弾を燃やすだけでは飽き足らず、宏人をも燃やした。

 だが宏人はとっさの回避によって右腕を燃やすだけで済んだ。


 しかし──炎は、消えない。


 燃え、燃え、燃え続ける。


「死ね、向井宏人。『聖水と猛炎の邂逅(バースホーシャ)』」


 アルファブルームは宏人に向かって今宏人の腕を燃やしている原因であるのを再度放った。

 宏人は下唇から血が溢れんばかりに噛みながら、痛みを堪えて叫ぶ。


「あああああああ!『時空移動』!」


 必死に叫びながら発動した能力が、発動し──宏人は消え、アルファブルームの爆炎がそこを通り過ぎた瞬間、また現れた。


 宏人の両眼から──一気に『8』と『9』が砕け散った。

 

 『時空移動』。

 それは、時を渡る事が出来る、神々をも凌駕する力。

 宏人はそれを使いアルドノイズがアルファブルームと化す前に移動しようとしたが──失敗。

 宏人の力では、それを成すことは不可能だった。

 だが右腕を治す事と爆炎を避けた事が出来たが……それによって、『回数』を二個使用してしまった。


「ほう……やはり凄まじい力だな、それは。だからこそ疑問が残る。なぜ吐夢狂弥はそれ程の力を向井宏人に与えたかという疑問だ」


「……」


「どうやら貴様も理解していないようだな。まあいい……その力を使えるのは後三回という理解であっているか?」


 アルファブルームはそう淡々と宏人に聞く。

 だが宏人は答えない。

 ここで会話を終わらせるのは得策ではないと頭では理解している。

 しかし……宏人は、圧倒的な力を目にし、恐れていた。

 今更になって、宏人は自分が置かれている状況に気付いたのだ。

 アスファスについていた『NoS』では、アルドノイズは『始祖』の悪魔、とだけ教えられていた。

 おそらく、今でも元『NoS』である飛鳥やチャンたちもそう認識している。


 だが、宏人は理解している。

 

 それは、池井瑠衣の能力の内の一つである『侵夢』という対象の夢を弄れる能力によって、瑠衣の知るこの戦いの『過去』を見せてもらったからである。

 

 『YES』のメンバーの過去についてや……アルドノイズについて、など。


 だから宏人は、知っている。


 今、目の前で自分を見下す存在が、『神』の一柱である『魔神』アルファブルームという事を。


「……まあいい。それより、早くその三回を使え」


「……言われなくても使ってやるさ……『時空放射』!」


 宏人はアルファブルームに向かって右手を突き出す。

 だが──撃たない。

 突き出した右腕に左手を添え、再度叫ぶ。


「『時空放射』!」


 ──力を、込める。


 込めて込めて込めて込めて込めて込めて込めて込めて込めて込めて込めて込めて込めて込めて込めて込めて、込める!


 自分の中にある全ての力を注ぎ込み──



 ──宏人の()から、『時計』が砕け散る!



「……『時空放射』ッ!」


「ほう、面白い。『聖水と猛炎の邂逅』」


 宏人の『時空放射』に『時空放射』を重ねた砲弾に、アルファブルームは自身の持つ力を目一杯込めて『バースホーシャ』の上位互換を撃つ。

 

「うおおおおおおおおおおお!」


 宏人は叫ぶ。

 

 『時空放射』は、ついに『聖水と猛炎の邂逅』を打ち破った。

 『時間』という概念の塊という理解出来ないナニかは、アルファブルームに着弾した。

 どんな存在も、概念に逆らう事が出来ない。

 

 ──だがそれに、『神』は当て嵌まるのだろうか?


