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超能力という名の呪い  作者: ノーム
五章 封印前夜・後編
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93話(神サイド) 封印前夜①


 闇の中へ、どんどんと落ちていく。

 『暗館』よりかは明るい闇の中は、まるで化け物の腹の中のようで──


「「ッ──!?」」


 宏人とアルドノイズは、互いに同じ瞬間目を覚ました。

 両方ともさっきまで落ちていくような浮遊感があったのにも関わらず地面の上に立っていた。

 アルドノイズは言わずとも、宏人は『暗館』での体験をしたからこそ、今この状況がよく理解出来る。


 これは、誰かの『式神』の中……すなわち『式神展開』に巻き込まれたのだと──


「……?」


 だからこそ、宏人は首を傾げた。

 自分とアルドノイズ以外に気配がないのである。

 ではこれはアルドノイズの『式神』の中か、という疑問も一瞬生まれるが。

 次のアルドノイズの一言でそうではないと考えた。


「この『式神』……まさか、お前のか?」


 アルドノイズも宏人を疑っているようで警戒心を強めた。

 

「いや……まず俺はこんな力なんて持ってねぇ」


「そうか……。まあ、いい」


 アルドノイズはそう言うと、静かに宏人を見つめ始めた。

 宏人の首筋に汗が流れる。


 緊張。


 宏人の全身に、緊張なのか寒気が走る。

 アルドノイズの鋭い眼光に自分だけしか映っていない事がよく分かる。

 

「……ッ!」


 だから、宏人は──


「手『変化』!『銃』!」


 先手必勝。

 宏人は両方の『神の手』を銃に変形させた。

 以前アスファスが言っていた事だ。


『お前の超能力である変化は、特性を引き継ぐ能力を持っている』


 ──特性を引き継ぐ。


 それすなわち連続で『変化』を繰り返せば繰り返すほど、どんどんと能力が加算されていくという事だ。

 だが、強力な能力にはそれ相応の欠点も含まれる。

 それは、複雑に『変化』しすぎる程、元の身体に戻れる可能性が低くなってしまう事だ。

 

「うおおおおおおおおお!」


 『神』の能力を含んだ銃の弾丸が、アルドノイズに向かって何十発、十何発と放たれる。

 だが、アルドノイズにとってそんなものは驚異足りえない。


「『エンブレム』!」


 アルドノイズは手から爆炎を放ちながら、宏人に向かって駆ける。

 その行動には一切の迷いがなく、宏人の目前に到着。


「ッ──!」


「お前じゃ相手に成らん!」


 アルドノイズは勢いそのまま手で強烈な突きを宏人の顔面に放つ。

 宏人はそれを両手と化した銃をクロスしながら抑えるが──


 バキバキと音が鳴った瞬間、銃が破損。


「『神の手』!」


 宏人はそれを確認した瞬間、後方にあった左手を『神の手』に戻し、アルドノイズの顔面に向かって放──


「させん!」


 アルドノイズもそれを腰元にあった左手で掴み、握り潰した。


「あああああああああああ!?」


「お前はその能力を十分に使いこなせていない!」


 左手が握り潰された痛みで宏人が叫ぶ。

 必然、右手の力が弱まり、アルドノイズの突きが宏人の右手を貫通した。

 右手に大きな穴ができ、血が大量に噴出する。

 

「つうううううう!」


 宏人は絶叫しながらアルドノイズの腹を蹴る。

 蹴り続ける。

 だがまだ未熟な人間の蹴り程度が神たるアルドノイズに効くはずもない。

 これがまさしく痛くも痒くもないと言うかのように、アルドノイズは止めもせずに右手にさらに力を込め、ついに宏人の右手を破壊。

 右腕から右手が消えた。

 恐ろしい量の宏人の血が宙に舞う。


「あ、ああ……」


No.2(カオス)に勝てん者が俺に勝てると思うな──『バースホーシャ』」


 無防備となった宏人の顔面に、アルドノイズが『バースホーシャ』を放つ。

 走馬灯の時間すら与えない、強烈無比の絶対攻撃。

 地獄の業火が、宏人をこの世から消そうと──


「『時空支配』ー!」


 その直前、『バースホーシャ』が霧散した。


「なんだと……!」


「……えっ?」


 アルドノイズが驚きの声を上げるとともに、宏人は腰が抜け、よろよろと地面に尻をつけた。

 宏人は一体今何が起こっているのか確認する余裕はなく、ただただ自分の両手を見つめた。


 右手は無い。


 左手は、ぐちゃぐちゃに潰れていた。


 右手からは今も血が出続けている。

 それは本能か、宏人は自分でも気付かぬ内に上半身の『NoS』の制服を破り、その布で血止めをしていた。

 

