第四十話 もっけよのー
天野。お客様のご芳名はなんとおっしゃるんだ?」
「オバーサンジャネー・・・、で、良いのかな?」
「オバーサンジャネー様と申されますか。とても神々しくてきらびやかなお名前ですね」
「お年は50億年・・・くらいですよ」
「天野、ご婦人のお年を詮索するのは無礼ですよ。
天野の非礼をお赦しください。本当に若々しくおられて、いとけないとさえ思ってしまいました。
天野もそんなお姿に驚いて、つい、口走ったのです」
「マサル。お前、本当にオバが見えてないのか?」
乙子ちゃんが探るように口を挟む。
「はい、残念至極です。ブルーベリーを箱買いせねばならないかと思案しております」
「どうして見えないものがそこにいると分かるのだ?」
「はい。天野に紹介されましたから」
え?私?
「天野が言うのですから、確かにそこにいらっしゃるのでしょう」
「おば」さんが満面の笑顔で私の頭を撫でる。
「大義です、私の神女」
そうだった。見えない人に神様を紹介するのが神女の務めだ。私は何気にミッションクリアしたんだね。
「『儲かる』は『信じる者』と書きます。私は商売人ですから利に敏いのです。
当社の商材を信じる。当社の社員を信じる。当社のお客様を信じる。だから、当社の躍進と発展の道程を信じることができるのです」
「ほう、うずめをそこまで信じるとはな・・・」
うんうん、私も赤面しちゃうよ。
「しかし、それではいつか身を滅ぼすぞ」
おい!なんでほのぼのが急にシリアスになるの!?
「信じるというのは、覚悟を持つことです。
裏切られたとしたら、私がそれだけの価値しかなかったということです。」
「いや、うずめに信じる価値があるのか?という疑問なんだが」
乙子ちゃん、それはひどすぎない!?
自分でも価値がないと自覚しすぎているのに。
死体に鞭打ってるよ・・・。
「天野は信じてもらった経験の不足で、『信頼に応える』という意気地が足りないだけです。
例えば、今日は退屈な事務作業の日なので欠勤したのでしょうが、明日は大切な添乗業務の日です。
今日は怠惰な性格に流れてしまったとしても、明日は『お客様第一』の社訓に則って面目躍如してくれることでしょう」
ギャアー、そうだった!!明日はツアーだった!
明日も休もっかな・・・。
ジロリとなにやら冷ややかな3人の視線を浴びる。
あなたたちはサトリですか?
「四谷も言っていたが、お前はサトラレなんだぞ」
乙子ちゃんがボソッと囁いてくる。
話の流れからして、「明日も休みます」とは言えないっぽい・・・。
「それで。お客様のご依頼はどういったものでしょうか?」
「私は異世界の女神でねー、でも別の神に国を盗られっちゃったので取り返したいの・・・」
はっちゃけにしゃべる「おば」さんに合わせて声を当てる。ライブなので、声優さんというよりは、気分は活動写真弁士だ。
「わらわは異世界の女神でおじゃる・・・」
「はっはー!!」
「リテイクお願いします!ぷんすか!!」
いや、だから、ライブだし、一発オンリーね・・・。
それに、社長、畏まってきっちり平伏してるし。
「構わないが・・・。
うずめ、その口調をずっと通すつもりだよな」
え?え、えー!?私はなんて事を・・・!!!
「うずめ、なんで手のひらを凝視してうち震えているんだ?」
マクベス夫人・・・、かな?
「はーい、テス終了です。
今から本番行きまーす」
ありがとう。
ああ、「おば」さんの不断の軽さに癒されます。
「まあ、神輿は軽い方が担ぎやすいしな」