 それは──否。


「ははっ」


 宏人は、小さく笑いながら膝を地べたに付けた。


「久々にこんな負傷したぞ、この身体で」


 アルファブルームは──身体全体が燃やされた様な痛々しい姿をしていた。

 だが、それは致命者にはなり得ていない。


「……」


 アルファブルームは、無言で宏人に手を突き出し──


 *


 凪は静かに死体を見つめ、ため息を吐いた。

 その死体とは、先程凪が殺した神仰教の幹部の事だ。

 『空間圧縮』によって殺されたその幹部の死体は、見るも無残にぐちゃぐちゃになっている。

 超能力は『乱舞』。

 十分過ぎるほど強いが、この戦争中に上手く機能してくれるほど強力ではない。


「凪さん?どうしたんですか?」


 そんな凪に、共に同行していたニューマンが鼻をつまみながらそう聞いてきた。

 死体の死臭が凄まじい。

 何も殺したのは幹部だけではなく、信者たちおよそ百名も含めるからだ。


「いや、何でもない。次行くぞ」


「……次?」


 凪の言葉に、ニューマンは片頬を引きつらせながら首を傾げた。

 

 ──瞬間。


「『流水群』」


「へ?て……はあああああああああ!?」


 凪はアスファス専用の能力を『模倣』し、神仰教本部を内側から粉々に破壊した。

 もちろん凪とニューマンも中にいるため無事で済む訳がない。

 そんな事関係ないと言わんばかりの凪は、この世の終わりとでもいうかの様な顔をしているニューマンをお姫様抱っこした。


「……凪さん?」


「しっかり捕まってろ。『流水群』」


「い、い……いやあああああああ!?」


 凪は再度『流水群』を発動し……乗った。

 まるで隕石の様な速さを誇る水?に、まるでサーフィンをしているかのようにニューマンをお姫様抱っこしながら飛んでいる。

 

「もう色々カオス!」


 ニューマンは泣きながらそう叫んだ。

 だが、そこでニューマンは気付いた。

 なぜ、神仰教を破壊させた時、いくつもの巨大な瓦礫が落ちてきていたのに何も被害がないのか、と。

 超人な凪ならニューマンも抱えながらでも楽に避ける事が出来るかもしれない。

 だが、ニューマンの能力は……『強運』。

 ニューマンはちょっと、『YES』のメンバーが『強運』に驚いていた理由が分かる気がした。


 ──なにせ『強運』が自軍にいるだけで、相手より確実に有利に動く事が出来るのだから──


「……どうやら、気付いたようだな」


 そんな事を考えていたニューマンに、突然凪はそう言った。

 ニューマンは相変わらず超人だなと思いながら、静かに頷いた。

 

「おそらく、お前の考えている通りだ。分かったな?」


「いやまあ大体分かりましたけど……合ってる確証もないですし、良ければ詳しく教えてくれませんか?」


「いや大丈夫だろ。もう着く」


「……もう着く?」


 凪が静かにそう言ったのに、ニューマンは少し不安気味にそう聞き返した。

 なんか会話のキャッチボールが上手く出来ていなかった気がしたのだ。


「あの凪さん、マジでちゃんと──」


「着いたぞ」


 凪がそう呟きながら指を指した。

 指した先は──一時間前ほどまで滞在していた『YES』の本部。

 それを見てニューマンは悪い予感は気のせいだったとほっとしたが……。


「……凪さん?スピード落としてください」


「出来ん」


「……マジ?」


「マジ」


 もう一度現状を説明しよう。


 アスファス専用の能力である『流水群』。

 『流水群』とは、簡単に言えば凄まじい勢いの水を何発も地上に降らせるそこら辺の隕石よりもタチが悪い能力である。

 凪は、そんな『流水群』にニューマンをお姫様抱っこしながら乗り、サーフィンするみたいにしながら飛んでいた。

 そして目的地であるらしい『YES』本部に到着。


 ……だが、止まらない!


「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!」


「お前、よくパニックになるな」


 泣き叫ぶニューマンを見下ろしながら、凪はため息を吐いた。

 

 ──もう、『YES』本部に衝突するまで数秒ほど。


 凪は片手を虚空に突き出した。

 もちろんニューマンのお姫様抱っこに用する腕は一本となるが、ちゃんと安定している。

 そのまま凪はバックステップの要領で『流水群』から離脱。

 

 すると『流水群』が、『YES』本部に巨大な穴を開けた──


 そして凪はそのまま穴の中へ入り、床へと衝突する瞬間、呟いた。


「式神展開『蟻地獄』」


 再度、『世界』がバグる。

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