第三十七話 真夜中の訪問者
「お父ちゃんお父ちゃん・・・」
「おば」さん、私を起こすときに、私の性別と属性を変更するのは止めて下さい。
「うーちゃん、うーちゃん。象さんがパン持ってうろうろしてるよ・・・」
「おば」さん、修正し過ぎてテンプレ潰れちゃって訳分かんないよ。
それに馬乗りもそろそろ止めて下さい。哀れな村娘では私は不憫過ぎます・・・。
「起きて、起きて。
象さんが一人でパン食べちゃうよ!」
何よ、それ!一大事じゃん!!
「うずめって、眠気よりも食い気なんだね・・・」
これこれ「おば」さん、非常時に何をクスクス笑ってるんですか!!食べ物では一切、冗談禁止ですって!!
暗がりに目を凝らすと、部屋の隅に大柄な人の姿があった・・・!
「うずめ。2対1だから、目にもの見せるわよ!!」
これこれ、日の浅い間柄とは言え、そろそろ、私の実力を熟知してください!
私のパワーポイントの頭にはマイナス記号が燦然としています。私がいてるだけで敗北必至です・・・。
しかも、「おば」さんの能力も、何か逃げ足に特化してるでしょ?
「わかった。大家さんを呼んでくるね!!」
ぱちん・・・。
うー!ホントに逃げ足特化だねえ・・・。でも、私一人で今どうしろと・・・。
そもそも、うちに来てどうされるのでしょう?
気の毒ですが、お金に替わりそうなものは何もありませんよ。
あ!海外旅行のマニュアルに、ホールドアップされた時に実入りがなかったら腹いせに殺されかねないから、相手が納得出来る金額の入ったダミーの財布を予め用意しておいて、それを渡して難を逃れろ!というのがあったわ・・・。
ああ、それならそうと、事前に貯金しておくんだった・・・。宵越しのお金を持たない自分の江戸っ子気質に初めて怒りを感じた。キーシマそばの好きな関西人だけど・・・。
(ちなみに、『キーシマそば』とは和そばを麺だけ中華麺に変更させた、いわゆる裏メニューです。意外と癖になりますが、最近はもう絶滅したかも?)
とりあえずは人定質問だよね。
「あのー、どちら様でしょうか・・・?」
おおっ!自分の勇気に感動する。
「・・・。
天野!!
危機管理はいつも口を酸っぱくせているもりだが・・・?
気付かれていなかったら隠れる。見つかったら逃げる。捕まったら・・・」
「死んだ振り」
「死んだ振りね」
その人と私の、二人の言葉が重なる。
あ、この人の正体、分かっちゃった・・・。




