第四十一話 終活ツアーその1
「本日はお足元の悪い中、多くのご列席を賜りありがとうございます。
皆様の日頃のご精進のお陰で陽光煌めくお日柄の中でこの式典を決行させていただけることは望外の喜びでございます。
きっと多くのご親族の方々が大きな期待の中で皆様を強く後押ししていただいていることと存じます。
朝御飯を食べたら夕げに死すともかなり、と申します。本日は早朝からのお集まりになりましたので、お口汚しですがささやかな軽食をお配りいたします。
では皆様には、お食事とともにしばしご歓談のひとときをお過ごしください」
マイクのスイッチを切ると、やりきった感の心地好い疲労をかみしめながら、添乗席の社長の横に腰掛ける。
「天野、催行開始のご挨拶だけで、真っ白に燃え尽きるのはやめてくれないか?」
そう言いながらも、内ポケットから栄養ドリンクを取り出して私に手渡してくれる。しかも、グレードの高い物だ。
「社長、ありがとうございます!これで24分は戦えます!!」
「いつもながら、燃費が悪過ぎますね」
しばらく考えてから、私は対案を呈する。
「待ち受けモードでしたらお昼まで持ちます」
社長はさらにサンドイッチセットを差し出してくれる。
「お客様にお配りした残りですが、これでお昼まで仕事モードを維持してください」
「しゃちょー、私も!」
当然のように「おば」さんも尻馬に乗ってくる。
「おば」さんは乙子ちゃんと四谷さんが作っておいてくれた朝御飯を一人で平らげているのに!!プンプン!!
「うずめが起きなかったからだよ。だから、要らないんだって思ったんだ・・・」
私には蓄財の観念がない。宵越しのお金も持たない。
さすが聖女だなと我ながら感心する。
だから、お腹が空いていない状態の私では、睡眠が優先される。
小腹が空いて覚醒したときには、「おば」さんの手で食器もすべて返却されていて、お部屋の掃除も滞りなく済まされていた。後で四谷さんが様子を見に来た時に一瞥しただけで帰っていかれたくらいだから、すごい。
なんか「おば」さん、私とつるんでいなかったらすごく有能な気がする。
「でも、社長の差し入れのパンの耳まで食べ尽くすんだもん・・・」
「パンの耳って、お砂糖まぶしてラスクにしたら美味しいんだよ。お菓子は別腹だよ」
なんと!『おば』さん、お料理も出来るの?
すごい・・・。めっちゃすごい・・・、軽い!すごい軽過ぎる!!
神社巡って干からびたお供え食べてる方が、まだ神様っぽいよ。
「じゃあ、次からはうずめがお料理してね」
にっこりされてもなあ・・・。
「社長、『おば』さんもサンドイッチ欲しいそうです。
それと、次からは私がお料理しても良いそうです」
「オバーサンジャネー様。
ご勇猛なのは承知しておりますが、玉体はお労り下さい。
天野なら毒を混ぜずとも料理にて人を殺せるかと具申します・・・」
なんか、すごい言われ方された。
でも、お釈迦様なんか食中毒でお亡くなりなんだし、「おば」さんにも箔が付いて良いかも?とも思う。
「天野、死んだら神になるという発想は正しいが、オバーサンジャネー様は既に神様におわすからな」
そう言うと社長はサンドイッチを恭しく献上する。
でもそれが「おば」さんの正反対の方角に差し出すものだから、手が届かなくて「おば」さんはジタバタしている。面白いので何も言わないでおいた。
官僚に相手にされていない政治家って、こんなんかも?




