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超能力という名の呪い  作者: ノーム
五章 封印前夜・後編
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95話(神サイド) 封印前夜③


 アルドノイズは、宏人とカオスの戦いを見て、思った。

 ついこないだまでまるで戦いになってなかった二人の実力が拮抗している。

 ……いや、宏人が押している。

 これは凄まじい強化だ。

 だが、ふと思う。

 向井宏人をここまで強くした吐夢狂弥に、デメリットはないのだろうか、と。


「……!」


 アルドノイズはそんな事を考えながら身体を治し、二人の戦いを見ていた。

 もう腹の傷は立っても支障が無い程度には回復した。

 しかし、それでは駄目だ。

 例え万全の状態で戦っても一対一では勝ち目が薄いと思われる宏人相手に、今のままでは勝負にならない。

 だからこそ、今こんな状況でも、アルドノイズはカオスと戦っている宏人から一瞬も目を離さず、戦いの行方を見守る。

 だが、二人の剣とナタが激突し合ったと思ったら突然宏人の姿が消えたのである。

 

 ──アルドノイズの頭上から、何かくる──!


「『バースホーシャ』!」


「チッ!『時空断絶』!」


 ──宏人の両眼から、『5』が消滅した。


 そう、宏人はカオスと激突する瞬間に、『時空支配』を使ってアルドノイズの頭上に来たのである。

 なぜ『時空断絶』によって瞬間移動しなかったかと問われれば、それは『その時点での態勢』に問題があつたからだ。

 宏人の『時空支配』は吐夢狂弥の本家のモノとは似ても似つかない程劣っており、数瞬しか時間を止める事が出来ない。

 それに比べて『時空断絶』は少し曖昧だが指定した位置に瞬間移動する事が出来る。

 だが、その時点での態勢は維持されたままになってしまう。

 つまり、宏人の目的は──銃のリロードの短縮である。


「なッ!?」


 アルドノイズが『バースホーシャ』を放ち、宏人が『時空断絶』によって突然消えた瞬間、アルドノイズの左方から──


 ──宏人の両眼から、『6』が消滅する。


「なぜ『バースホーシャ』の制御が効かない!?」


 アルドノイズは困惑しながら叫ぶ。

 なにせつい今宏人に向けて放ったアルドノイズの『バースホーシャ』が、アルドノイズに左方から向かってきたのである。

 当然、『バースホーシャ』はアルドノイズをも簡単に焼いてしまう。

 そのためアルドノイズは再度『バースホーシャ』を『バースホーシャ』に向けて放った。


「……!」


 アルドノイズの顔が少し歪む。

 当たり前だ。

 なにせ今までも凌駕に向けて何度も『バースホーシャ』を放ってきたのだ。

 そして今も相当使っている。

 協力の技ゆえ、『能力』の消費も大分激しい。

 だが生と死を分かつ戦場でそんな呑気な事も言ってられないのもまた事実。

 だから『バースホーシャ』を放った後、アルドノイズはすぐに宏人をどうにかしようと頭を悩ませたが──


「……カオスッ!?」


 アルドノイズの背後で、カオスが倒れた。

 

「はぁ、はぁ……リベンジ、成功っ……!」


 それと同時に、宏人の浅い呼吸が何度も耳に響いた。

 そう、アルドノイズが自分の『バースホーシャ』を対処している間に、宏人もアルドノイズに向けてお決まりの『神の手』から生成した『銃』と『剣』で攻撃しようとしたのである。


 ──それを、カオスは身を挺して庇ったのだ。


 アルドノイズを、助けるために。


「時間だ、向井宏人」


「なんだ……って。……嘘だろ?」


 アルドノイズが急に静かになったと宏人が思った瞬間……アルドノイズの『能力』が急に跳ね上がりだした。

 それも、今さっきまでのアルドノイズとは比べ物にならないくらい、強大で、強烈に……!