「──!」


「──」


 凄まじい耳鳴りが宏人の耳を支配しながらも、アルドノイズと誰かが話しているのが分かった。

 声は聞こえない。

 恐る恐る、宏人は顔を上げ──


「や、宏人。さっきぶりー」


「ッ──!?」


 宏人が顔を上げると、しゃがんで宏人を見つめていた狂弥と目が合った。

 宏人は突然の事に何がなんやら分からなくなり、バックステップして戦闘態勢を取った。


「酷いよー。せっかく助けてあげたのに」


 だが、狂弥は一瞬で宏人の目の前に出現した。


 宏人は、理解する。


 今、自分がどう戦おうと、どんな工夫をしようと、絶対に抗えない化け物が目の前にいるという事を──


「なんのまねだ……!吐夢狂弥!」


 アルドノイズも狂弥に向かって戦闘態勢──手を狂弥に向けた。

 だが、撃たない。

 アルドノイズも、理解しているのだ。

 今アルファブルームに成ったとしても、絶対に吐夢狂弥に勝つ事を出来ない、と。


「んー、ちょっと待っててね」


 狂弥はアルドノイズにそう言うと、再度宏人と目を合わせた。

 狂弥は、笑みを絶やさない。

 

「宏人、ちょっと真剣に聞いてほしいんだ」


「……?」


「このままじゃ、きみ死んじゃうよ?」


「ッ──!」


 宏人は理解している事を言われ、痛みの事もありカッと怒りが湧くが……。


「だから、協力してあげる」


 吐夢狂弥は、笑みを深めた──


 ──瞬間、この『世界』の時が止まった。


 必然、アルドノイズと宏人も動かなくなる。

 この『世界』で行動出来るのは、一部を除いて狂弥しかいない。


「『時空支配』」


 そう狂弥は呟くと──宏人に向かって、放った。

 

 *


「一体、何が起こった……?」


 宏人とアルドノイズが気がつく頃には、もう狂弥はいなかった。

 数秒、静寂がこの場を支配する。

 ただただ沈黙している宏人と違い、アルドノイズは辺りに警戒心を募らせる。

 無理もないだろう。

 なにせ、いきなり現れていきなり何かしていきなり消えた吐夢狂弥を警戒しないはずがない。

 アルドノイズにとって宏人は敵足りえないが、相手が狂弥となると神ノーズとの『掟』を破ってでもアルファブルームに成らなければならないのだ。


「……はぁ」


 やがて完全に狂弥が居なくなったと確信した様子のアルドノイズが、ため息を吐きながら宏人を見た。

 アルドノイズは、宏人はどうせ困惑しながらおろおろとこれからくるであろう自分の悲惨な末路に恐怖しているのではと興味なしに思っていたが──


 宏人の両目が、血色に染まっていた。


「お前、その目……!」


「な、なんだ……これ?」


 宏人は目を擦り血を拭うと、左目の違和感に気付いた。

 宏人の左目から、チックタックと、時計が秒針を刻む音が聞こえてくるのである。

 宏人からだとその実は分からないが、アルドノイズから見える宏人の両目は……時計の様に、黒目を中心に秒針を刻んでいた。

 だが、宏人にとってそんな事は今はどうでもいい。

 いつの間にか両手が元に戻っている事も、今はどうでもいい。


「なんか、すごい、全能感?が……!」


 宏人自身も困惑の嵐だが……なぜか湧いてくる全能感に、身を震わせる。

 言葉が片言になってしまうほど、信じられないくらいの力が湧いてくるのだ。


「吐夢狂弥……!貴様の仕業か……!」


 そんな宏人を見て、アルドノイズは拳を強く膝に打ち付けた。

 こんな芸当が出来るのは、吐夢狂弥に他にいない。

 この『式神』の中もおそらく吐夢狂弥の仕業だと考え、アルドノイズは更に強く宏人を睨みつけた。


「借り物の力如きで、俺を倒せると思うな!」


「100%借り物の力で、お前をぶっとばす!」


 そう、両者は叫んだ。


 宏人の『(時計)』が、動き出す。

はい、今月3話目!今まで過去編でしかロクな活躍をしていないアルドノイズをど本編で活躍させるとなると書いててめっちゃ楽しくなります!分かってます!自己満足です!

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