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第三話  「おば」のひととの戦い

思い立ったが吉日というので、早速扉を開けてみる。

すると。

腰まで髪を伸ばし、くるぶしまであるワンピースを来た女の人が右手の人差し指を突き出して立っていた。


彼女の指が私の肩に当たったので、つい

「ピンポーン」と言ってしまう。

向こうも条件反射なんだろう。一瞬にしていなくなる。

え??いなくなる・・・?


ダッシュなんてもんじゃない。現象の性質が違う。

まるで電気のスイッチを消したみたいに「パチン」と消えた。


なんか無性に沸き上がる笑いの衝動を抑えながら、私はゆっくりと後ずさって部屋に入るとゆっくりと扉を閉めた。

そしてのろのろと万年床に潜り込んで眠り込んだ。

いや、たぶん、気絶したんやと、我ながら思う。




ピンポーン。

ぼやーとした意識の中で音が鳴り、「はい」と返事する。

思いの外にしっかりした自分の声に引っ張られるように、急速に意識が戻ってくる。そして、一瞬で先程の事態を思い出すと、全身が震え出した。


あかんやん、あかんやん。

返事したら引っ張っていかれる展開やん、これ。

相手は「おば」のつく人やん。あ、ちゃう、ヒトやないやん。

ワンピースで長髪なんて、昔みた生物図鑑の「おば」のつくひとのブロマイドそのものやん!「ゆう」のつくひとにも似てるけどあの人は足があったし、やっぱし「おば」のつくひとや。


とんとん、トントン。

叩かへんかったら音がせえへんはずの扉が鳴っとる!

ポルターガイストやろか?

あ、もしかしてノックしてるだけかな?


「開けて、開けて・・・」か細い声がする。


ぎゃあー、やっぱりテンプレやん。

隠すんは耳やったやろか?おへそやったやろうか?


声はそのうち涙混じりになり、そのか細く恨みがましい様は「ゆう」のつく人にも匹敵すると思う。ハイブリッドだ。


しかし自己主張と言うものは儚げな幽玄の趣を上回るものである。

扉を境にして「開けて、開けて」と「あかんあかん」を叫び合ううちに、相手に負けるものかという対抗意識ゆえ、お互いの声が次第に大きくなるのは道理である。


ぐおんぐおんと大泣きしながら「開けて」と叫ぶのは、悪さして閉め出しを食らった子供のそれであり、「あかん」を繰り返す私は客観でさながらガキ大将が泣いて謝る恐いお母ちゃんであろう。



「うるさい!!!」



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