「神ノーズ!全て、全て返してもらう!この後の俺の処遇は好きにすればいい!だが、あの3人に何かする事は許さん!」


 アルドノイズがそう叫ぶと、天より巨大な光がアルドノイズに降り注がれた。


「今から俺の本気を魅せてやる向井宏人!全力でお前を殺してやる!」


「……ッ!いいぜ、来いよ……アルドノイズ!」


 そしてアルドノイズは──アルファブルームと成った。


 

 八柱ある神々の七柱目──『魔神』アルファブルームに。



 *


 宏人とアルドノイズたちの戦いの終わりから一秒も経たずに──アスファスは震えた。

 なんだこれは、と思う暇がない程早く、その正体が分かった。

 

「……ククッ」


 それが分かっても尚笑いを止める事が出来ない。

 なにせ数あるアスファスの願い事の内の一つが、何もしていないのに呆気なく叶ってしまったのだから。

 笑わずにはいられない。

 

「……どうしたんアスファス?気持ち悪い」


「アスファス様か笑った!これは嬉しい喜ばしい!」


「ていうかねぇー聞いてる?めちゃくちゃ大変だったかんねー(カナメ)っち」


 愉悦に浸っているというのになんて邪魔な……とアスファスは一瞬眉を歪めたが、それは一瞬。

 今、アスファスはすごく気分がいいのだ。


「ああ聞いているともアリス。七録要の式神展開である『炎都市』に巻き込まれた件についてだったね」


「そーなのよー!中身は顕現者不在だからかなんともなくただそこら中が炎だらけの変な街だったんだけどさー!馬鹿みたいに頑丈で全然外に出られなかったのよ!」


「ああ!俺の『勇者剣』を以てしてもビクともしなかったのはさすが要としか言いようがないな!」


 アスファスにアリウスクラウン・カシャ・ミラーが愚痴るのと同時に、太刀花創弥も腕を組みうんうんと頷きながらそう言った。

 因みに、アリウスクラウンの愛称はアリスだ。


「だからこそ……俺たちは逃してしまった」


 そんな二人に続き、七音字幸太郎はため息を吐きながらそう呟いた。

 そう、アリスと創弥と幸太郎は3人で七録要を殺しにいったが、なんと逃してしまったのである。

 この世界の人間の中でもトップレベルの実力を持つ3人から逃げる。

 それはアスファスでも出来ない芸当だ。

 だが今でも瀕死の状態にあるだろう。

 動けるとしても、行動範囲は限りなく狭い。

 だからアスファスは配下の約3割を要の捜索、及び殺害を命令したのである。

 

 だから一瞬、今の震えは要を誰かが殺した事かと思ったが……そんな事ではなかった。


 ──そんな事はどうでもいいと考えてしまうような程の大物が、死んだ。


「さて、お喋りはここまでにしようか」


 アスファスはそう言うと共に一人席を立った。


「えー!まだ全然話してないじゃん!」


「アスファス様、何かご用事で?」


 それにアリスは頬を膨らませながら抗議、創弥は真面目な表情でそう聞いた。

 すると、アスファスの顔が頬がニヤリと歪んだ。


「私の部下共。全員集合だ。いいか、全員だ。三十分後に、私の『式神』の中へ来い」


「「はっ!」」


「……へーい」


 アスファスがそう命令すると、創弥と幸太郎は席を立ち背筋をピンとしながらそう威勢よく返事をした。

 ……アリスは頬杖を付きながら返事したが、まあ臨時メンバーである彼女をアスファスは怒らない。

 

 そしてアスファスが喜んでいるのはその()()の件が片付いた事だからなのだ。


「さあ、準備しろ」


 アスファスはそう言うと、急いでどこかへと行った。



 その三十分後……世界中の大物たちが騒いだ。


 ある者は嘆き悲しみ、ある者は大喜びした。


 まあ、仕方ない事だろう。



 なにせ死んだ人物は──吐夢狂弥なのだから。




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